我が腹痛で生態系崩壊の危機 【エッセイ】
真夜中のドライブ。
なんだかロマンチックな響き。
このロマンチックなドライブは僕に課せられた抗えない使命。
家族を安全に九州(義実家)から大阪へと誘う自家用車という名の方舟。
そして僕は方舟の操舵手。
腕は一流さ。
その任務内容は「快適になるだけ早く家路につく」こと。
なぁにそんなに難しいことじゃない。
僕はこれまで幾度となくこのロマンチックドライブ帰省をこなしてきた歴戦の操舵手。
余裕よゆう。
しかし、そんな傲りを見透かされたのか、神が僕に試練を与えた。
腹痛だ。
激しい腹痛が僕を襲う。
義実家を出る直前、雨が降っていた。
僕は雨の中クルマに荷物を積み、そのまま着替えずにクーラーの効いた車内へ。
完全にお腹が冷えたようだ。
食当たりではなく、冷えからくる腹痛。
運転席のエアコンを入れないと車内全体が悪い。
「快適になるだけ早く家路につく」この理念のせいで完全にクーラーをオフにする事は避けなければならぬ。
次のPAまで残り11㎞…。
頑張れ自分。
おまえは一流の総舵手なんだろ?
そう自分に言い聞かせ何とかトイレへ到達する。
用を済ませて少し腹痛も大人しくなった。
これなら残りの道程は余裕だな。
余裕よゆう。
またしてもそんな傲りを見透かされたのか、神が僕に試練をぶつける。
腹痛は引いては満ちる波のように押し寄せる。
そんな押し寄せる腹痛と闘っている最中、あることに気が付いた。
車内に蚊がいる。
イヤホンで本を聴いてるので、ぷ〜んというモスキート音は聞こえないがヤツの姿が見え隠れする。
運転中な上に車内は暗く腹痛もひどい。
僕は一旦無視することにした。
虫だけに。
家族の血を吸うなら俺の血を啜れッ!
そんな事を心の中で叫びながら腹痛からの現実逃避を試みる。
そんな無駄な時間を過ごしていると、あるトンネルに入った。
照明が明るい。
車内が照らされる。
そこで僕は蚊が二匹いることに気が付いた。
つがいか。
九州から大阪へ逃避行かい?
親に結婚を反対されたのかい?
わかった。
僕がその駆け落ちを手伝ってあげるよ。
さぁ血を吸って慣性の法則で100km/hで飛ぶんだ。
大阪の皆すまん。
僕は腹痛から正常な判断がつかない。
九州からの刺客を解き放つ。
それが生態系を破壊する可能性があるとしても。
なにせ僕は漏らさないことで忙しいんだ。
人の多い都会というぬるま湯に浸かった大阪の蚊たちよ震えて寝れ。
田舎の荒波に揉まれ、命からがら移動してきたツワモノが来たぞ。
ではまた。
次回予告(ウソ)
「慣性の法則の殺し方」
の巻き。
