流行りの寝グセ 【ショートショート】
とあるインフルエンサーが寝グセ姿をSNSにアップした。
そのあまりに美しい寝グセは またたくまにインターネットを駆け巡った。
寝グセが流行するのにたいした時間はかからなかった。
皆、寝グセで登校し 寝グセで出勤した。
すぐにインターネットは寝グセで溢れかえった。
誰しもが お互いの寝グセを見せ合っては褒めあった。
しかし、流行が行き渡ると 天然の寝グセ派と人工の寝グセ派とのバトルが勃発した。
ナチュラルな寝グセを良しとする「オーガニック」と、芸術性を重んじる「アーティスト」のバトルは日に日に激しくなっていった。
お互いがしのぎを削る中、様々な寝グセグッズが発売された。
「オーガニック」に向けて寝グセが付きやすい特殊形状枕が人気を博し、「アーティスト」に向けてはどんな寝グセも自由自在のスタイリング剤が人気を博した。
「オーガニック」はスタイリング剤で固めた頭髪はただのヘアースタイルであると論じ、「アーティスト」は自然な寝グセはただの怠慢だと非難した。
バトルはどこまでも平行線を辿った。
そんな不毛なバトルに一石を投じる者がいた。
その者は言う
寝グセがつけられない人の気持ちを考えたことはあるのか?
と。
その者は立派な薄毛だった。
ただでさて日陰者だった薄毛はこの寝グセ流行でさらに日陰に追いやられていたのだ。
自然に寝グセがつくわけでもスタイリング剤で頭皮を傷めたくもない。
誰が好き好んで薄毛になんてなるものか。
この惨劇にも似た悲劇の演説は後に「不毛の為の不毛なスピーチ」として歴史に刻まれた。
寝グセをどーのこーのと争っていた者たちは一様に自分たちの行いと頭髪を恥じた。
そして全員がスキンヘッドになった。
一億総スキンヘッド時代の到来だった。
薄毛たちは歓喜した。
見渡す限りの不毛に涙がこぼれ落ち、その涙が不毛な頭皮に落ち 一本の産毛が生えたとか生えなかったとか。
しかし、天然の不毛と人工の不毛は一発で見分けが付いた。
表情で判るのだ。
天然の不毛は陰鬱な表情を隠すことができない。
溢れ出る日陰者オーラに包まれているのだ。
こうして一億総スキンヘッド時代となっても薄毛たちは日陰者だった。
note薄毛代表のげんちょん氏
薄毛をエトワール寿司子さんに丁寧にいじられる
そんなふたりのやりとりを見ていた薄毛予備軍である僕は戦々恐々としていた。
そしてインスピレーションを得て誕生したのがこのショートショートだ。
薄毛たちに幸あれ。
そして世の中から薄毛が無くなることを切に願う。
