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春に生まれ恋をした(第2回灯火杯応募作品)

「あなたを見つめることができるのは後ろ姿だけだった」
あなたに愛の告白をしてみたい。
それが、この灯火杯に向けての目標となった。
あなたとは 文章のこと。
見つめているのは他でもない私であり、書いても書いても後ろ姿だけを見ている気分になる。
きちっとした姿勢で前を向き、あなたに見つめてもらいたいのに、少しの文字と言葉たちだけを背中に背負って振り向くことを知らないようだ。
そんな文章に振り向いてもらえないもどかしさを書いてみようと思う。


春生まれ。
三月生まれの私が四月生まれの同級生達に追いつくことが出来なかったのは至極当然だった。
同じ場所からスタートをきっても勝てるわけがなかった。身体も声も小さく子供ながらに萎縮した生活を送るしかなかった。
苦悶する中で幼かった私は文章と出会い、恋をした。
自分を肯定する方法の1つ。
それは作文であったり、日記であったり、手紙であったり。
機会をうかがっては思いの丈を文章に散りばめた。
評価が高ければ素直に喜んだし、人の書く表現力豊かな文章に嫉妬した。
それは私は恋をしていたからであり、いつも誰かに見られていることを意識して物を書くようになり、そのまま付かず離れずの関係性を保ったまま大人になった。

もう1つ
書いてみた文章がある。
「あなたを殺して自分のものにしたい」
衝撃的なフレーズだと思う。
私のジャーナリングノートの一番上に太字で大きく書いてある。
いつかこのフレーズを使って創作をしたいと思って書いた一文である。
このあなたとは、愛する男性である。
誰だかはわからない。わからないけど主人公はこの男性を狂おしいほどに愛して、殺してしまおうと、自分のものにしようと考える。

私は起承転結も何も考えず、ためらいもなく自身に発破をかけた。
魔術をかけたといってもいい。瞑想にふけるでも合っているような気がする。

好きを通り越して愛しすぎて、殺してしまおうと。手にかけることが敵わないのなら、
みえない銃のようなものでうつ。
それくらいの愛を書いてみたいと思っていた。
そうこうしているうちに時間だけが経過し、私の頭の中では男女は絡み合い、愛を確かめ合い女性は言う。
「あなたを殺してしまいそう」

「殺してもいいよ。あなたのものになるよ。」
嘘をつくのが上手い饒舌を売りにしているような男性と、嘘をつかれることで愛を一人占めしていると勘違いする女性。

これを一旦床の様なところに置いて、春を意識して書こうとすると、男女は爽やかな服装を纏い、微笑みながら二人の事を全く知らない地域まで、電車に揺られ桜の名所へ出向く。
あと一回雨が降れば散って終わってしまうであろう大きな桜の木の下で、自分たちの終わりとも重ねて抱擁する。
二人は見つめあい、女性は恍惚な表情を浮かべる。
その続きは読者に委ねる。

という話にするかもしれない。

私の頭のなかには、ストーリーは出没してくる。
これを、言語化し文字に起こすことがとても難しい。弱点でもある。
弱点が多すぎる。技量の無さに辟易している。感情の見せ方や情景描写や読み手の心の動きに注目するなんて事が出来るのだろうか?と。勉強したいことが山のようにある。

その反面楽しみたいとも思っている。
これだけ好きなら、書くことに惚れているなら、楽しまなくてどうするんだ?
切なくてぎゅっとするのもいいけれど、反面ワクワクしたりもしたい。

そして、やっぱり思ってしまう。
振り向いてもらえたら嬉しいな。
振り向いてもらうとはどういうことなのかな。
賞を取ることなのかな。
誰かに共感してもらったり、良かったと言われることなのかな。
上手いと唸らせたいのかな。

わからない。

恋をしている私は失恋することがあるということを忘れている。
失恋したら大泣きすると思う。

この書く世界では私はまだまだ新人だ。
スタートをきったばかり。

違う道でもスタートをきる人々と共に歩いていきたい。

#第2回灯火杯

応募させて頂きます。
テーマを見たときに春雨サラダの作り方を書こうとしました。
面白おかしく書くことが私の戦略だと思っていました。
でも、いま一番思っていることを素直に書いてみようとチャレンジしました。
お読みくださりありがとうございます。



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