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負けられぬ戦への船出~天皇杯とHonda FCの関係について~

いよいよ始まる、サバイバル県予選

2025年、4月27日。筆者はHonda都田サッカー場で新たな感覚を味わっていた。天皇杯・静岡県予選の準決勝。

そこに広がるのは、ピッチの声がやたらと通った戦場風景。

悪く言うならば、のどかとさえ言えた。しかし同時に、崖っぷちの緊張感も備わっていた。

負けたら、終わり。点が取れなければ、終わり。平常行われるJFLの試合とは異なる空気が、アナウンス皆無の戦場を支配していた。

そして今年も。また緊張が始まる。天皇杯静岡県予選の、組合せが発表されたのだ。

一言で言おう。異様である。県予選に、更に予選がある。その予選では、社会人も大学生も関係なく殴り合う。

仮にその辺の草サッカーチームが天皇杯を目指すとしたら、予選決勝で合計8回も勝たねばならない。

しかも待ち受けるのは。全国大会常連の大学チームや、最強公務員の二つ名を誇る藤枝市役所サッカー部。そして、昨季地域CLに名を連ねた岳南Fモスペリオ

そして、それらを撃ち抜いたとしても。決勝大会に構えるのは「門番」Honda FC

そして、Jリーグを去ったとはいえ、強力な関門であることには変わりないアスルクラロ沼津

まあ、正直に言おう。「創作のチームでもなければ、無理だろ」と。

2つ3つは勝てたとしても。その先に待ってる上位が濃過ぎる。奇跡がどれだけ必要なのか。

2022年天皇杯のヴァンフォーレ甲府より、遥かに過酷な道のりである。

創作であろうと、リアリティが失われかねない。つまりそれだけ、無理ゲーなのだ。

一説によれば。天皇杯の予選には、魔境なる言葉があるという。

静岡県もかつてその一角に名を連ねていたようであるが、現在でもおそらく、その名に恥じない状況だろう。

話を戻そう。Honda FCは今回、決勝大会の準決勝から登場する。

サバイバル極まりない予選からの参戦でないのはありがたいが、それでも楽観視はできない。

準決勝の相手として有力視される岳南Fモスペリオもさることながら、静岡産業大学サッカー部矢崎バレンテフットボールクラブにも、相応に実力はある。

下手に侮れば足元をすくわれる。すくわれれば、そこで天皇杯は終わる。

Honda FCは、またもその名を示せずに終わるのだ。

そして終焉への顎門は、静かにその瞬間を待ち構えている。一分の油断も僅かな隙も、決して許されはしないのだ。

更に、準決勝に勝っても、決勝がある。

その相手として有力なのは、やはり元Jリーグチームであるアスルクラロ沼津。

この時点で侮るわけにはいかないが、去年のように異常事態が起きる可能性も否定できない。

つまり。相手がどこでも、油断は許されないのだ。

Honda FCと天皇杯

またしても擦るようで恐縮であるが、Honda FCにとって、天皇杯は特別な意味を持つ大会だ。

そう。Honda FCの名を上げ、本田技研工業の名を高める。その絶好の機会こそが、天皇杯なのだ。

なぜなら。Honda FCは天皇杯でプロを破ると、「勝手にバズる」のだ。

勝手と言うのは、少々乱暴かもしれない。

だが。Honda FCのJFL優勝報告と、天皇杯におけるJリーグ(上であればあるほど、価値が高まる)撃破は、非常にバズる傾向がある。参照が、こちらだ。

見よ。JFLとはなにかという説明すらない。あまりにも簡素な、「勝ちました」感のある優勝報告。

にもかかわらず、大きな反響を得ている。Honda FCの評価が、いかに定着しているかの証左であろう。

続いてはこちら。少々昔の話ではあるが、2019年に浦和レッズを撃破した時のもの。これもまた、えらいことになっている。証拠の一つとして、有益であろう。

つまるところ、天皇杯はHonda FCにとって格好の宣伝装置なのだ。

勝てば、名が上がる。
プロを屠れば、バズる。
観客が増える。
更に「門番」としての名声が高まる。

今季の目標はベスト16。とはいえ、プロ相手に1つ勝つだけでも、効果は凄まじいだろう。

しかし。しかしである。そんなHonda FCも、負ければ終わりである。足元をすくわれれば、名が廃る。

去年は、本戦までは到達した。しかし、一回戦で敗北した。地域リーグ所属の、福井ユナイテッドFCにだ。

これは、Honda FCにおいて屈辱である。

少なくとも筆者の知る限り、天皇杯本戦において同カテゴリ以下に負けた例はほぼほぼない。

それほどまでに、Honda FCはアップセットを許してこなかった。

それが、負けた。その衝撃は、正直大きかった。

「門番」が、門の外へと転がされる。「狩る側」だった者が、「狩られる者」へと変わる。

これが天皇杯なのだと、筆者は改めて知った。

今だから、言える。思い上がりが、あったのだ。福井ユナイテッドFCを、見下していたのだ。

地域リーグ所属とはいえ。幾度となく、JFL昇格を指呼の間に見据えた集団だったのに。

だが。それでも。本戦ベスト16を志すHonda FCにとって、県予選は通過点だ。

準決勝進出チームに貫禄を見せ付け、決勝の相手に歴史と実績の差(天皇杯だけに限れば、Honda FCの方がアスルクラロ沼津より遥かに実績が高い)を見せつける。

それができなければ、名折れとなる。

そういう空気が、天皇杯静岡県予選にはある。それはいわば、「勝って当然」という空気。

しかし筆者は、安心できない。終焉の顎門が、かすかに見えるからだ。

そこから視線を逸らした時、Honda FCは落ちる。その恐怖が、どうしても拭い去れないのだ。

二つのクライマックスに

Honda FCの天皇杯への船出は、2026年4月26日

とうとう発表されたJFLCUPの日程表によれば、なんと地区リーグ(東西2ブロックに、8チームずつ)の後半戦真っ只中である。

一巡制故に1つの負けが順位に直結する(なんと引き分けなしのPK戦システムだ)リーグ戦の佳境に、完全に負けが許されぬトーナメント戦が入ってくる。

少々日程が過酷すぎる気もするが、どちらかといえばJFLCUPのほうが悪さしてる気がするので、致し方ないだろう(そもそもJFLCUPは、秋春制リーグまでの半期を埋めるための大会なので)。

閑話休題。いずれにせよ、Honda FCはJFLCUPについても優勝を目標に掲げている。

すなわち、どうあっても負けは奈落に直結するのだ。

ならば、全力で勝ちに行く以外にないはず。そしてその事実は、Honda FC自身が、一番よく理解しているはずだ。

つまり、結論はただ一つ。

崖っぷちだろうが、緊張感だろうが。

相手が若かろうが、新進気鋭だろうが、元プロチームだろうが。

顎門が密かに牙を構えていようが。

全てが一切合切関係ない。勝つ。それ以外に、Honda FCのやることはないはずだ。

行く先が荒波であろうが。見果てぬ海の果てにある栄光であろうが。Honda FCという船は突き進む。

それが彼らの使命であり、目標であり、存在証明だからだ。

そして筆者は。ファン一同は。その姿を見届ける。勝利を信じ、応援する。それ以外に、なにもない。

Honda FCの弥栄を信じ、船出に付き添うのみなのだ。

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