威風堂々

まばたきしていたら見逃していたかもしれないほど、一瞬の出来事だった。エルガーの行進曲『威風堂々』が奏でられる大ホールで、ガウンを纏った卒業生たちが一列に並び壇上で個々の名前が呼ばれるのを待っている。

ステージへ上がるステップの最後の一段まで進んで今まさに名前を呼ばれようという時、娘は突然、観客席の夫と私に向き直り、深々とお辞儀した。

我が子ながら、本当に美しいお辞儀だった。たくさんいた卒業生の中でそんなことをしたのは、娘だけだった。ステージを見ていた人々の視線は娘の前に名前を呼ばれた卒業生が壇上でディプロマを受け取るシーンに集中していたから、娘のお辞儀に気付いた観客は夫と私以外に誰もいなかっただろう。

「あれ? あの子、お辞儀した! 誰に?
…まさか…まさか…パパと私に?!」

こちらを向いて頭をゆっくり下げる娘の残像がしばらくリフレインして、走馬灯みたいに視界をぐるぐる回っていた。娘の名前を読み上げる声が響いて我に返ると、娘が何事もなかったかのように壇上を歩いてディプロマを受け取る姿が見えたのだった。

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米大学の卒業式シーズンがまもなく始まります。
この季節になると脳裏に蘇る忘れられない光景であり、書き留めておこうと思いました。
意表を突かれて、涙腺が決壊した卒業式でした。

日本から私が持参した卒業式当日の娘の髪飾り

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