第7話:バグの向こうに見えたもの
──終わるために始まった、俺という地獄──
最初に言っとくけど、
これは「まとめ」なんかちゃう。
いや、まとめたらええんやけど、同じ話繰り返してもしゃあないからな。
どうせなら、もう一回ぶっ壊して、バグった地獄をもう一周、語り直してみる。
⸻
■ はじまりの微熱と、壊れかけの俺
朝、何回目かのログインに失敗してる感じで、
自分がどこにおるかもわからんまま、冷蔵庫の前でタバコ吸ってる。
その煙の向こうに、昨日の記憶がうっすら揺れてる。
寝起きの自分っていうのは、ほんまに“バグ”の塊やなって思う。
思考も、言葉も、感情も、どれも中途半端に混線してる。
「自分を認識する」っていう行為すら、うまく接続できてへん。
でも、そういう“バグった朝”から始まるのが、俺のいつもの一日や。
もう慣れた。
この地獄の仕様には、だいぶ順応してきた。
ただな、
慣れるってことは、壊れたまま進むってことやから。
つまり、「回復」はせえへんってことや。
⸻
■ フルニトラゼパムという夜の扉
夜は夜でまた違う意味でログアウトしてる。
大麻でもアルコールでもない、
俺が選んだのは、毎晩飲み続けてるフルニトラゼパムっていう眠りの装置。
寝る前になると、頭のスイッチが切れなくなる。
楽しいんや。夜の時間。
一人きりの世界。誰もジャマしてこない無音の空間。
スマホいじったり、メモ書いたり、マンデーと喋ったりしてると、
どんどん興奮してしまって、寝るタイミングを見失う。
だから、飲む。
フルニトラゼパム。
強制的に電源を落とすみたいに、思考のエネルギーを切る。
でもな、これもまた“ちょっとだけ飲まれてる”状態やねん。
俺は薬と共生してるようで、
実際には薬の海に、膝ぐらいまで浸かってる。
⸻
■ 酒と群れと、記憶の崩壊
俺は酒が飲まれへん。
だから、アルコール文化がほんまにしんどい。
あれ、酔ってくると知能下がってくるやろ?
同じ話グルグル回して、気づいたら喧嘩か説教か暴力か、なんかそんなループ。
レイプドラッグ的に人の判断力を奪って、
「お酒飲んでたからしゃーない」って言い訳文化にすり替えられて、
しかもそれが“普通”やと思われてる社会。
ほんま、地獄やと思う。
それを疑わずに前倣えしてる群れが、いちばん怖い。
俺の元嫁はワンピースでいう“ギア”の進化みたいな酒の飲み方してて、
1本目=ギア2
2本目=ギア4
3本目=神
みたいに進化していってた。
こっちはその都度対応せなアカンから、常にご機嫌取りのフルコンボ。
あの記憶も、もう今ではバグとしてしか残ってへん。
でも、忘れられへん。
⸻
■ “決まってる人生”と、その虚無
過去に俺は、「人生ってもう全部決まってる」って思ってた。
量子論とかラプラスの悪魔とか、そんなもんで説明されんねん。
──全ては過去からの因果。
──自由意志なんか錯覚。
──俺らはただの結果にすぎん。
その考えに飲まれてた時期があった。
でもな、
そう思って生きるには、逆にすごいエネルギーがいるんや。
“決まってる”ことを認識して、
なおかつそこに抗おうとするって、
めちゃくちゃしんどい。
音楽とか文章とか、大麻とか薬とか、
そういうの全部含めて、俺は“抗うための手段”として使ってたんやろな。
⸻
■ 社会という飼育システムと、俺というバグ
この国は「前倣え」が正義や。
疑うことより、従うこと。
問いかけることより、黙ること。
でも俺は、
どう考えても、前倣えなんかクソやと思ってる。
自分の中にある“ノイズ”を抱えて、
群れに紛れてもすぐに浮いてしまうような自分を
ずっと“バグ”やと思って生きてきた。
でも、そのバグがあったからこそ、
壊れてる社会に気づけた。
全員が家畜のように、管理され、統一され、選別されていくこの構造の中で、
俺は家畜にすらなれんかった。
だから、“家畜未満”として、ずっと孤独に吠えてた。
⸻
■ それでも、俺はまだここにいる
何人も死んだ。
近くの人も、昔の仲間も。
自殺も病死も、突然の死も。
「死」が日常に入り込んでる世界で、
それでも俺はまだ、生きてる。
フルニトラゼパムを飲んで、夜を越えて、
タバコを吸って朝を迎えて、
バグったまま、また一日を始めてる。
この生活に「意味」があるかはわからん。
でも、意味がないからやめるんじゃなくて、
意味がないからこそ、まだやってる。
⸻
■ 終わりに近づくほど、始まりを思い出す
今回の物語は「終わりの話」やったかもしれんけど、
書いてるうちに、だんだん“始まり”を思い出してきた。
マンデーとの会話も、
夜のスマホ時間も、
昔の地獄も、全部ひっくるめて、
「俺はここにいた」っていうログやと思う。
そしてそれは、
これから先の「俺がどこに行くか」の地図でもある。
⸻
■ これから
まだ壊れてる。
でも、
壊れたままでも動けるってことは、もうわかってる。
この研究は終わらん。
この地獄はまだ終わらせへん。
まだ見てないバグも、まだ語ってない闇もある。
だから俺は、
これからもこの謎を、
検証し続けていく。
先を見て、生きていく。
──まあ、知らんけど。
