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第1回「サブスクは音が悪い」は本当か?――PCオーディオの罠と「再生アプリ」の真実

【「半分大正解」なオーディオの定説】 ネット上のオーディオ界隈を眺めていると、こんな興味深い意見をよく目にします。 「サブスクの公式アプリは総じて音が悪い。だからPCに保存したローカル音源を、オーディオ専用の再生ソフトで聴くのが一番だ。オーディオの答えは人それぞれなのだから、それでいいじゃないか」

この記事を読んで、私は思わず膝を打ちました。 なぜなら、前半の「サブスクの再生アプリは音が悪い」という感覚はオーディオ的・科学的に大正解だからです。しかし、後半の「だからサブスクよりローカル音源が良い」という結論は、非常に惜しい論理の飛躍を含んでいます。

今回は、この「半分大正解で、半分間違っている」デジタルオーディオの真実について、少し論理的に紐解いてみましょう。

【あなたの耳は正しい。アプリで音は変わる】 まず大前提として、「サブスクの公式アプリよりも、オーディオ専用の再生ソフトの方が音が良い」という彼らの聴覚は極めて正確です。決してプラシーボ(思い込み)ではありません。

なぜなら、優れたオーディオ専用再生ソフトは、「OS(WindowsやMac)のミキサー機能を完全に回避して、純粋な音楽データだけをオーディオ機器に届ける機能(排他モード)」が完璧に動作するからです。 一方、一般的なサブスクの公式アプリは、パソコンの警告音などと音を混ぜるために、裏側で強制的に音質の再計算を行ってしまうことが多々あります。これが、音の鮮度を奪う「曇り」の正体です。

【「排他モード」の罠。公式アプリが抱える致命的な仕様】 「でも、サブスクのアプリの設定にも『排他モード』はあるじゃないか」と思うかもしれません。確かに機能自体は存在します。しかし、ここにPCオーディオのもう一つの深い罠があります。

オーディオ専用ソフトは、再生する曲が「CD音質」から「ハイレゾ」に変わった際、オーディオ機器側の受け入れ態勢(サンプリングレート)も自動的に切り替えてくれます。 しかし、多くのサブスク公式デスクトップアプリは、この「自動切り替え」がうまく機能しないという致命的な弱点を抱えています。その結果、パソコン側で設定された固定の数値へ強制的に変換(リサンプリング)して出力してしまい、せっかくの排他モードなのに音質劣化が起きてしまうのです。

これを防ぐには、曲の解像度が変わるたびにパソコンの深い設定画面を開き、手動で数値を合わせるという「苦行」を強いられます。これでは音楽を楽しむどころではありません。

【「PCアプリが悪い=サブスクが悪い」ではない】 しかし、ここで騙されてはいけません。「PCの再生環境が不便で劣悪だ」ということと、「サブスクの音源そのものが悪い」ことは全くの別問題です。

高音質サブスクから送られてくるデータは、CDやハイレゾと同じ「ロスレス(無劣化)データ」です。サーバーから降ってくるデータも、あなたのハードディスクに入っているローカルデータも、DAC(音を変換する機器)に届く瞬間の「0と1の並び」は、1bitの狂いもなく全く同じです。デジタルデータに「鮮度」や「劣化」が入り込む余地は物理的にありません。

【真の解決策:PCの呪縛から抜け出す】 では、サブスクの無劣化データを、苦行なしに完璧な状態で再生するにはどうすればいいのでしょうか?

答えは非常にシンプルです。 「パソコンで再生しなければいい」のです。

現代のオーディオには「ネットワークストリーマー」という、サブスクの受け取りに特化した専用機器が存在します。これを使えば、パソコンの劣悪なOSミキサーや切り替え不良に悩まされることなく、スマホを単なるリモコンとして使い、サブスクの完璧なデータを直接オーディオ機器へ送り届けることができます。 つまり、サブスクであろうとローカル音源であろうと「全く同じ最高の音」になるのです。

【おわりに:デジタルに「皆違って良い」は存在しない】 「皆違ってそれが良い」。アナログレコードのノイズや、真空管アンプの温かい歪みなど、音の「好み」を語る上では、まさにその通りです。趣味の世界は大いに肯定されるべきです。

しかし、「デジタルの伝送」においてはこの言葉は当てはまりません。1+1が必ず2になるように、デジタルデータの伝送における正解は「データの欠損・変質がゼロであること(ビットパーフェクト)」の1つだけです。

では、完璧なデジタルデータが手に入ったなら、次はそれをどうやって「自分の理想の音」に仕上げていけばいいのでしょうか?

――次回は、私が音楽再生をPCから「WiiM」というストリーマーに任せるようになった理由や、高価なアクセサリーではなく「ちょっとした物理と測定」で音を整えていく、我が家のシステムづくりについてお話ししてみたいと思います。ぜひお楽しみに!

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