同じ日に入職したのに、もう差がついて見える。
もうすぐ8月。
病棟で、こんな声を聞くようになる。
「〇〇さんは、もう夜勤に入るんだって。」
「私はまだです。」
4月。
まっさらな白衣に袖を通していた新人たちも、もうすぐ入職して4か月になる。
一人でできることが増えた人。
まだ一つひとつ確認しながら進んでいる人。
同じ日にスタートしたはずなのに、この頃になると少しずつ「差」が見え始める。
正直に言う。
私は、この時期になると毎年少し心がざわつく。
新人も。
指導者も。
病棟全体も。
なんとなく空気が変わる。
比べるつもりなんてない。
それでも比べてしまう。
「あの子はもうできている。」
「私はまだ。」
そんな声を聞くたびに、思い出す景色がある。
子どもが小さかった頃。
「まだ寝返りしない。」
「まだ歩かない。」
周りの子と比べて、不安になっていた。
あの頃は、あんなに大きく見えた差だった。
もちろん、新人教育は子育てとは違う。
患者さんの命を預かる仕事だから、安全のために身につけなければいけない知識も技術もある。
だから、「そのうちできるよ」で終わる話ではない。
でも
最近、考えることがある。
私たちは、新人の何を「成長」と呼んでいるんだろう。
点滴ができた。
採血ができた。
手術出しができた。
チェックリストの○は、少しずつ増えていく。
もちろん、それは大切な成長。
でも
患者さんが、ぽつりと本音を話してくれた。
「家に帰るのが少し不安なんです。」
その一言を聞き逃さなかった。
ベッドサイドで、リハビリスタッフと一緒に退院後の生活を考えられた。
家族の表情を見て、「何か心配なことがありますか」と自然に声をかけられた。
そんな成長は、チェックリストには書いていない。
だから、つい見落としてしまう。
病気を診ることは、とても大切。
でも、その病気を抱えながら生きる"ひと"を看ることも、同じくらい
もしかしたらそれ以上に大切なんじゃないか。
最近は、「何ができるようになったか」よりも
「どんな看護ができるようになったのか」が気になる。
まだ、うまく言葉にできない。
この時期になると毎年そんなことを考える。
そして、そのことを考えていたら、もう一人、顔が浮かんできた。
歩みがゆっくりな新人を担当していた、ある先輩。
「私の教え方が悪いんでしょうか。」
その言葉が、ずっと頭から離れない。
次は、その先輩のことを書いてみようと思う。
