「ノブロックTV」の捨て猫オーディション(一次審査)

 前回、YouTubeチャンネル『ノブロックTV』からアイドルユニット「DRAW♡ME」が誕生したエピソードに触れた。しかし、実はこのユニットは、わずか「一日限定」のアイドルグループとして結成されたものだった。
 舞台となったのは、今年2月3日にパシフィコ横浜で開催された『ノブロックフェス』。一日限りの活動のために、番組やメンバーが注いだエネルギーは凄まじかった。楽曲、振付、MV、衣装、オリジナルグッズまで、それらすべてを超一流のクリエイターが担い、仕上がりは完全にプロのクオリティ。彼女たちのサクセスストーリーをそのまま投影した歌詞も相まって、フェスでのステージは笑顔と達成感、そして深い感動に包まれた。
 さらに、当日サプライズで披露されたもう一つの名曲が会場のボルテージを最高潮へと導き、誰もが「完璧な大団円」を確信した――はずだった。
 しかし、興奮冷めやらぬステージ上で、プロデューサー・佐久間宣行氏からまさかの活動継続が突如発表されたのだ。
 こうして本格的なグループとして歩み出した「DRAW♡ME」は、今秋、早くもメジャーデビューというシンデレラストーリーを駆け上がることになった。

 ここで、少し時計の針を巻き戻してみたい。「DRAW♡ME」が結成され、フェスに向けて猛レッスンに励んでいた裏側で、もう一つのドラマが動いていた。
 チャンネル内には、選ばれた6人ほどではないものの、確かな爪痕を残してきたタレントもいたのだ。出演回数こそ少なくても、視聴者の脳裏に強烈なインパクトを焼き付けた者……その筆頭が、女優・伊勢川乃亜さんだ。
 実際、伊勢川さんの「ブチギレ演技」の凄まじさは圧倒的である。それだけでなく、彼女は頭の回転が速く、演出の意図を瞬時に汲み取り、即興にも強いのだ。だからこそ、初登場にして一気に視聴者の心を掴み、その評価を確立した。
 ただ、彼女にとって唯一不運だったのは、登場の「タイミング」である。彼女が初めて『ノブロックTV』に姿を現したのは、2025年7月2日の配信、森脇梨々夏さんへの逆ドッキリの仕掛け人としてだった。


 この時の怪演があまりに見事だったため、それから一ヶ月も経たない7月30日には単独企画が組まれるという異例のスピード出世を果たす。その後もコンスタントに起用され続けたが、やはり、遅すぎたのだ。

 森脇さんが「アイドルをやりたい」と直訴したのは、遡ること約3ヶ月前、4月21日のサブチャンネルでのこと。佐久間さんはその提案に可能性を見出し、即座に人選と具体案の構築に動いたと思われる。
 というのも、同年9月から10月にかけて放映された、結果的に「DRAW♡ME」のメンバーとなる6人のトーク企画(全3回)のラストで、フェスの開催と完成された楽曲が発表されていたからだ。逆算すれば、どんなに遅くても7〜8月にはプロジェクトが本格始動していたことになる。
(余談だが、二瓶さんと立野さんはこのトーク回が初対面だったという。今見返すと、メンバー間のどこかよそよそしい空気が新鮮で、感慨深いものがある)
 つまり、伊勢川さんが脚光を浴び始めた頃には、すでに「DRAW♡ME」の枠は埋まっており、フェスの開催も決定していたに違いない。

(※とここまで書いて、動画を貼り付けて、今気付いたのですが、奇しくも伊勢川さんが初登場した配信(上に貼ったもの)にて、フェスの開催決定が森脇さんに伝えられていましたね。やはり、見出されるタイミングがあまりにも遅かったようです。)


 そして、割を食ったのは彼女だけではない。出演回数だけで言えばメンバー候補であってもおかしくないものの、いま一つパッとしない哀愁がウリの原莉子さん。結成前の「DRAW♡ME」の誰よりも知名度も人気も頭一つ抜けていたのに、なぜかこのチャンネルにしがみつき続けるすみぽんさん。ハードな下ネタをこなしつつも、実は極めて堅実で地上波進出も果たし、佐久間氏からの信頼も厚い青山天南さん。
 この「選ばれなかった実力派(?)」の4人によって結成されたのが、「DRAW♡ME」の対抗馬――という名の、どこか悲哀漂う「捨て猫同盟」であった。メンバー入りこそ逃したものの、彼女たちも、物販コーナーという形ではあったものの、何とかフェスへの出演は果たした。

 さらに、タイミングの問題でこの「捨て猫同盟」にすら間に合わなかったものの、「DRAW♡ME」に匹敵する圧倒的な人気を博した才能が二人いる。新居歩美さん(あゆち)と、矢野ななかさん(なち)だ。
 あゆちは、実際に「ドラマティック・レコード」というアイドルグループの中心的存在として活動している正真正銘のアイドルでありながら、「大喜利」という強烈な武器を持つ。これまでも「DRAW♡ME」の福留さんや元NMB48の渋谷凪咲さんのように、大喜利の強い女性タレントはいたが、あゆちのそれは突出している。もはや芸人レベルと言ってもいいぐらいで、あのインパルス・板倉氏と正面から渡り合えるクオリティなのだ。
 しかも、理論的に回答を考察・分析し、最適解を模索するような理知的なアプローチを得意としており、大喜利が苦手な芸人に指導ができるほどの領域に達している。


 もう一人のなちは、「面倒くさい女」オーディションで圧倒的なエチュードを披露し、佐久間さんとラランド・ニシダさんをまとめてタジタジにさせて大ブレークを果たした。続く単独企画では、シソンヌ・長谷川氏を相手に数十分に及ぶエチュードを繰り広げ、そのメンヘラっぷりは狂気そのものだった。ビジュアルの愛らしさが、よりその狂気を引き立てる。驚くべきことに彼女はまだ若干二十歳。近い将来、大女優になるのは間違いないだろう。

 なちの登場は2025年11月15日。その驚異的なスピードで地位を確立し、フェスにも単独エチュードで出演を果たした。現在はほぼ月一ペースで単独企画が組まれており、常に高評価を博している。最近は「面倒くさい女」だけでなく、様々なシチュエーションでエチュードを演じている。とにかく、才能に恵まれた素晴らしい女優である。

 この二人からも窺えるように、基本的に、佐久間氏が重宝するタレントの共通項は「即興の能力」にあると考えている。「大喜利」も「エチュード」も、すべては大義での即興劇だ。
 福留さんも、大喜利を卒業しても、イジリやフリートークでの瞬発力に天性の才能を見せ続けている。みりちゃむさんや立野さんの原点である「罵倒」も即興劇の一種と言えるし、立野さんの「魔法少女」も無茶振りに即興で応えるスタイルだ。風吹さんや青山さんのセクシー芸も、方向性こそ特殊だが即興的な言動が肝になるだろう。受け手として人気を博した二瓶さんも、リアクションにおける語彙のチョイスや表情作りという、高度な即興芸を見せている。伊勢川さんの「キレ芸」も、臨機応変な判断が必要な即興だ。
 主要メンバーで唯一、森脇さんだけは即興が不得手かもしれないが、番組がラランド・ニシダさんやトンツカタン・森本さんを重宝しているのも、彼らの即興ツッコミが秀逸だからだろう。もちろん、板倉さんの遠隔操作も典型的な即興の産物である。

 さて、話を「捨て猫同盟」に戻そう。
 フェスの最後に本家が華々しく活動継続を決めた一方で、「捨て猫同盟」の立ち位置は危うかった。そもそも、結成の主旨や存在意義といった本質すら曖昧な彼女たちは、文字通り「本当に捨てられかねない」崖っぷちに立たされたのである。
 そんな中で企画された「捨て猫同盟解散ドッキリ」は、図らずも彼女たちの人間ドラマを浮き彫りにした。伊勢川さんの熱くも冷静な情熱、すみぽんさんの良識と優しさ、青山さんの高い演技力、そして相変わらず緊迫感のない原さんのキャラクター。この化学反応が功を奏してグループの解散を免れたが、突きつけられた条件は「メンバー総入れ替えオーディション」の開催だった。つまり、「箱」は残すが「中身」は入れ替えるということだ。
 過去にチャンネルに出演した者、および、セカンドチャンスを掴みたい芸能事務所の「燻り枠」を対象としたこのオーディションには、実に約200名が応募。しかし、書類審査で八割以上が篩にかけられ、残った27名による一次審査が幕を開けた。

 だが、この一次審査の回は、個人的にはお笑いとして純粋に楽しむことが難しかった。印象に残ったのは司会進行を務めたニシダさんの圧倒的な有能さだけで、参加者たちにはどこか痛々しさが先立ってしまったからだ。
 攻撃的な喧嘩芸が空回りする者、ただ下品さに走る者、どこにでも強引にカットインしてくる者……。見苦しいぐらいの過剰アピールは、逆効果にもなりかねない。現メンバーの牙城を崩し、そこに割って入れるような器は、簡単には見当たらなかった。もっとも、「切ない自己紹介」というお題に答えるだけの審査だったので、厚かましいぐらいに割り込まないと、爪痕を残せないというのも事実なのだろうが。
 そんな中、目を引いたのは元NMB48の和田海佑さんだろう。知名度も人気も高く、ルックスの華は圧倒的で、わざわざこの泥仕合のようなオーディションに参戦してきたこと自体が驚きだった。彼女の一次審査突破は当然の結果と言える。

 一方で、個人的に応援していた元NGT48の中村歩加さんと高鶴桃羽さんの落選は残念だった。明るくてほんわかとしたキャラの中村さんが、板倉さんに遠隔操作された際に見せた「犬がですか?」の連発、あの狂気を孕んだ表情とセリフ回しは今も強烈に印象に残っている。

 また、高鶴さんはおそらく森脇さん以上にピュアな人で、U字工事の益子さんが激怒するドッキリでも、動じずに「飴ちゃん」を配って場を収めようとした独特の気配りに非常に好感を持っていた。


 しかし、激しい椅子取りゲームの中で、二人のキャラは仇となってしまったのかもしれない。特に高鶴さんのようなおっとりとした「のんびり屋さん」は、ガツガツとした自己主張の波に呑まれてしまったのだろう。番組が求める「劇薬」とは方向性が違ったのかもしれないが、二人ともすでに確立された魅力を持つ人気タレントだ。別のステージでより一層輝いてくれることを確信している。
 一次審査では、和田さんを含め計12名が勝ち残った。やはり、個性豊かでガッツのある面々が選ばれた印象だ。正直、私の苦手なタイプの人の方が多いのだが、次回は元祖捨て猫の4人も参加し、さらに個々が深掘りされるという。
 彼女たちの新たな魅力が発見できるかもしれない次回を、今から楽しみにしている……と、この記事を書いている間に、二次審査の配信もとっくに終わってしまったのだが。

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