向きは、静かに狂う──ズレに気づくためのサイン
Moneypenny File|思考の武器(RE:ARM) #20
エージェント。
向きは、もう決めたはずよね。
撃たなくていい場所を知って、
どっちを向いて撃つかも決めた。
それで、少し楽になった。
無駄弾も減った。
──それなのに。
気づいたら、
またズレている。
大きな失敗をしたわけじゃない。
怒られたわけでもない。
むしろ、仕事は回っている。
ここが、一番やっかいなところ。
向きが狂うとき、派手な音はしない。
警告も出ない。
赤ランプも点かない。
ズレは、
とても静かに始まる。
・説明が、少しだけ増えた
・相手の都合を、先に考えるようになった
・「今回はいいか」が、口癖になった
どれも、
悪いことじゃない。
むしろ、
ちゃんとしている証拠。
だから止めにくい。
問題は、
一つひとつじゃない。
それが重なるとき、
向きは、気づかないうちに変わる。
最初に決めた照準から、
ほんの1度。
でも、距離が伸びるほど、
ズレは大きくなる。

ここで、今日の武器を置いていくわ。
名前はこれ。
「小さなズレで止まる」
失敗してから立て直すための装備じゃない。
失敗しないために止まる装備。
使い方は簡単。
仕事がうまく回っているときほど、
この三つを確認する。
・判断の理由を、言葉にしている?
・説明が増えていない?
・「まあいいか」で進めていない?
全部当てはまる必要はない。
一つで十分。
引っかかったら、
その場で一度、止まる。
修正しなくていい。
結論も出さなくていい。
止まるだけでいい。
ズレは、
止まれる大きさで来る。
見逃すのは、
忙しいとき。
うまくいっているとき。
評価されているとき。
だから、
ちゃんとしている人ほど、
最後まで気づかない。

※ここまでの話は、
「撃つか、撃たないか」
「どっちを向いて撃つか」
「向きが狂るサインに気づくこと」
——三つで一組の装備よ。

正解を守ろうとしなくていい。
全部に応えようとしなくていい。
向きが合っているかだけ、
ときどき確認すればいい。
それだけで、
弾は減らない。
消耗もしない。
調整は完了。
ズレは、
止まれるうちに止めなさい。
武器は、
ここに置いておくわ。
持っていきなさい。

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