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創作SS:聖域の「座」をめぐる誤解

表紙画像はGeminiにて生成。
画像のプロンプトは「このSSに合う水彩画を描いて」


Geminiの創作SSです。
 

聖域の「座」をめぐる誤解


春の柔らかな日差しが注ぐ
とある河川敷の土手でのこと。


シソ科の「ホトケノザ」は
誇らしげに胸を張っていました。

段々に重なった円い葉は
まさに仏様が座る蓮華座そのもの。
その頂辺に咲くピンク色の花は、
春の精霊が灯した松明のように鮮やかです。

「見てごらん、この高貴な佇まいを。
 私こそが、春の野辺に仏の慈悲を体現する者だ」

彼は隣に生えていた、
地味な黄色い花――
キク科の「コオニタビラコ」を見下ろして言いました。


「君も、巷では『ホトケノザ』なんて
 呼ばれているらしいけれど。
 そんなに地面にへばりついて
 黄色い小さな花を一つ二つ咲かせるのが精一杯では
 仏様も座り心地が悪くて困ってしまうだろうね」

言われたコオニタビラコは
苦笑いをして静かに答えました。

「確かに、見た目の華やかさでは
 あなたにかないません。
 でも、私は『春の七草』の一員。
 人々の無病息災を願う粥(かゆ)に入って
 体の中から福を届けるのが役目なんです。
 いわば、実務担当といったところでしょうか」

「フン、実務とは風情がない。
 私はただ、この美しい姿で世界を照らせばいいのだ」


シソ科のホトケノザがさらに胸を反らせたその時です。
土手を歩いてきた一人の少年が、彼らの前で足を止めました。

「あ、ホトケノザだ!」

シソ科の彼は「さあ、私を愛でるがいい」
とポーズを決めました。

ところが、少年の指先が向いたのは
足元のコオニタビラコのほうでした。

「こっちは食べられる方のホトケノザ。
 お粥に入れると美味しいんだよね」

少年はそう言うと、
今度はシソ科のピンクの花を眺めて首を傾げました。


「こっちは……綺麗だけど、
 食べられない偽物の方だっけ?」

「に、偽物……!?」

シソ科のホトケノザは衝撃のあまり
花びらを震わせました。

自分こそが「蓮華座」の名を冠する
正統派だと思っていたのに
人間たちの食卓というシビアな世界では
自分が「偽物」扱いされることがあるなんて。

その様子を見たコオニタビラコは
そっと葉を揺らしてフォローしました。

「気にしないでください。呼び名が同じなのは
 それだけみんなが『仏様の座』という言葉に
 親しみを感じている証拠です。
 あなたは景色を彩り、私は体を守る。
 私たちは二人で一組の『ホトケノザ』なんですよ」

ピンクの花は、少しだけ照れくさそうに頭を下げました。

春の風が吹き抜けると、ピンクの蓮華座と
黄色の小さな花が、仲良く並んで揺れていました。


おしまい



山根あきらさんのお題でした。

最後まで記事を読んで頂き、ありがとうございました🙇‍♂️

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