創作SS:救済の色
表紙画像はGeminiにて生成。
画像のプロンプトは「このSSに合う水彩画を描いて」
Geminiの創作SSです。
救済の色
世界が灰色になって、どれくらい経つだろう。
疫病でも戦争でもない
ただの「彩度喪失症候群(クロマ・アフレイシア)」が
人類を襲った。
朝、目覚めると、空は鉛色
コーヒーは煤(すす)の色
愛する人の服も、かつては
鮮やかだったはずの肌の色さえも
ただの濃淡へと変わっていた。
誰もが希望を失った。
色がなければ、喜びも、感動も、
恋心さえも、どう表現すればいいのか。
文学は滅び、音楽はノイズとなり
人類はただ生きるだけの機械と化した。
そんな廃墟の街角で
一人の少女、ミナが立っていた。
彼女の目だけが、奇妙な光を宿していた。
ミナは、毎日、壁に絵を描き続けた。
黒いチョークで、ただの線画を。
人々は無関心だったが、彼女は気にしなかった。
ある日、彼女はポケットから、小さな石を取り出した。
それは、たった一つだけ残っていた
**「赤」**の色を宿した宝石だった。
ミナは、その石を砕き、壁に描いた
無骨なハートの線画の真ん中に、指でそれを塗った。
たった一点の、血液のような、命のような、強烈な赤。
その瞬間、灰色だった世界に、奇妙な現象が起こった。
その赤を見た人々の瞳に、
一瞬、虹色の光が走った。
そして、彼らが去った後、彼らが触れた壁の、
彼らが腰かけたベンチの、彼らが残した足跡の一つ一つに、極小の、しかし確かな**「色」**が灯り始めたのだ。
錆びた水道管の破片が鈍い青に、枯れた鉢植えの土が微かな茶に、そして、ミナの口元が、わずかに温かい桃色に染まった。
人々は立ち止まり、震える手で、その色に触れた。忘れていた、あの感情の震え。
「ああ、これは……」
誰かが呟いた。
それは、単なる視覚的な現象ではなかった。
それは、心が求めていた
生の輝き、情熱の炎、愛の記憶そのものだった。
「美は世界を救う」。
ミナは、壁の前に立ち、
砕いた石の最後の粉を
指先で払いながら、静かに微笑んだ。
世界を救ったのは、壮大な計画や、
強力な兵器ではない。
ただ、一人の少女が、失われた世界で
唯一残った色を、「諦めずに」表現した、その行為だったのだ。
たった一つの「美」が
人々の凍りついた心に、再び光を灯した。
灰色の世界に、ゆっくりと
しかし確実に、生命の色が戻り始める。
おしまい
山根あきらさんのお題でした。
美と色の違いが微妙にお題に合っていないかもしれません😅
内容が興味深かったのでそのまま記事を上げました。
最近見た、ガチアクタというアニメの
とあるシーンを思い出したのは内緒です🤣
最後まで記事を読んで頂き、ありがとうございました🙇♂️
