第53回 3つのお題で(ファンタジー)
🎈お題①:「風船を配る巨人」

🐾お題②:「虹を盗んだ猫」

⏳お題③:「眠れない三日月」

【ストーリー】
ある町では、毎週日曜日になると、どこからともなく巨人が現れます。
空の高いところから、影のように降りてきて姿を現します。
その手には、 パステルカラーの色とりどりの風船がいっぱい。
子どもたちは大喜びで駆け寄り、 巨人は一人に三つずつ風船を手渡します。
風船が減るにつれて、巨人の姿は少しずつ薄くなり、 最後の一つが手を離れた瞬間、すぅーと消えてしまうのでした。
その様子を、窓際のベッドから見つめている少女がいました。
病弱なソフィーで、いつも側には、キジ猫のトムが寄り添っていました。
ある雨上がりの日、空に大きな虹が架かりました。
ソフィーは小さな声でつぶやきました。
「ねえ、トム。あの虹に乗って、空をひとまわりしてみたいわ」
トムには、その願いがちゃんと届きました。
けれど、叶えてあげる力はありません。
そしてまた日曜日が巡ってきました。
巨人は何時ものように風船を配りに現れましたが、 その日は一つだけ虹色に輝く風船が残ってしまいました。
窓から見ていたソフィーが言いました。
「トム、あの風船が欲しいわ」
トムは、すぐさま窓から飛び降りると屋根を伝って巨人のもとへ駆けていきました。
巨人はトムに風船を渡し、にっこり笑いながら
「トム、君はいい子だね。ソフィーもいい子だ。
ソフィーの願いが叶うと良いね」そう言って、革袋を渡して言いました。
「明日の雨上がりに、この革袋を持って待っているんだ。
虹が架かったら袋を持って大急ぎで虹の根本に行くんだよ」
そう言い残すと、巨人は何時ものように消えていきました。
🌃その夜、空には眠れない三日月が浮かんでいました。
三日月は星を眺めながら、ポツリとつぶやきます。
「ソフィーは今夜も眠れないのかな。 まだ七歳なのに、学校にも行けないし、友達もいないんだ。 友達は、あの猫のトムだけだよ」
三日月は、窓辺のソフィーが自分を見上げているのに気づきました。
「可愛い子だなあ。夜が明けるのが惜しいよ。眠れなくても良いや」
そう言って、大きな欠伸をしました。
朝になると、三日月は太陽の光に溶けていきました。
すると急に空が曇り、優しい雨が降り始めました。
午後になると雲が切れ、青空に虹がかかりました。
トムは巨人から貰った革袋を肩にかけ、 虹の根元めがけて屋根の上を走り出しました。
走って、跳んで、また走って―― とうとう虹の根元にたどり着きました。
虹に手を伸ばすと、七色の光が糸のようにほどけ、 するすると袋の中へ吸い込まれていきます。
けれど虹は長くて、全部は入りきらないのです。
トムは袋の口からはみ出した虹を引きずったまま、 ソフィーの家へ向かって屋根の上を駆け戻りました。
町の人々は其れを見て驚いて叫びます。
「猫が、虹を盗んだぞー」
トムが窓辺で袋を開けると、 七色の光がスルスルと流れ出し、 部屋いっぱいに広がりました。
ソフィーは歓声をあげ、 トムと一緒に虹に乗って青空へと昇っていくと、街の様子が小さく見えました。
午後の空には、昼寝で寝不足を解消した三日月がぼんやりと浮かび、 ニコニコと手を振っていました。
――此れで終わり。ではありません。
その夜、ソフィーとトムは家に帰ってベッドでぐっすり眠りました。
それからというもの、ソフィーの病気は嘘のように良くなり、 日曜日には巨人の風船を貰いに元気いっぱいで走って行くようになりました。
そして、学校にも通い友達もたくさんできました。
ところで、トムが巨人から借りた革袋。
あれは、巨人が風船を入れていた魔法の袋だったのです。
片桐さま、この度も御世話になります。
