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[ショートショート]愚かな冒険家オリバー

『ついに神殿の奥深くに到達し、王族の宝を手に入れたのだ!その財宝は金銀にきらめき、まるで夢のような景色であった。
われわれの勇気が、素晴らしい栄光を手に入れた瞬間である。』

 英国青年のレオは本を閉じ、眉をひそめながらため息をつきます。
 ここはロンドンの高級アパートメントホテル。レオは、部屋の借り主である友人のオリバーに呼び出され、一緒にブレックファストを取っているところでした。

「なんなんだい、この本は?俺たちが行ったのはジャングルだし、べつに宝さがしに行ったわけじゃないだろう」

 オリバーはそう言われると、両手と肩を直角に上げ、オーバーにおどろいたような仕草を見せました。

「レオ、君が読んでいたのは僕の処女作だよ。今、一番売れているベストセラー本さ。
もしかして、ジェラシーかい?」

 オリバーは、プロの冒険家でスポンサーの企業に寄稿をしています。今回、オリバーの書き下ろした本がベストセラーになったのです。その成功により、オリバーは昨夜から上機嫌になっていました。そんな彼にレオは、朝から呼び出されました。
 レオはわなわなと身体を震わせ、顔には憤りの表情が浮かばせていました。友人として素直に祝福したい気持ちもあるが、一方で、オリバーの行動に対する失望と怒りを感じていました。
 葛藤を抱えながら、レオはゆっくりと口を開きました。

「オリー⋯。まずは、おめでとうと言うべきだったね。本当にすごいよ。
でも君の本には、嘘しか書かれていない。その件で、いろいろと騒がれているのは知っているよね?」

「そんなこと、気にする必要はないね。大衆はエンターテインメントを求めているんだ!現実は、つまらない」

 オリバーのファンたちは、彼の冒険譚の信憑性には無頓着で、単に面白ければそれで十分だと思っていました。また、彼の魅力的な見た目がとりわけご婦人方の心を引き付け、彼の周りには絶えず一定の注目が集まっています。

 彼は裕福な家庭で育ち、幼いころから周りの大人たちにおだてられてきました。過度な賞賛や期待によって、彼は自分を過剰に評価することが普通でした。
 物心がついたころには、承認欲求を満たすために嘘をつくようになりました。彼の嘘はお粗末なためすぐに見抜けるのだが、周囲の大人たちは、無責任に『嘘』を黙認してしまいました。
 このような経験が彼の性格形成に深くかかわっています。彼は今も、自らのイメージを維持するために、真実を歪曲し、状況を美化することも辞さない。こうやって彼は自尊心や承認欲求を満たしてきました。

 彼の不適切な行いは、過去に何度も警告されていた。友だちや批評家からの助言や指摘もあったにもかかわらず、彼はその姿勢を変えることなく、自己を貫いています。
 レオも今までに何度もオリバーに注意してきた一人です。
 オリバーとレオの仲は、古くからの友だちであり、一緒に冒険をしてきた相棒です。オリバーが嘘をついたり、不適切な行動を取ったとしても、レオは彼を叱りつつも理解し、支えることにためらいはありませんでした。
 オリバーの父親が彼を見放し勘当した時でさえ、レオは彼の味方であり、彼を支えました。彼らの友情は、単なる冒険の相棒以上のものであり、互いにとって不可欠な存在でした。
 しかし、今回のオリバーの行為はさすがにひどいものでした。オリバーが何を考えているのかはわからないが、彼の欲望を満たすために、二人の大切な思い出が嘘だらけの安っぽい小説に変わってしまったのは事実です。
 そのうえ、批判の的になりケチがついてしまいました。今までのオリバーとの思い出までが否定をされたような気持ちになったのです。

 レオは険しい表情を浮かべているのに、オリバーの自慢話は止まりません。
 レオは考えました。自分もオリバーを愚かにさせた一因があるかもしれない。いつかオリバーも気づくだろうと期待していましたが、その「いつか」は訪れませんでした。このまま放っておけば、オリバーは破滅する未来が見えます。

 友人関係や冒険の相棒関係を解消し、距離を置くべきかもしれません。レオは、オリバーに腹が立つこともありますし、傷つけられたこともあります。
 しかし、オリバーと一緒にいると、誰と一緒にいるよりも居心地が良かったのです。だから、彼との友情を捨てることはできていませんでした。
 でも、そんな悩みも今日限りです。オリバーとの縁を切るためにレオは決意を固めました。

「オリー⋯いや、オリバー、君には伝えておかなければいけないことがある。」

#創作大賞2024


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