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6人目 大鳥圭介ー撤退の先に残った理性

鳥羽・伏見から始まった戦火は
やがて北へ北へと流れていった。
会津、仙台、そして蝦夷地へ。

その長い敗走の中で、
最後まで“構造”を見続けていた男がいた。
大鳥圭介。

彼は激情の人ではない。
剣豪でもなければ、
カリスマ的英雄でもなかった。

むしろ彼は、冷静すぎるほど冷静な人だった。

幕府陸軍に身を置き、
西洋式兵学を学び、
フランス式軍制を取り入れながら、
近代国家に必要な「軍の形」を
理解しようとしていた。
感情ではなく、制度と構造を見る視線。
それが大鳥圭介という人物の核だったのかもしれない。

しかし時代は、
その理性を待ってはくれなかった。

戊辰戦争。
旧幕府軍は各地で敗れ、
退却を重ねる。

多くの者が「忠義」や「意地」を叫ぶ中で、
大鳥は現実を見ていた。
兵站は持つのか。
武器は足りるのか。
この戦線は維持できるのか。

それは夢を壊す視線でもあった。

けれど、本当に組織を動かす人間とは、
熱だけではなく
崩壊の気配を直視できる人なのだろう。

榎本武揚とともに蝦夷地へ渡り、
箱館戦争へ至る流れの中でも、
大鳥はただ
「最後の戦い」
に酔っていたわけではない。

敗北は見えていた。
それでも、
その敗北の中で何を残せるのかを考えていた。

だからこそ彼は生き残った。

新政府に降伏した後、
大鳥圭介は処刑されなかった。
そして明治政府の中で
外交官として生きていく。

ここが彼の特異なところだ。

昨日まで“賊軍”だった男が
新しい国家の実務を担っていく。
それは変節なのか。
それとも、
国家そのものを見ていた人間の帰結なのか。

おそらく彼は
「幕府」という器だけを見ていたのではない。
もっと先-
この国が近代国家として
どう生き残るのかを見ていた。

だから、
時代が変わっても
自分の役割を変えられた。

理想に殉じる人は美しい。
だが、崩れゆく現実の中で
なお理性を失わず、生き延び、
次の時代へ橋を架ける人もまた
歴史には必要だったのだと思う。

銃声の向こう側で、
彼は最後まで
「未来」を計算していたのかもしれない。

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