図書館本51冊目①『バリ山行』松永K三蔵(文藝春秋2024年9月号掲載)第171回芥川賞受賞作

賞に疎く、新聞で受賞作品の発表を見ても「あ、そうなんだ。」と思うだけで、作家名も作品名も大抵すぐ忘れます。

この作品名に食いついたのは、最初「バリ島の登山??アグン山とか、バトゥール山とか??」と、何十年も前に持っていた『地球の歩き方 バリ島』などで仕入れた、文字と写真だけで知っている、浅過ぎる懐かしげな知識が蘇ってきたから…

記事を読んで、「バリ」が「バリエーションルート」という、登山道を外れた道(?)をゆく山行であることを知りました。
作品内の言葉で言えば「行けるところがルート」だそうで…

私自身は、登山もアウトドアな活動も一切やりませんが、こういう話が好きなんです。
しかも、場所は六甲山。
関西在住者なら、見る機会も行く機会もあったりする、身近な山じゃありませんか。

「めっちゃ読みたいー」と思いました。

単行本は貸出中続きで、「ま、いつかそのうち借りられるか」と思っていたところ、こちらの『文藝春秋2024年9月号』の方が貸出可能になっていたので借りて来ました。
(もう一つの受賞作『サンショウウオの四十九日』も読めるし。この回の芥川賞、両方とも気になってました。「結合双生児」って…)

面白かったです!

毎週末六甲山に入り、「単独バリ山行」を登山アプリに記録している「妻鹿(めが)さん」がたまらんです。

登山アプリのアカウント名「MEGADEATH(メガデス)」に、私の心は持って行かれてしまいましたよ。(そこかいっ)
MEGADEATH、大好きです。
"PEACE SELLS…”のイントロが浮かびます。
部屋の片隅に放置されているはずの、アルバムジャケも浮かびます…


山だけでなく、会社でも「我が道を行く」妻鹿さんは、誰かとつるむこともなく、自分のやるべきことを淡々とこなすのみ。
疎まれても「我関せず」。
濃いい縄文顔で、キレたり泣いたりはにかんだり…
渋っ!


二人が勤務する改修専門の建築会社では、極端な方針変更に社員達の心が揺れています。

私も服部課長にムッとしたり、宗教に行っちゃいそうな社長が心配だったり…

そんな中での、主人公、かたりの「波多」くんと妻鹿さんの二人で行う「バリ山行」が最大の見せ場でしょう。
私までその場に(勝手に)ついて行ってるかのような臨場感!!

(波多くんは、去年見たドラマ「マウンテンドクター」の若き山岳医役の杉野遥亮さんで勝手に脳内再現されてました…)

危険な岩場や急斜面を登り、水を被りながらも小滝に食らいつき、垂直に切り立った断崖をロープで降り、終わりの見えない藪漕ぎにくじけそうになりながらも必死に妻鹿さんの背中を追っている波多くん…、そして、その波多くんの背中を追う、電車で出勤中のはずの

「いいですね、妻鹿さん!」 
「妻鹿さん、最高じゃないですか!バリ山行」波多くんと同時に私も言い、
「うまいです!妻鹿さん」    私も妻鹿さんの淹れたコーヒーを飲む。

波多くんが、妻鹿さんにイラついてキツいことを言ってしまうと、私が「まあまあ、そんなこと言わないでさぁ」と、間に入る…
(そんな役割の人、出てきませんけどね。)

それぐらい入り込めました。

読みながら、
私もピックステッキ要るわ~
藪漕ぎにはバラクラバと手鋸も要るな~、と。
(どこで藪漕ぐねんっ。電車でかっ)
(今回覚えた、3大便利山グッズ…)


読後、たまに想像します。

今、この瞬間、六甲山で藪漕ぎしてる人がいるのかもなぁ…


星野 道夫さんのエッセーを思い出しました。

街中で日常生活を送っているこの瞬間にも、山でヒグマが歩いていたり、遠い海でクジラが潮を吹いていたりすることを思い浮かべられる場所を知っている、ということが大事だなぁ的なことが書かれていたような…

『バリ山行』、ドラマチックな小説でした。



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