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物流ニュースなび【26年8月20日号】KDDI「menu」撤退へ フードデリバリー「2強体制」の先にあるものとは・・・

みなさん、こんにちは。

東京地方は朝から曇りや晴れが入り混じる空模様で、蒸し暑さの続く一日となっています。今日は、KDDI子会社のフードデリバリー事業撤退のニュースから、この市場の構造そのものについて考えてみたいと思います。

■トピック
KDDI、「menu」を解散・清算へ 退出が続く国内フードデリバリー市場

(出典:KDDIニュースリリース、2026年8月19日)

またひとつ看板が下りる
KDDIは8月19日、子会社のmenuが提供するフードデリバリーサービス「menu」の提供を終了し、同社を解散・清算すると発表しました。リリースには、同社の株式取得完了は26年8月31日、サービス終了は9月30日の予定と明記されています。共同運営してきたレアゾン・ホールディングスが保有するmenu株式をKDDIが取得し、完全子会社化したうえで解散・清算手続きに入る方針です。

menuは19年にテイクアウトサービスとして始まり、20年にフードデリバリーへと事業を広げました。21年にKDDIと資本業務提携を結び、23年にはKDDIとのジョイントベンチャー(合弁事業)となって、au経済圏との連携を強めてきた経緯があります。直近まで提供エリアの拡大策を続けていただけに、今回の撤退は市場の厳しさを改めて突きつけるかたちとなりました。

振り返ると、この数年の国内フードデリバリー市場は退出の歴史でもあります。foodpandaが22年1月に、DiDi Foodが同年5月に、楽天ぐるなびデリバリーが同年7月に、それぞれ日本事業を終えています。23年5月にはChompyがサービスを終了し、飲食店向けモバイルオーダー事業へと経営資源を集中させました。そして今年3月には、フィンランド発のWoltが日本から撤退。運営元の米ドアダッシュが日本市場そのものから手を引く形になりました。

コロナが生んだ市場でコロナ後に問われる体力
なぜこれほど退出が相次ぐのでしょうか。市場自体が縮小しているわけではなさそうです。サカーナ・ジャパン(Circana、旧NPDジャパン)の調査によれば、国内のデリバリー市場規模は19年の4183億円から20年に6271億円へと前年比5割ほど急増し、23年には8622億円でピークを迎えたとされています。2024年は7967億円へ一度減少したものの、2025年は8240億円と再び増加する見込み(25年12月発表時点)で、コロナ前と比べればおよそ2倍の水準を維持しています。つまりパイそのものは大きく縮んでいないわけです。

問題は、その成長ペースに対して各社が投じてきたコストの重さでしょう。配達員への報酬、キャンペーン費用、システム投資などは初期の顧客獲得局面では不可欠なものですが、市場の伸びが落ち着いてくると、投じた体力に見合う収益が返ってこなくなります。日々の取材を通じて感じるのは、フードデリバリーという事業は「参入障壁は低いが、黒字化の障壁は高い」という、ねじれた構造を抱えているということです。

「誰かに配らせればいい」という発想のツケ
もう1つ、退出組に共通する要因として気になるのが、配達という業務そのものへの向き合い方です。多くのプレーヤーは、配達員を正社員ではなく個人事業主として扱い、1件ごとの成果報酬で担ってもらうかたちを選んできました。固定費を抱えずに済む分、立ち上げ期のコストを抑えられる利点はありますが、これは裏を返せば、需要の波に応じて配達員をどれだけ集められるかが事業の生命線になるということでもあります。

出前館のように自社雇用の配達スタッフを一部で抱える事業者もありますが、その分、給与や保険料といった固定費がかさみやすいという別の重荷を抱えることになります。ギグワーカーに頼るか、自社雇用に踏み込むか。どちらを選んでも収益を圧迫する要因になりうる。「配達は誰かに任せればいい」という安易な発想が、事業モデルの根っこに構造的な脆さを埋め込んでいたのではないか。撤退した各社の顔ぶれを見ていると、そう感じずにはいられません。

なぜUber Eatsと出前館だけが残ったのか
この退出ラッシュの中でも、Uber Eatsと出前館の二強体制はほぼ揺らいでいません。複数の消費者調査を見比べても、両者の順位や差は調査時期・対象によって振れがあるものの、常にこの2社が上位を占め続けているという点では一致しています。一方で、menu、Wolt、foodpandaといった名前は、いずれも二強の背中を追う中堅・下位グループにとどまったまま姿を消していきました。

なぜこの2社だけが生き残れたのでしょうか。1つ考えられるのは、先発優位そのものよりも、エコシステムを作り込む速度の違いです。Uber Eatsは月額制の送料無料プラン「Uber One」でヘビーユーザーを囲い込みながら、ゴーストレストランやバーチャルブランドの支援を通じて、飲食店側の収益機会も広げてきました。

出前館はLINEとの連携を軸に、地方都市や住宅街での加盟店開拓に強みを持ちます。単に「安いから」や「有名だから」で選ばれているわけではなく、店舗側・利用者側の両方にメリットを設計できているかどうかが、中堅・下位グループとの差になっている可能性があります。

配達員を集める仕組みにも工夫が見られます。Uber Eatsが26年に本格化させた「選択制クエスト」は、配達員が回数と報酬の関係を自分で選べる仕組みで、時間単位で報酬を得る「フラットレート」の試験導入も進んでいるとされています。個人事業主として稼働する配達員にとって、働き方の選択肢が広いことは、大手に人材が集まりやすい理由の1つになっているのかもしれません。

二強も安泰とは限らない
ここで立ち止まって考えたいのは、「生き残っている」ことと「収益的に安定している」ことは、必ずしも同じではないという点です。業界関係者の間では、配達員への報酬が上昇しているという声も聞かれます。これはフードデリバリーに限った話ではなく、宅配便の領域でも人手確保のために配送単価が上昇傾向にあるとされています。実際、軽貨物ドライバーの中にはフードデリバリーと宅配便系の配送案件を同じマッチングアプリ上で掛け持ちする例も見られ、両業界が同じ個人事業主の労働市場を部分的に共有している面もありそうです。

物流業界全体が担い手不足という共通の課題に直面していることの表れとも言えるでしょう。送料無料競争が続く中でプラットフォーム側の取り分が圧迫されているとすれば、二強の内側でも収益性は楽観できない状況が進んでいる可能性があります。詳細は確認中ですが、注視したい動きです。出前館についても、配達体制の見直しを通じて収益改善を模索する動きがあるとされ、都市部での競争にどこまで耐えられるかは今後の分岐点でしょう。

問われているのは「デリバリーの経済性」
KDDIによるmenu撤退は、一見すると一企業の事業判断に過ぎません。しかし、この数年の退出劇を並べてみると、そこに透けて見えるのは、フードデリバリーという事業モデルそのものが、日本の人件費構造や消費者の値ごろ感の中でどこまで持続可能なのかという、もっと大きな問いです。

物流・サプライチェーンに関わる立場から見ても、フードデリバリーは「ラストワンマイルの経済性」を先鋭化させた領域だと感じます。配達員という個人事業主に依存する構造は、宅配便やBtoB物流とはまた違ったかたちで、担い手不足やコスト増の圧力を受けやすい面があります。

プレーヤー減少の先には何が待っているのか
もう1つ、見過ごせない論点があります。フードデリバリーへの需要そのものは、これから先も縮む方向には向かわないだろうということです。農林水産政策研究所の推計では、店舗までの距離や移動手段の制約から食料品の購入に困難を抱える高齢者は、2010年の382万人から2025年には598万人まで、5割超増えると見込まれています。しかも、その増加の大部分は地方ではなく都市的地域で起きているとされています。高齢化と単身世帯の増加が進む中で、「誰かに届けてもらう」ことへのニーズは、むしろ強まっていくはずです。

需要が伸びる一方でプレーヤーが二強に絞られていくとすれば、そこに働くのは競争原理の希薄化でしょう。これまでは各社が送料無料キャンペーンや割引で顧客を奪い合ってきましたが、選択肢が数社に限られていけば、その体力勝負を続ける理由も薄れていきます。行き着く先が、配送料やサービス利用料の引き上げという形でユーザー負担に跳ね返ってくる可能性は、十分に想定しておくべきではないでしょうか。買い物に不便を抱える高齢者ほど、こうした料金上昇の影響を受けやすいという皮肉も、あわせて考えておきたい点です。

二強体制が持続可能なビジネスモデルの証明なのか、それとも中堅・下位が消えた後に訪れる一時的な均衡に過ぎないのか。次に動きがあるとすれば、それは二強自身の収益構造からかもしれません。

今日はここまでです。次回もお楽しみに。

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