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【無料版】新人リハ職から見る大腿骨近位部骨折

こんにちは。

4月から新人として採用されたり転職して新しい職場で働き始めた方も、だんだんと仕事に慣れてきた頃でしょうか。

特にリハ職関連の新人さんは、ぼちぼち担当患者さんを受け持つ頃かと。

初の担当症例は何の疾患でしたか?私の周りでは大腿骨近位部骨折の患者さんの加療にあたることが多かったです。頸部骨折とかでしょうか。

今回は、新人医療従事者から見た大腿骨近位部骨折についての回です。

なお、今回の記事は既存の論文や教科書をNotebookLMで掛け合わせたものに私の考えを追加して作成した新しい勉強方法です。具体的にはどんな勉強方法かは、併せてこちらの記事もご覧ください。




新人さんの考えと現状

担当患者さんが付くと、俄然やる気が湧きますね。

「骨折だから、まずはしっかり動かして筋力をつけていこう。負荷量はその時の患者さんの状態に合わせていこう」

考え方は間違っていないはず。

しかし現実はどうでしょうか。

学生の時と違って、一人の患者に対して朝から晩まで考える時間はないですね。

「今日も、いつもの筋トレと歩行練習だけで終わってしまって、個別性のないリハビリだった。」ということもあるあるです。

それ以外にもうまくいかない点が。よく聞くのがこのような悩み。

  • リハ室ではしっかり歩けるのに、病棟ではずっと車椅子で過ごしている。

  • 「痛いからやりたくない」と顔を背けられ、コミュニケーションさえままならない。

  • 先輩からは「作業療法士なんだから、もっと生活の背景を見て」と言われるけれど、具体的に何をどう評価に落とし込めばいいのか見当もつかない。

脳卒中と違い高次脳機能障害がない分、考えやすいと思われている骨折関連へのリハビリ。
一部ではそうかもしれませんが、教科書通りには進みませんよね。

今日は、新人のころを思い出し、ペルソナを設定してQ&Aをしてみます。私にとっては新人指導の練習にもなりますね。

ペルソナ紹介

今回のターゲット(ペルソナ)

  • 名前: Aさん(入職1年目の新人作業療法士)

  • 職場: 回復期リハビリテーション病棟

  • 悩み: 毎日一生懸命介入しており、基本的なプログラムはできているが、患者さんの「生活」が変わっていく実感がない。バイザー(指導者)に根拠を問われると、しどろもどろになってしまう。

  • 性格: 勉強熱心で、患者さんの力になりたいという想いは人一倍強い。しかし、自分の主観や経験不足を補う「確かな指標」を求めている。

  • 願い: 単なる「運動の指導員」ではなく、その人の生活を再構築する「作業療法士」としての自信を持ちたい。


Aさんのような新人OTが、臨床でふと感じる「これって本当に正しいの?」という疑問。それを、先行研究のエビデンスを使って一つずつ紐解いていきましょう。

臨床におけるQ&A:その常識は正しいか?

新人のAさんが抱きがちな「~ではないか」という疑問に答えます。できるだけ先行文献のデータから客観的な答えを出していきます。

Q1. 筋力と可動域が改善すれば、ADLは自立するのではないか。

A1. 身体機能の改善が必ずしもADLの自立に直結するわけではない。 
 たしかに、筋力や関節可動域は回復には必要になります。計測や検査でも目に見えて分かりやすい部分でもあるので、回復の指標とする視点は合っています。
 付け加えると、大腿骨近位部骨折患者においては、抑うつや認知機能低下などの「精神心理機能」がADLや移動能力の回復に強く関連することが明らかになっています(岩井ら 2019)。
 筋力などの身体側面だけでなく、患者の意欲や心理状態を並行して評価し、介入する必要があります。「できるADL」と「しているADL」の違いはご存じでしょうか。もし「できるんだけどしていない」状態であれば、なぜ「していない」のか、一度じっくり話を聞いてみる必要があるのかもしれませんね。

Q2. 認知症がある患者に対しては、ADLの自立は望めないのではないか。

A2. 認知症があっても、重症度に応じた適切なプログラムを選択すればADL向上は可能である。
 三国ら(2014)の研究によれば、認知症が重度であっても、例えば更衣動作などは訓練によって一定の回復が見込めます。
 また、中等度群であればトイレ移乗を重点的に行うなど、認知機能のレベルに合わせた「目標の絞り込み」が回復の鍵となります。
 認知症状が進んでいると、動作の学習が思うように進まずに困ってしまうことも多いです。しかし反復練習を繰り返すことで動作が定着することもありますし、視覚的に確認しやすい工夫(張り紙など)や本人が自然と行えるような道具の配置の工夫(ベッドの横に手すり設置など)で対応できることもあります。
 「自立」の方法は身体機能アップだけではないので、落ち着いて視野を広く持ってみましょう。

Q3. リハビリ時間は長ければ長いほど、回復が早まるのではないか。

A3. 栄養状態が不良な場合、過度な負荷はかえって回復効率を低下させる要因となる。
 戸田ら(2022)は、入院時の栄養状態(GNRI値)が低い患者はADLの改善効率が有意に低いことを指摘しています。
 低栄養下での過度な運動療法は廃用を助長するリスクがあるため、栄養管理と負荷量のバランスを多職種で検討することが最優先です。
 血液データを見る習慣はついていますか?横文字や英語の略語が多くて敬遠されがちですが、見ておいた方がいいデータがけっこう詰まっています。
もし、「ドクターの領域だし・・・」と思うなら、実はそこもチャンスです。GNRI値だけでも調べて、お医者さんに質問に行くのもいいですね。
 また、評価は様々です。「長時間のリハで疲れていないか」と考えたのなら、「疲労の程度を評価する方法」を調べてみましょう。勉強は興味を持ったところから始めると頭に入りやすいですよ。

GNRI(Geriatric Nutritional Risk Index:高齢者栄養リスク指標)とは:
主に高齢者の栄養障害(栄養不良)のリスク
を、簡単かつ客観的に評価するための指標です。
一言でいうと、「血清アルブミン値」と「体重」の2つだけで、その人がどれくらい栄養の危険にさらされているかを測るものです。

Q4. 自宅復帰できるかどうかは何で決まる?

A4. 自宅復帰を左右するのは、病院での能力よりも「受傷前のADLレベル」と「認知症の有無」である。
 久保ら(2011)の調査では、退院時の歩行能力が同程度であっても、受傷前に独歩が可能であったか、認知症がないかといった因子が在宅復帰率に強く影響しているという研究結果が出ています。
 要は、もともと歩けて認知症状がなければ何とかすれば家に帰れるということです。全員がこれに当てはまるわけではないですが、自宅退院か否かを考える際の指標にはなりますね。
 「入浴だけ誰かに手伝ってもらえれば大丈夫なのに」など、具体的にリスクが高い場面が分かっているのなら、社会福祉士さんやケアマネさんに話をしに行くのもいいですね。
 予後予測を行う際は、現在の動作レベルと同様に、病前の生活背景を重視するのも大事ということです。

Q5. 術後の離床やADL訓練は、痛みが完全に引いてから始めるべきではないか。

A5. 術後早期からの介入こそが、二次的合併症を防ぎADL回復を促進する。
 術後早期からの作業療法介入(ADL・IADL訓練)は、身体機能だけでなくADL能力の回復に有効であると報告されています(Hagstenら 2004)。
 痛みに配慮しつつも、早期から環境調整を行い、患者の意識を自宅復帰へ向けることが心理的安定にも繋がります(三国ら 2014)。
 おじさんくさくなりますが、私が子供のころは骨折した人はギブスを巻いて寝て治すのが当たり前でした。そういった世代やさらに上の人は、手術をした翌日に、いきなり「さあ立ちましょう!歩きましょう!」と言われても、やっぱり不安にもなります。不安な気持ちを解消するためにも、傾聴の姿勢やエビデンスのある説明は必要不可欠になってきますね。

まとめ:明日からの臨床を変えるために

今回はペルソナの設定上、ある程度基本のリハビリができている新人さんからの質問ということになりましたね。できる新人さんでした。

「エビデンス」と聞くと、少し難しく感じるかもしれません。格好よく横文字ですが、結局は「根拠あるのそれ?」ということです。
経験の少ない新人時代だからこそ、論文や教科書から得られた知識を後ろ盾にすることで、リハビリ目標やプログラムの設定にの説得力を増していきましょう(逆に言うと、新人なのに「僕の経験上~」はあんまり言わない方がいいかも・・・。」。

新人だからこそ、経験則ではなく「エビデンス」を武器にしましょう。根拠を持って介入すれば、先輩への報告も、他職種とのカンファレンスも、そして何より患者さんへの向き合い方がけっこう変わります。

先輩から言われたことをただやるよりも、自分で試行錯誤してやっていくほうが、結果として患者さんの回復につながっているような気がします。自分の勉強にもなりますね。

AIが普及してきた現在、自分で考えられるリハ職がちょっとずつ減ってきているようにも感じています。
AIは悪者ではないですが、細部に気を配れるのは人間ならではの強みです。AIと人間のいいところを合わせつつ、リハ業務に臨める作業療法士になりたいですね。

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明日からの介入に自信を持ちたい方は、ぜひチェックしてみてください。

それではまた別の記事で。

参考文献

今回の知見を導き出すにあたり、以下の論文を参考にしています。

  • 岩井信彦、他:大腿骨近位部骨折患者における精神心理機能に関する研究.作業療法,2017,36(1),35-43.

  • 三国香織、他:大腿骨近位部骨折患者の認知機能の重症度別にみたADLプログラムの検討.作業療法,2014,33(6),498-507.

  • 戸田寛之、他:大腿骨近位部骨折患者の入院時栄養評価と日常生活動作の改善および自宅復帰率との関連性.作業療法,2022,41(6),676-685.

  • 久保祐介、他:大腿骨近位部骨折における退院時歩行能力に影響する因子の検討.整形外科と災害外科,2012,61(1),21-25.

  • Hagsten B, et al:Early individualized postoperative occupational therapy training in 100 patients improves ADL after hip fracture.Acta Orthop Scand,2004,75(2),177-183.

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