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【連載小説】save the gene | 第19話 長きに渡る因縁に決着を 1/3

―――――ディザスター編最終編です。最後は天馬と葉子の因縁の相手です―――――


Part 1 天馬と葉子の過去

「よう!」

日曜の早朝、熟睡していた天馬は、その声に跳ね起きた。枕元で宙に浮く黒い球体が、ボーリング玉サイズの相棒、ジーンだ。

「よう!なんだ!?朝早くから…ねみ~」

低い声で唸る天馬に、ジーンはいつになくかしこまった様子で告げた。「突然で悪いけど、最後のディザスター討伐案件、やるよ」

天馬は寝ぼけ眼をこすりながら、不機嫌そうに返した。「以前が最強じゃないんだったら今回はなんだよ!」

ジーンは天馬の悪態に臆することなく続けた。「今回は天馬にも関係する案件なんだ。あと、葉子にも

その一言に、天馬は訝しげに眉をひそめた。「俺と葉子に関係する?叩き起こされて意味深なこと言うな」

「ちょっとダイニングまで降りてきて」

「ちょっと着替えてからな」

颯爽と制服に着替えると、天馬はジーンと共にダイニングへ向かった。面倒な案件だから、畏まってダイニングで協議するつもりなのだろうか。

ダイニングに入ると、そこには俯いて、何やら暗い顔をしている桜木葉子がいた。天馬とジーンは葉子の前の席に座った。

「どうした?葉子も朝早くから制服に着替えて…何かあったのか?」

天馬が問いかけると、ジーンが真剣なまなざしで言った。「今回のクライアントは……この桜木葉子だ!

天馬は驚きに目を見開いた。そして、あることに気づいた。「もしかして葉子!?あの時のことをgene社に託すつもりじゃ?」

葉子はパニックになったように声を上げた。「お願い!!!私を助けて!!!あの時あんな怪獣を倒すぐらいだから私たちの足かせだって取れるでしょ!?」

天馬は慌てて葉子を宥めた。「いいから落ち着けって!?あまり思い出すとお前…フラッシュバックで立ち直れなくなるぞ!」

ジーンはさらに真剣な表情で、重い口を開いた。「葉子から話は聞いたよ!天馬と葉子って過去にこういうことがあったんだね!これは最悪の案件と言ってもいい!まさかその関係者が君たち二人だとはね」

ジーンは続けた。「今回は特例としてただで協力してあげる!それはgene社が天馬と仲がいいからとかそういう次元じゃない!むしろ協力したい!何で天馬は今まで僕に隠していたの!?」

天馬はおそるおそる答えた。「隠してたんじゃない!?俺がgene社を信用するのに、ここまで沢山の苦難を乗り越えてきたと思う。だから今は自信を持ってジーンたちに託してみてもいいかもしれない。俺も協力する。ジーン!サポートしてくれるか!?」

ジーンは冷静に言った。「慌てないで!まずは話を整理しよう!過去に一戸家と桜木家が何があったのか!?

葉子はその言葉を聞いて、決意を固めたように言った。「私から話すわ…後、麒麟さんはいないけど、香澄さんにも同席してもらって…もしこのことを天馬やジーンが解決してくれるとしたら…」

そして天馬は母親である一戸香澄を呼んだ。天馬、葉子、香澄、ジーンの四人がダイニングのテーブルを囲む。葉子が話し始めようとすると、香澄が葉子の口をそっと塞いだ。

香澄は真剣なまなざしで言った。「葉子には荷が重すぎるわ…葉子の保護者として、私から話します

そして、一戸香澄の口から、天馬と葉子の凄惨な過去が語られ始めた。それは、二人が背負ってきた重い足かせの、始まりの物語だった。


Part 2 煽り運転

「おおよそ10、11年前…」

一戸香澄の声が、ダイニングに響く。当時、天馬と葉子はまだ未就学児だった。

葉子の父親である桜木太陽と、母親の桜木鈴代と一緒に、大阪まで高速道路をドライブしていた時のことだ。助手席には鈴代後部座席には天馬と葉子が座っていた。四人全員がきちんとシートベルトを締めている。

当時の天馬が、楽しそうに葉子に話しかけた。「それでさぁ葉子!そうくんとスマホっておもちゃであそんでさぁ」

葉子もそれに応える。「へぇ!そうくんもいっしょにおおさかってところにいけばよかったね!」

「そうくんもともだちといっしょにあめりかにいったんだって!すごいね!」と天馬が言うと、葉子は満面の笑みで続けた。「かいがいりょこーわたしたちもたのしもうー!」

運転席の太陽が、後部座席の二人を振り返り、にこやかに言った。「葉子は隣の天馬君と仲がいいから一緒に大阪までドライブだ!」

鈴代が「うふふ!天馬君っていい子だし葉子も気に入ってるみたいだし…いいお友達を持ったわね!」と嬉しそうに頷く。

「俺は天馬君のお父さんの麒麟さんとも仲がいいし、そういう間柄だからな」と太陽が言うと、鈴代はさらに言葉を重ねた。「一戸家と桜木家はもっと仲良くなれないかしらね?」

「心配ねえよ!天馬君は葉子のいいなずけだからな!ガッハッハ!」

一戸家と桜木家は、互いに隣同士で親交も厚く、とても仲が良かった。自然と天馬と葉子も打ち解け、互いに溶け合っていく。

天馬は純粋な声で尋ねた。「しあわせってわからないけどこういうのかな?ようこ?」

葉子もそれに答える。「わたしたち!これからもしあわせになりましょ
てんま!」

そのやりとりは、まさに理想のご近所付き合いそのものだった。


だが、しかし、その幸せは脆くも一人の外道に食い潰されることになる


太陽が運転する車の前方にいた車のスピードが、嫌に遅かった。

「あれ?渋滞かな?別に混雑している状況ではないと思うけど…」太陽が首を傾げた。

鈴代も訝しげに言った。「まるで私たちを意識しているみたいね」

その車は、急にスピードを上げたり、かと思えば急に減速したりと、不可解な動きを繰り返した。こちらの車も、そのスピードに合わせて走行するしかない。

「ちょっと車線変更する!明らかに不審な車で何かが起こるかもしれない」太陽は不穏な空気を感じ取り、決断した。

「そうね!通り過ぎてしまえば関係ないものね」鈴代も同意する。

このまま何事もなく通り過ぎると思われた。太陽は車線を変更しようとした。しかし、前方の車もまた車線変更をし、再びスピードの上げ下げを繰り返した。

「なんだ?あれ?まさか!今噂の煽り運転ってやつか!?鈴代!何とか車線変更して突っ切るぞ!巻き込まれたらまずい!」太陽の声に、怒りが滲む。

「待って!何か前方の車の様子が変よ!」鈴代が焦った声を上げた。

その時、前方の黒い車が、まるで故意のように急ブレーキをかけていきなり止まった。

そして、太陽たちの車は、その車に直撃してしまった!

凄まじい衝撃と共に、エアバッグが展開されたものの、前方の衝撃があまりにも強烈で、太陽が運転していた車の前方半分はぐしゃぐしゃに潰れてしまった。

葉子は現実を受け入れられない様子で、放心したように呟いた。「あれ?お父さん?お母さん?」

天馬は唖然として、ただ無言のままだった。見るも無残な状態になった天馬の両親の姿が、幼い二人の網膜に焼き付いてしまう。天馬と葉子は、静止したようにその場に佇み、現実を理解できないでいた。

そして、しばらく時間が経つと、前方の黒い車の運転席から、スキンヘッドで入れ墨だらけの男が近づいてきた。黒い車は後方が少しへこんだ程度で、走行に問題はなさそうに見える。

スキンヘッドの男は、潰れた太陽の車に向かって、嘲笑うように言った。「死んじゃった?

そして、男は天馬と葉子が奇跡的にも被害を受けていないことに気づくと、二人に向かって冷酷な言葉を投げかけた。「君たち助かったんだ?よかったね?残念だけど君たちのお父さん?お母さん?死んじゃった!

葉子は、どうしようもないパニックに陥り、恐ろしく叫び続けた。「きゃあ!!!お父さん!!!お母さん!!!いやああ!!」

しばらくすると、遠くからサイレンの音が近づいてきた。警察車両が駆けつけ、男は取り押さえられ、現行犯逮捕された。


Part 3 藤間乱丸

そして後日、桜木太陽桜木鈴代の葬儀が執り行われた。遺体は激しく損傷しており、参列者が目にすることは叶わなかった。

参列していた一戸麒麟が、沈痛な面持ちで口を開いた。「こんなことって…ただ運が悪いだけで葉子ちゃんの両親が事件に巻き込まれるとは…」

一戸香澄もまた、涙を浮かべながら言った。「天馬と葉子だけ助かって、二人とも無事でよかった…とは言い切れないわ…ひどい…」

天馬と葉子は、ただただ泣いていた。

「ぼくがいっしょにいったからようこのおかあさんとおとうさんしんじゃったかな?」天馬が、自分を責めるように呟く。

葉子は激しく首を振りながら、嗚咽混じりに叫んだ。「え~~~~~~ん、ちがうよ!てんまのせいじゃない!あのおじさんのせい!」

麒麟は、二人の幼い姿に、かける言葉が見つからなかった。一戸家の親族も、桜木家の親族も、互いに涙を流し合った。

だが、またしても追い打ちをかけるように、あの男が何故か葬儀場に現れた。入れ墨だらけのスキンヘッドの男が、葬儀場に姿を現したのだ。会場は一斉に沈黙に包まれた。その男の邪悪なオーラに、一同は威圧された。

そして、その男は天馬と葉子の前に歩み寄り、忌まわしい言葉を言い放った。

「葉子ちゃん…君のお母さんとお父さんを奪った死神でちゅよ!

天馬は咄嗟に、葉子をかばうように前に立った。葉子はものすごく怯え、震える声で言った。「何おじさん…何の用!?」

男は、さらに恐ろしい言葉を口にした。「葉子ちゃんのお母さんとお父さんはね!地獄ってところに行ったの?葉子ちゃんが悪い子だからそんな悪い世界に行ったんだよ

あまりにも残忍な言葉に、会場に戦慄が走る。

男は続けた。「でね!葉子ちゃんのお父さんはね!針山地獄ってところに行ったの!葉子ちゃんが悪い子だから痛い痛いって!お母さんはね!血の池地獄ってところに行ったの!そこってお風呂みたいに熱くてね!言ってたよ!葉子ちゃん!熱い!助けて!!って」

その言葉に対して、葉子はひどくパニックを起こした。「やめて!!!いやあ!!天馬!天馬!!!助けて!!!!!

天馬は男に向かって、小さな身体で叫んだ。「おじさん!なんでぼくたちにひどいことするの!ぼくたちがおとなになったらぜったいおじさんにしかえししてやる!!!ゆるさない!!」

すると男は、嘲笑うかのように言い放った。「じゃあここで!葉子ちゃんの両親のところに送ってあげようかな?

藤間乱丸

その様子に、麒麟が割って入った。「貴様!!!!!!!!!!お前は殺人罪で今服役中じゃなかったのか!?」

男は薄気味悪い笑みを浮かべ、名乗った。「俺はちなみに藤間乱丸っていうのね!俺裏社会で結構名をあげてるから運転致死から運転致傷にランクダウンしたんだよ!で、保釈ってわけ」

「何!?」麒麟は呆然とした。

そして、その藤間と名乗る男は続けた。「ほら葬儀場を見てみ!一般葬だよね!上級そうだね!悔しいな俺!裏社会で生き死にかけてる俺と、死んだだけで祝福されてる夫婦!不公平だよね!?俺より先に死んでくれないと納得いかないよね?」

麒麟はその言葉を聞いて激怒し、拳を握りしめた。「私が!凄腕弁護士を呼んで!貴様の罪状を殺人罪にしてやる!覚悟しろよ!外道!

藤間は麒麟の言葉に動じることなく、不敵な笑みを浮かべた。「いいの?半グレやヤクザ敵に回しても?麒麟さんだって金持ってても俺らに目をつけられたら終わりでしょ?金持ってるだけの雑魚なんだからさ

麒麟は、その言葉に立ち止まった。この藤間という男が、想像以上に権力を持っていることを確信してしまったからだ。

くっそ!!!」麒麟は歯噛みした。

藤間は退散しようと身を翻した。そして、去り際にこう捨て台詞を吐いた。「何か天馬君が大きくなったら復讐しに来るんだって!じゃあ天馬君の意見を尊重しようじゃん?俺って人の意見を聞くタイプだからね」

そうして藤間は去っていった。しかし、葉子はパニックを起こしたまま、助けを求めて叫び続けていた。「助けて!!!助けて!!!!誰か!!!!!」

その時、麒麟は葉子を強く抱きしめた。温かい麒麟の腕の中で、葉子は徐々に落ち着きを取り戻していく。

そして麒麟は、優しい声で葉子に語りかけた。「葉子ちゃん!一戸家で引き取ってやる!そして勉強しよう!勉強は現実を紛らわしてくれる!算数は私が教えるから!天馬と葉子ちゃんでいい学校に行って、第二の人生を歩もう!」

葉子は、麒麟の言葉の意味を理解しきれないまま、震える声で尋ねた。「さんすうってかずのこと?わからないけど!いまはきりんさんとてんまがいてくれるとこころづよい

葉子は、張り詰めていた心が限界を迎え、大声で泣き出した。


Part 4 長きに渡る因縁に決着を

香澄の壮絶な語りは終わり、彼女は最後にこう付け加えた。

「藤間は、一戸家と桜木家の参列者全員の名簿を手に入れていたの。だから、裏社会ではかなりの者だという事実は否定できなかったわ

天馬は、硬い表情で続けた。「俺たちはもう藤間には関わらないようにしていた。だから、俺と葉子はその出来事を忘れるために勉強に没頭してたんだ」

葉子は、固く閉ざしていた口を頑張って開くように、絞り出す声で言った。「私は…世界一不幸な女だと思った…。でも、天馬や麒麟さんや香澄さんの助けもあって、天馬と一緒に勉強してた。そして、私たちは聖修院に受かった

さらに葉子は続けた。震える指で目を押さえながら、彼女は告白した。

「今も私が勉強にこだわる理由…それは、藤間を忘れるためだったのよ!!

事情を聞いたジーンは、淡々とした声で言った。「天馬も葉子も、あまりにも現実として受け入れがたかったから、記憶を封印するみたいに口を閉ざしていたんだね…だから天馬は僕に切り出せなかったんだ」

天馬は、胸にこみ上げる怒りを抑えきれない様子で言った。「そして…皮肉にも藤間のディザスターが最強ってことになるけど、どういうことだ?」

ジーンは、その問いに答える。「人に対する冒涜が度を越してるんだ。これほど悪質な犯罪者は、僕の頭にもデータはないよ。いや、海外にはいるかもしれないけど、国内では考えられない。そのレベルになると、ディザスターの王なんて、ただのハリボテだよね」

葉子は、縋るようにジーンに訴えた。「ジーン!gene社の力で藤間をぶっ殺して!!!

ジーンは、葉子と天馬にまっすぐ視線を向けて言った。「それ以前に!天馬!葉子!初めから言え!!!!裏社会程度が僕たちgene社に敵うわけないんだから!

お願いします!!」葉子の声が切実に響く。

天馬も、抑えきれない怒りに身を任せた。「今まで藤間のせいで、葉子と俺は散々苦しんできたんだ!俺とジーンの手で、長きに渡る因縁に決着を…

その時、天馬と葉子の目から、互いに自然と涙が溢れ出した。

葉子は、涙を流しながらも、どこか解放されたような表情で言った。「天馬!あなた!ついに藤間をやっつけられる力をつけてきたんだね!」

天馬は、固く拳を握りしめ、言い放った。「ああ!俺が藤間の憑き物を倒して自白させて、殺人罪で死刑にしてやる!

涙を流す葉子と天馬

ジーンは、状況を冷静に判断し、天馬に指示を出した。「まずメビウスの未来予測動画を見るよ。『六本木 会員制クラブ save the gene!!』って打ってみて」

天馬は静かに頷き、そのプロンプトをスマコンに入力した。

すると、彼の視界には、夜のバーで、藤間らしき男と女の取り巻きがキャバクラらしき場所で飲んでいる動画が映し出された。

「生きていたのか!藤間!!」天馬の口から、憎悪がこもった声が漏れる。

葉子は、諦めにも似た表情で呟いた。「あいつは逮捕しても意味がないのかもね…」

ジーンが、二人の心情を察しながらも、具体的な行動を促した。「gene社総力を挙げて藤間の関係者を押さえつける!警察関係者とも協力して、逮捕状に間違いがないか、内の弁護士で検察してみる。天馬はただ藤間の現場を押さえてディザスターを討伐するだけでいい!それで藤間は丸くなるはず…ただ…」

天馬は息を呑んだ。

ディザスターの王を凌駕するほど、藤間のディザスターは強いと推定できる。心の準備はいい?」

天馬は、静かに頷いた。

そして、葉子と香澄は、天馬に対し深くお辞儀をした。彼らに、この大役を任せてしまうことへの感謝と、申し訳なさの念が込められていた。

天馬とジーンは、因縁に決着をつけるべく、始末班の運転する車で、港区六本木へと向かった。

To be continued!!


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