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【連載小説】save the gene | 第9話 未成年売春


Part 1 日曜日の談笑

とある日曜の昼下がり、リビングには和やかな空気が流れていた。一戸天馬と桜木葉子は、冷たいペットボトルのお茶と和菓子を囲んで談笑している。

「お前ってさ、もしかしてパパ活とかしてる?」天馬はストレートに尋ねた。

葉子はギョッとした顔で天馬を見た。「パパ活?何で私がそんなことしなきゃいけない理由があるのよ!麒麟さんに大学の学費を出してもらう話なんだから、私は学業に専念できるの!」

一戸家には居候として、葉子はこれまで多大な恩を受けていた。特に天馬の父、一戸麒麟のおかげで塾に通わせてもらい、最終的に聖修院高校へ進学できたことに感謝している。だからこそ、彼女はなるべくいい理系の大学に進学するという固い志を持っていた。

天馬は納得したようにうなずいた。「パパ活は葉子ならまあしてないだろうな……でもお前も俺と同じで十六歳なんだから、彼氏作らねえの?」

葉子は呆れた顔でため息をついた。「今は学力を上げなきゃいけない大事な時期なんだからそういうのは大学に進学してからでしょ?」

聖修院の学生たちは共通して、「青春は大学まで後回しにして高校は勉強に回す」という価値観が主流だった。天馬も葉子も、そして天馬の親友である山崎國男も、その認識を共有している。

「でも、お前それでいいのか?女子高生だぞ!恋愛くらいは今からでもやっていいんじゃねえの?」

普通は三十代で結婚するんだから私たちまだ子供でしょ? そんな肩肘張らなくたって出会いはやってくるわよ……」葉子は呆れ声で答えた。

「本当に父さんたちに恩義を感じてるんだな……そういえば父さん、出張って言ってる割には帰ってこないし、連絡もないよな」天馬はふと、父親のことに触れた。

葉子も納得したようにうなずいた。「そうね……天馬が変なバイト始める直前にアメリカに行ったのよね確か……偶然にしてはできすぎてるわね」

そう言いながら、葉子は立ち上がり、リビングを出て玄関へと向かい始めた。天馬は慌てて呼び止める。「お! おいお前、どこ行く気だよ!」

葉子は振り返り、にこやかに言った。「今から女子と原宿で遊ぶの! じゃあねえ!」

ひらひらと手を振り、葉子は家を出ていった。その瞬間、天馬の後ろから声が聞こえた。

「よう!」

少しびっくりした天馬は振り返り、「よう!ジーン」と相棒に挨拶を返した。ジーンは天馬の頭の高さくらいの位置で宙に浮いている。

「葉子は売春なんてしてないみたいだよ! 安心して、兄は妹を大切にするよね、当たり前だけど」ジーンは穏やかな声で言った。

天馬は少し照れ臭そうに言った。「ま、まあな!実際は兄妹じゃないけど で、今回は例のパパ活を追跡する探偵の仕事?」

ジーンはうつむいた。「今回も別にパパ活を暴くとかはどうでもよくて、単に次の案件に向けての練習ね!」

天馬は疑問に思った。「何か以前も練習って言ってたな……今回も練習みたいなことやるのは何か意図があるの?」

「君は複数と同時にナチュラルと対峙したことないじゃん。だから一対一の場合、簡単に処理できるくらいじゃないとね」

「C級複数処理か……今でもやれる自信は正直あるな」

「怪我されたら困るから訓練は念入りにね」

そう言って、ジーンは本題を切り出した。


Part 2 変則的なミッション

ジーンは、これからの流れを説明し始めた。「まず場所は台東区上野。繁華街にパパ活女子が現れる。ただ、その女子が別に特別悪いというわけではない。単純にデータ取るために選出されただけね。それで彼女を捕まえて、近くのくつろげるところ、ギャストが近くにあるからそこで対話する。そこで彼女の主張を聞いて、ナチュラルを発現させる」

天馬はその説明を真剣に聞いていた。いつもながら、ジーンが提示する任務は突飛なものが多い。パパ活女子の特定、補導、そしてギャストでの面談。一見すると意味不明な一連の流れだが、その最終目的が「ナチュラルを発現させる」という点に、天馬は慣れてしまっていた。

ジーンは一呼吸置いて、一番重要なことを説明した。その言葉に、天馬はぴくりと反応した。「今回は、いかに天馬が迅速にナチュラルを討伐できるかを見るから。それで、天馬の腹案はわかってるから手加減しないでね」

「ギクッ」と天馬は内心でつぶやいた。ジーンは天馬の戦闘スタイル、特にナチュラルの討伐方法について、ジーン自身が徹底的に叩き込んだので、それゆえの「手加減しないでね」という言葉なのだろう。天馬はごまかすように言った。「別にナチュラルさえいつも通り倒せばいいんだろ?何か記録するのか?」

ジーンは少し意地の悪い笑みを浮かべた。「今回は討伐が遅かったら一万円に減額するから。逆に、こっちが認めるくらい手際よく倒せたら五万円あげる

天馬は驚いて目を見開いた。いつもは日給三万円。それが、今回は一万円に減額される可能性もあれば、五万円に増額される可能性もあるというのだ。これは彼にとって、とてつもない変動だった。

「今月、家計のために大半を家に振り込んだから小遣い少なかったのに、手加減したら一万円!?」天馬の声が裏返る。彼にとって、給料の額は日々の生活に直結する重要な問題だった。特に今月は、実家の家計を助けるために、アルバイトで稼いだ給料の大半を一戸家に入れていたため、自分の使える小遣いはわずかだった。

ジーンはそんな天馬の反応を楽しんでいるかのように微笑んだ。「今回の仕事クリアしたらまた説明するけど、ちゃんとやれたら五万上げる」

天馬は一瞬の逡巡の後、覚悟を決めたような顔になった。「わかった!今回は雑魚モンスターを瞬殺するわ!じゃあ行くか、上野に!」

その言葉とともに、天馬とジーンはリビングを後にした。交通機関を乗り継ぎ、二人は台東区上野を目指して動き出した。


Part 3 上野での待ち伏せ

天馬とジーンは上野駅に到着した。まだ昼時で、日差しが容赦なく照りつける。ジリジリと肌を焼くような暑さに、天馬は思わず声を上げた。

「女子がホテルに向かうまでまだ時間があるだろ? ハンバーガーチェーン店に行って暇つぶししていい?」

ジーンは首を左右に動かして即座に却下した。「天馬! 今仕事中なんだ! 正社員だったら割とそういうの融通が利くけど、それ以前にもう未来予測で僕がもう午後2時にその女子が男性と一緒にホテルに向かうってこと割り出してるから今からでも待ち伏せしなきゃ」

非正規雇用の俺はだめで、正社員はいいの? それって差別じゃん!」天馬は眉間にしわを寄せた。理不尽な差別に感じたのだ。「今から2時間もこの炎天下の中で待ち伏せしたら熱中症になるだろ? 30分前でいいじゃん!」

天馬は納得いかず反論したが、ジーンは容赦なかった。「以前、B級ナチュラルに負けたよね……で、君は今C級しか成果を上げていない。結果を出せば優遇されるけど、出せていないのであれば、つまりそういうことになるんだ

ジーンの言葉に、天馬はふと聖修院の先生が同じ言っていたことを思い出した。「日本は成果主義なんだな……まだGene社では認められてないと」

ジーンはため息をついて、さらに追い打ちをかける。「雇用形態で既にだめじゃん……まだ高校生だから知らないみたいだけど君、末端だからね」

世の中の不公平をまざまざと感じた天馬は、ぐっと言葉を飲み込んだ。不満はあったが、ジーンの言う通りにするしかない。しぶしぶジーンの指示に従い、二人は目的のホテルの陰で待ち伏せすることにした。灼熱のアスファルトからの照り返しが、ズボン越しにも伝わってくる。

その時、ジーンが言った。「これGene社が開発した小型サーキュレーターね、倒れると困るから」

ジーンは小型扇風機と同じくらいのサイズのサーキュレーターを天馬に向けた。すると、熱気を帯びた空気の中に、まるで冷房の効いた屋内にいるかのような涼しい風が注がれた。

「こんなものまであるのか! まるで屋内にいるみたいに快適! 涼しい……」

天馬は驚き、gene社の科学力に感嘆の声を漏らした。そんなやり取りをしているうちに、あっという間に1時間半が過ぎた。

「目的の女子だよ! 天馬! 声をかけて!」

ジーンの声で、天馬は視線をホテル入口へと向けた。そこには、背広を着た天馬の父親と同年代くらいの男性と、厚いメイクを施した天馬と同年代くらいの女性が、まさにホテルに入ろうとしているところだった。


Part 4 突撃取材

天馬は即座に、ホテルに入ろうとしていた男女に声をかけた。「すいません、今からいかがわしいことするのでしょうか?」

天馬のあまりに率直な言葉に、男性と女性はものすごく動揺し、驚きを隠せないようだった。男性の方は一瞬にして顔色を変え、鋭い視線を天馬に向けた。それはまるで、獲物を見つけた猛獣のような、しかし同時に警戒心と焦りが入り混じった目つきだった。

美人局かよ! 大人を舐めやがって! じゃあな!」

そう言い放つと、危機感を感じたその男性は、天馬と女性を残してそそくさと逃げ去ってしまった。その背中は、まるで何かから逃れるように、一目散に人混みへと消えていった。

男性が去った後、女性は怒りを露わにして天馬に詰め寄った。その厚いメイクの下に隠された表情は、明確な怒りと苛立ちに満ちていた。「何!? あんた!? 二万円の上客に逃げられちゃったじゃない!? インタビュー系のYouTuber? それともどっかの正義マン?」

女性の非難の声に、ジーンが天馬の後ろから静かに言った。ジーンは天馬の肩の高さでゆらゆらと浮きながら、女性に向かって穏やかな口調で語りかけた。「さっきのおじさんよりもいい話があるよ? 金に困ってるんでしょ? すぐそこのギャストで事情を聞くからついてきて! ギャストの料金はこちらが持つから!」

女性は警戒しながらも、ジーンの言葉に耳を傾けた。その視線は、天馬とジーンの間を行ったり来たりしている。明らかに怪訝そうな表情だ。「は? 警察でもなさそうだし、自警団の人? 説明してよ! どういうこと?」

天馬は混乱する女性に、得意げに胸を張って言った。「Gene社のものでして、これからいわゆるアンケートを取らせていただきます!」彼は、まるで自分がGene社の正式な社員であるかのように振る舞った。

しかし、ジーンは天馬の言葉に、少し強い口調で注意した。「余計に怪しいだろ!」ジーンの声には、若干の呆れと、それでも天馬をフォローしようとする意図が感じられた。

女性はジーンの言葉に一瞬眉をひそめたが、宙に浮くぬいぐるみが発する言葉と、目の前の高校生である天馬のどこか間の抜けた様子に、少し警戒心を解いたようだった。彼女の表情から、わずかに緊張が和らいだのが見て取れる。「何かぬいぐるみと喋ってるし怪しいけど、悪いような気はしないわ? 私のこと知りたいんでしょ? だったらその代わり、ギャストでたくさん頼むから全部おごってね」

どうやら女性は納得してくれたらしい。彼女が話に応じてくれたことに天馬は安堵した。こうして、天馬とジーン、そしてその女性は、最寄りのギャストへ向かい、そこで女性の話を聞くことになった。上野の喧騒の中、三人の奇妙な組み合わせは、ギャストへと吸い込まれていった。


Part 5 正義マンの余裕

ギャストに入店し、ファミレス席に着いた三人は、まず女性が注文を終えるのを待った。タッチパネルの操作音が、まるでせわしないタイピング音のように20分にわたって鳴り響く。注文が終わり、ジーンはその女性に質問を切り出した。

「まず、名前と年齢を教えてくれる?」

女性は少しはにかんだように答えた。「柊(ひいらぎ)夢子……16よ」

天馬と同い年。その事実に、天馬は内心で驚いた。ジーンは天馬に顔を向け、少し説明するように言葉を続けた。「まず、プロンプトを入力するための情報を聞き出して、何でこうやって聞き取り調査形式になったか? わかる? パパ活は現代社会では間違っているとは言いがたいから」

ジーンの説明に、天馬は少し納得いかない様子で柊に質問した。「僕と同い年の女子が売春なんてしちゃいけないよ! 親が悲しむぞ!」

天馬の言葉に、柊は「はあ!?」と声を上げて爆笑した。その笑いは、呆れと嘲笑が入り混じったようだった。「昭和のあのおじさんとまるで同じこと言ってて私に説教!? しちゃいけないって何? パパ活してはいけないエビデンスでもあるの!?」

天馬は少し驚いた様子だったが、質問に答えた。「エビデンスなんてないよ。でも、高校生がそういういかがわしいことしちゃいけないと思うんだ!」

柊はさらに笑い、テーブルを軽く叩いた。「私もう16で、弱者のおじさんに需要があるの! 大学の学費に備えて今から最低500万くらいは貯めておかないといけないの! 生活も苦しいしお金がいるの!」

天馬ははがゆい気持ちになったが、それでも食い下がった。「それでも、もし彼氏ができて、売春してましたって言ったら……」

天馬の説得を、柊は一蹴した。「それよりあんた、裕福そうね……だから昭和くさいこと言うのね。金になるなら何したっていいじゃない! あんたはいいわよね……正義を振りかざせるほど裕福そうで」

柊の言葉は、天馬に衝撃を与えた。その言葉の重みに、天馬の言葉は止まってしまった。柊は天馬の沈黙を気にすることなく、話を続けた。「そうやっていつも、私より勝ち組そうな人って説教するよね? 努力が足りないとか、これやっちゃいけないとか! 自分は崖から眺めてるくせに?」

そうやって談義している間に、二人の前に沢山の食事が運ばれてきた。注文された料理の量に、天馬は何も言うことができなかった。柊は、運ばれてきた食事を女性にしては比較的速いスピードで食べ始めた。

「今チャンスだから今のうちに胃袋に栄養を蓄えとかなくちゃ……久しぶりのごちそう……すごく美味しい!」

柊が食事に夢中になっている隙を見て、ジーンは声をかけた。「ご協力ご苦労様! はいこれ現金だけど!」

そう言ってジーンは、用意していた現金4万円を柊に差し出した。柊は驚きに目を見開き、一瞬食べるのを止めた。「4万円!? マジ!? もしかして結局あなた達、私が目的!?」

ジーンは冷静に言った。「後、食べ終わったらちょっと外出てくれる。慌てなくていいからね、それと」ジーンは天馬に振り向いた。「彼女の話を聞いて、間違ってるって言える? じゃあ他に何が間違ってるか今から答えを導き出して」

そう聞かれた天馬は少し動揺していたが、すぐに冷静になって考え始めた。柊の言葉が脳裏をよぎる。「パパ活は間違っていないとしても……自分からしてみれば驚く話だ……じゃあ根本的に……そうか!」

柊は食事を終えると、天馬とジーンに言った。「4万もくれるんならホテルに行ってもいいけど、そんな感じじゃなさそうね」

ジーンはにこやかに答えた。「外出てちょっとおまじないをしたらそれで終わりね」

その会話の後、ギャストで会計を済ませた三人は、そのままギャストの外へ出た。

Part 6 前座の終わり

ギャストの外に出ると、ジーンは天馬に言った。「プロンプトを思いついたんだったら入力して! ここでナチュラルを発現するよ!」

天馬は静かにうなずいた。そして、**スマートコンタクト(スマコン)**越しに、視界に浮かぶ入力画面へと静かに思考を巡らせる。彼の指が空中でなぞるように動き、プロンプトが入力されていく。

「目先の利益。方法の模索Save the Gene!!

その言葉が確定した瞬間、隣に立っていた柊がその場で糸が切れたように崩れ落ちた。彼女の体から黒い靄が立ち上り、みるみるうちに巨大なカマキリ型のナチュラルの姿が体現していく。その姿は、ガストの明るい外観とは不釣り合いなほど、異質で不気味な存在感を放っていた。

ナチュラル(カマキリ型)

ジーンは頷き、宙に浮いたまま手元の見えないタイマーを操作するように言った。「じゃあタイマーで計測するね! 一分以上たったら減額だから、ハイ、スタート!」

「え!? 昆虫のナチュラルなんて俺初めてだぞ!」天馬は驚きを隠せない。これまでのナチュラルの多くは獣や動物の形をしており、昆虫型は初めての経験だった。しかし、すぐに彼は冷静さを取り戻す。「いや待てよ……単純に巨大なカマキリであれば、相手の出方をうかがわなくても……」

天馬は思考を加速させる。カマキリという具体的な形態に縛られず、その本質的な特性を捉えようとした。巨大な昆虫。鎌による攻撃。そのキーワードから、瞬時に最適なプロンプトを導き出した。

「巨大な昆虫。鎌で攻撃。Destruction!!

天馬がプロンプトを唱えると、カマキリ型のナチュラルは、まるで何も反応を示す間もなく、ザラザラと音を立てながら砂のように崩れ落ちていった。あっという間にその巨体は消滅し、そこには呆然と立ち尽くす柊が残された。

ジーンは天馬の想像以上の討伐タイムに喜びを露わにした。「さすが天馬! 5秒で瞬殺!」

柊は体勢を整え、ふらつきながら天馬やジーンに言った。「一瞬でかい虫が見えたけど、私疲れているのかしら……私は進学のために売春を続けざるを得ないけど……ちょっともう少し方法考えて、YouTuberとかの広告収入とかアルバイトでも始めてみようかな……」

天馬は賛同し、心の底からそうあってほしいと願うようにアドバイスした。「やっぱり売春よりまっとうに稼いだ方がいいって!」

天馬はいつものように、相手が改心したと思った。しかし、柊は天馬の言葉に少し不機嫌そうな表情を浮かべた。「あんた、少し気に入らないわ……人の事情も知らないで、どう稼ごうが私の勝手でしょ?……金ももらったしさようなら」

柊はそう言い捨てると、くるりと踵を返し、手を振って天馬たちの前から去っていった。その背中には、まだ何かしらの影が残っているように見えた。

柊を見送った後、ジーンは天馬に顔を向けた。「さてと、ジュブナイル君は葛藤したいとは思うけど、次が本番の案件だからそんな暇ないからね。はい、5万円!」

天馬のスマコンの口座アプリには、ジーンの言葉と同時に5万円が振り込まれた。通常の日給3万円をはるかに上回る金額に、天馬は驚きと喜びを感じた。
ジーンはこう補足をした 「ちなみに未成年の売春は法律で禁止されてるから間違ってるよ。でも現代では生きていくためにそんなこと拘る余裕がない人が沢山いるんだ法に抵触して摘発するのはあくまで警察の仕事だから

いつも通り割り切る言い方をするジーンに対して、天馬はまた少し社会勉強をした気になった。そして気持ちを切り替えてジーンにこう質問した。
「前回も今回も練習だったんだろ?次何やらせたいか教えてくれよ」天馬はジーンに尋ねた。これまでの二回の「練習」が、今回の高額報酬につながったのだろうか。

ジーンはかしこまるように答えた。「次はいよいよC級の案件で一番難解な奴をこなしてもらう!」

天馬の表情は真剣になった。C級の中でも一番難解。一体どんな任務が待ち受けているのだろうか。

ジーンは話を続けた。「新宿トー横界隈のボランティア団体、ゾフィさんという人物からの依頼だ。トー横界隈の不特定多数を改心させてほしいって」

天馬はものすごく驚いた。その言葉は、彼の予想をはるかに超えるものだった。「トー横界隈!? もしかしてトー横界隈の連中のナチュラルを全員相手にしろってこと!?」

ジーンは天馬の問いに、涼しい顔で答えた。「ご名答! 次の祝日で勝負を決めるから心の準備をしといて!」

C級でありながら集団を相手にするという依頼に、天馬は先行きに不安を感じた。トー横界隈といえば、若者たちがたむろし、様々な問題を抱えている場所として知られている。そんな場所で、不特定多数のナチュラルの討伐。

「俺がトー横行けって!? まさかこんな展開になるとは思わなかった」

その時、天馬のプライドが大きく揺らいだのだった。彼の心には、未だかつてないほどの重圧と、漠然とした恐怖がのしかかっていた。

To be continued!!


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