「最弱に選ばれたので、パーティを解散しま〜す!」第二話

《第二話:冒険は再び》

◯草原(朝)

マグ、ニコラ、テフィ、カイスは馬車に揺られながら、狭い座席にぎゅうぎゅうになって座っている。

マグ「……なんでこんなことになってんの?」

カタカタと車輪の音が聞こえる。

◯ (回想)シーナス闘技場・会議室

『遡ること、昨日』

シーナスの闘技会に集められたマグ、ニコラ、テフィ、カイス。

オリバー「あのさぁ、困るんだよね。任務を放棄して勝手にパーティを解散するとかさ。私も驚いちゃったよ、普通は「頑張ろう」って手を取り合うもんだよ?諦め早くね?」

オリバーの前で横一列に並んでいるマグ、ニコラ、テフィ、カイスは気まずそうな表情を浮かべている。

オリバー「どんな展開で別れたのか知らないけどねぇ。理由が最弱すぎるんだよ。なに、「冒険に向いてないから」とか「他にやることがあるから〜」って…。これがゆとりってやつ?魔法界にもあるの?そういう世代」

オリバー、後ろにいるジェンから分厚い本を受け取り、パラパラとページをめくっている。

オリバー「そんで君たち……インヴィクター目指すつもりで参加してないんだっけ?」

オリバー、ページを行ったり来たりしている。

オリバー「まぁ本来ぃ?インヴィクタートーナメントで結成されたパーティの意見は尊重するのも主催側の義務ではあるんだけどさぁ?さすがにこればっかりは……規則だからさぁ。」

オリバー、1072ページ目を開いて見せた。

オリバー「ここ。〝条項2034項」

オリバー、文字を読みながら文章を指でなぞる。

オリバー「最弱に選ばれた者は全任務を終了、又はメンバーの全滅を以てパーティの解散を強制的に命ずる〟。……意味わかるね?」

オリバー、本を閉じてジェンに返す。

オリバー「ま、そういうことだから。ちなみに冒険の向き不向きは慣れだよ、慣れ。とにかく、任務を終わらせれば解散できるから、ね?」
マグ「……で、でも……その」
オリバー「馬車の手配もう済んでるんだよ。君たちのためでもあるんだから、頑張って!」

◯草原

『彼らはこうして再び集まることになり、今に至るのであった。』

マグ「はぁ〜……こんなつもりなかったのになぁ〜……」

マグ、手で顔を覆ってため息をつく。

テフィ「……だっ、誰のせいでもありませんよ!同意のもとで解散したんですから!…ね?ニコラさん」
ニコラ「なんで私……」

ニコラ、足を組んで髪を触っている。

馬車内に気まずい空気が流れる。

テフィ「は、始まったことは仕方ありませんよ!早く任務を終わらせて、早く解散しちゃえばいいんです!」
マグ「解散するための冒険か〜〜」
ニコラ「目標があるだけいいんじゃない?どうせ任務が終われば強制的に解散させられるみたいだし」
テフィ「そ、そうですよ!最弱に任される任務なんて、なんてことないと思いますし!」
カイス「任務が完了するのが先か僕たちが死ぬのが先か……」

一同、フードで顔を隠すカイスの方を見る。

ニコラ、ため息をつく。

テフィ「せめてもっと楽しくいきましょうよぉ〜……」

馬車は蹄をかき鳴らして街へと向かった。

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◯コリチア・街

『魔法界北西部、コリチア』

大都市で、多くの人が街のど真ん中にある市場に足を運んでいる。

◯コリチア・ギルド

マグ、ニコラ、テフィ、カイス、人をかき分けて受付までたどり着く。

エマ「……あぁ、こんにちは。あなたたちが例の最弱組ですね。」

受付嬢をしているエマ、開いていた大きな本をすぐ横の棚にしまう。

マグ「そ、そうです……。」
テフィ「自分で最弱と認めてても、そう言われると凹みますね〜……」
受付嬢B「違反を見逃す幹部も何を考えているのか理解できません。…なんにせよ、闘技会の寛大さに救われましたね。」

エマ、下の引き出しを漁り始めた。

ニコラ「……私たちに課せられてた任務はどうなったの?受注し直すの?」
エマ「既に処理しました。今回あなたたちには、レベルに見合った任務を提供できるよう、ダンジョンに挑戦していただきます。」
マグ・ニコラ「ダンジョン?」

エマ、引き出しから数多くの資料を取り出して厳選している。

エマ「はい。基本的にはインヴィクター・トーナメント戦に申し込む前にダンジョンに行って、潜在魔力や素質、実力を確かめ、結果が書かれた書類を闘技会に提出するのが一般的です。」
ニコラ「私、提出してないわよ」
マグ「俺もだ」
テフィ「私もです」
エマ「まぁ、提出していないからと言って不正になるわけではありません。実際、あなたたちも正式に最弱として選ばれてますしね。」
マグ「じゃあ……その書類を出すと何が起こる?」

マグ、目をパチクリさせている。

エマ「書類はいわば名刺です。参加者や観客に名前と魔力値を見てもらうことができるため、試合で良い結果を残せば、優勝できなくとも婚約者候補が現れたり王族の護衛として雇われたり……あとは魔力値が高いとシードとして参加することができたりもします。」
ニコラ「そ、それは……」
マグ「モテる……ってこともありえるのか」

マグは興奮気味に前のめりになる。

エマは、気にも止めず大量の紙の中から3つを選んで目を通している。

エマ「あなたたちはその書類も提出してませんし……、闘技場でも強制任務でさえも、魔法を一切使用していません。これでは、闘技会はあなたたちの魔力値を知ることができず、パーティのレベルに合った任務を発注できません。」

マグ、眉間にしわを寄せて唸る。

マグ「と、いうとことは……?」
エマ「なので、あなたたちがどれだけの魔法を備えてるのか判断するための……いわば、腕試しをしてもらいたいのです。」

マグ、ニコラ、テフィはお互い顔を見合わせて不安そうな表情を見せ合う。

エマ「安心してください。トーナメント戦と同じく、魔法シールドを授けますので死ぬ恐れはありません。」

エマ、地図と用紙を差し出す。

エマ「指定の物を持って帰ってくることがダンジョンのクリア条件ですが、今回は腕試しですのでシールドが割れるか指定の物を採取した時点で終了とさせていただきます。」

ニコラ、恐る恐る地図と用紙を受け取る。

エマ「ダンジョンは近くの廃城です。お気をつけていってらっしゃいませ。」

エマ、座ったままお辞儀をする。

マグ、ニコラ、テフィ、カイスは困った顔をする。

◯森

マグ、ニコラ、テフィ、カイスは草原を歩いている。

ニコラ、地図を広げている。

カイス、フードで顔を隠して俯いている。

ニコラ「早く任務を終わらせようって決めたばかりなのに、なんだか遠回りしてる気がするわ」
マグ「このダンジョンさえ乗り越えれば通常の任務に戻れるんだよな……」

マグ、苦い顔で手を合わせる。

マグ「なんだかんだどうにかなってくれ、頼むー!」
ニコラ「腕試しだって言われてるのに運任せにしないでほしいのだけど。」

ニコラ、呆れてため息をついたあとテフィを見る。

テフィ、虫眼鏡を取り出して歩きながら観察している。

テフィ「このあたりはマズマ鳥が好んで食べるサリショウミツっていう越年草が一面に広がっているんですねぇ〜。しかし、この先のダンジョンに人が出入りするからか、警戒心の強いマズマ鳥は寄って来れないので、普通に見られるサリショウミツより綺麗な状態を保ってるのか……」

テフィ、話し続けている。

ニコラ、続いて横を見るがカイスがいない。

カイス「……つか…れた」

ニコラ、後ろからカイスの声がして振り向く。

カイス、フードの両端を顔の前に寄せて歩いているため、前が見えずフラフラと歩いている。

ニコラ、立ち止まってカイスの元まで道を戻る。

ニコラ、地図をたたんで勢いよくカイスの肩に片手を置く。

カイス、肩をビクッと震わせる。

カイス「ひゃいっ」
ニコラ「そうやって歩いてると躓くわよ」
カイス「ご、ごめんなさ……」
マグ「あ、城が見えたぞ!」

ニコラ、テフィはかなり前の方を歩くマグの方を見る。

マグ、道の先を指さしている。

◯森・廃城前

マグ、ニコラ、テフィ、カイスが辿り着いたのは不気味な雰囲気の廃城。

どこからかカラスの鳴き声がしたり、異様な空気が漂っている。

マグ「ついに到着してしまったか〜」
テフィ「すっごい不気味です……。」

マグ、用紙を取り出して見る。

用紙には、竜の角の絵が描かれている。

マグ「竜の角を持って帰ればクリア……。ほんとに初心者に勧めるダンジョンなのかぁ?」
テフィ「竜がいるなんてワクワクします!私に厄災を起こせるほどの大きな力があれば、とっとと捕まえてすぐに解剖してレポートにまとめたいんですけどね〜!」
マグ「言ってること全部怖すぎるんですけど!」
テフィ「剥製にしてもいいかもしれません〜!」

ニコラ、木の看板を見つけて顔をしかめる。

看板には〝『ほら、ホラーな夜だにゃ〜』のイベント会場はこちら!〟と書かれている。

ネル・コミャリア、猫耳メイドの格好で髪としっぽをなびかせながらマグ達の横を通り過ぎる。

マグ、ネルを見て驚く。

マグ「……ね、猫!?」

マグ、ニコラ、テフィ、カイスはネルの方を見る。

ネルネル「ん?ネコじゃないのにゃ。」

ネル、マグ達を振り向いて猫のポーズをキめる。

ネル「ネル・コミャリアにゃ〜!」
テフィ「おぉ。略してネコ、ですね!」
ネル「だぁからネコじゃないのにゃ。ネル・コミャリャ……コミャリアにゃ」
ニコラ「名前と語尾の相性がとてつもなく悪い気がする。」

マグ、ネルを見ながら絵が描かれた用紙をテフィに押し付ける。

マグ「かっ……」

マグ、ネルの元に歩き出し、興奮状態で目を輝かせる。

マグ「可愛いーっ!」
ネル「ありがとにゃんっ」

ネル、手でハートを作ったりピースしたりポーズを変える。

ニコラ、ため息をつく。

ネル「君たち、お客さんかにゃーっ?」
テフィ「えっと……私たち、ダンジョンに挑戦しにきた者でして……」

テフィ、竜の角が描かれた用紙をネルに見せる。

ネル、ポーズをやめて竜の角が描かれた用紙を見て顔をしかめる。

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