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紙の雑誌で累計29万部!純度100%の面白い小説を集めた新文芸誌「GOAT」3号目の挑戦

出版の世界には「3号雑誌」という言葉があります。
1号目は創刊祝いで、2号目はその流れを受けて、
そして3号目で雑誌としての本当の真価が問われる。
これを逃れえずに3号で休刊という雑誌も少なくありません。

そんなしょっぱい雑誌市場のなかで、頭一つ抜いてるなあと感じるのが「GOAT」(小学館)です。累計29万部という紙の文芸誌としては考えられない数字を挙げ、3号の壁を破るべく、すごい仕掛けと作品が収められています。ここではその仕掛けと、作品について少しだけ触れていきます。

「文藝」(河出書房新社)をはじめ「群像」(講談社)や、「新潮」(新潮社)が大胆なリニューアルを果たすなか、「GOAT」の造本はカバーだけでなく、本文の用紙まで凝っています。しかも毎号造本設計を変えてくる。私のような造本好きにはたまりません。

ザラザラとつるつる。二つのテクスチャーが官能的で美しい

今回手に取って思ったのが、手触り感。ぜひとも書店さんで手に取るか、ネット書店さんで取り寄せていただきたいんですが、手触りがめちゃくちゃ気持ちいい。ザラザラとつるつるの触感のコントラストがたまりません。

ザラザラの部分、小学館さんのWEB記事によると、コールドフォイルという特殊な加工だそうです。で、ちょっと調べてみると、箔に色を混ぜたりグラデーションができる。しかも、通常は箔に色をのせたりするのは難しいのですが、コールドフォイルはそれができる。だから虹のように光る表紙が実現できたのでしょう。しかもヤギさんの部分がつるつるなのは、あくまで推測ですがオペークホワイトという特殊な白インクをつかって、裏移りのない真っ白な白を実現させています。

ただ一つわからないのは、ヤギの鏡の縁の部分です。ここだけ質感が違うんですね。ということは二つの箔をつかって、ザラザラ2種を実現させたのか、いやはやとにかく豪華な作りです。

いきなり細かい話になってすみません。話が止まらなくなったので本文の話もさせてください。普通は雑誌の本文用紙というとグラビア用の紙と本文用の紙、二つで構成されているんですね。

「GOAT」の読みやすさの秘密

しかし「GOATは」本文を、一押しの特集部分とそれ以外の部分で紙を変えているんですね。一押し部分には本の見返しなどでも使われる濃い色の上質紙(今回は色上質りんどうN)を使い、文字の刷り色はスミ。そしてそれ以外の部分はソリストミルキーというカラー印刷もできる本文用紙を使っています。つまり、本文の色も変えられるということなんです。

普通文芸誌というと2段組で文字はスミであることが多いのですが、「GOAT」は文字4段組という段組の多さにもかかわらず読みやすい。それは、印刷の都合のいいところで、色を変えているんですね。だから作品ごとに気分が変わって、488ページ4段文字組という細かさにもかかわらず読めてしまうということなんです。

ということで長らくお待たせしました。中身の作品についてお話します。創刊号の「愛」、2号の「悪」「旅」に続いて、3号のテーマは「美」です。

え?「GOAT」終わっちゃうかも?

はっきり言います。このテーマをみたとき「ああ、GOATも3号雑誌でおわってしまうのか?」と一瞬思いました。だって、こんなに抽象的で形にしにくいものどうするんだって、思ったからです。でも「GOAT」の捉える「美」は私の数メートル先を行っていましたね。

まず巻頭作品の「まぶた」(高瀬隼子)は、久しぶりに会った67歳の父はまぶたをふたえに整形していたというお話。皆さんだったらどうします? 私は、「いや、二重に整形って!」と思わず突っ込んでしまいました。

もちろん、何歳であっても整形するのは自由です。しかし、自分の親がとなると心にゆらぐものがありますよね。「だったら、その父と母から生まれた私の顔はだめなのか」と。芥川賞受賞の才能の無駄な使いっぷりに思わず心をつかまれてしまいました。高瀬隼子さん、大好きです。

「ああ、この楽しさよ、ずっと続いてほしいなあ」と思いつつ、
読み進めるのが惜しくて、いまだ前に進めずにいます。

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