エッセイ|寝返りの哲学
ここだけの話ですが、私は寝相がよくありません。正確に言えば、寝相がよくないらしいのです。自分では分からないのですが、家族に言われるのでおそらくそうなのでしょう。
さすがに、寝具が幾重にもなり重量感を増すばかりのこの時期は、身動きが取りづらいためにそれほどでもないのですが、ほかの季節などは、朝になると掛け布団が身体に巻きついてミノムシのようになっていることも少なくありません。これは、おそらく頻繁に寝返りをうつせいだと思われます。
さて、寝相なんてみんな大差ないだろうと思っていたら、実はそうでもないらしいことがついに判明しました。
前の職場で一緒だった人(50代♀)に聞いたところによると、彼女は「気を付け」の体勢のまま仰向けで休むというのです。うわ。とても信じられません。気を付けだなんて。しかも、朝までそのままの体勢だと言うのですから、想像を絶する世界です。
さらに驚いたことには、その寝相は後天的なものだと言うのです。美しく年齢を重ねる某大女優が、トーク番組で「シワが増えるから仰向けでしか寝ない」と語っていたのを聞いて以来、自分でも実践するようになったのだと。慣れないうちは苦痛だったけれど、そのうちに苦にならなくなったと…。
その話を聞いて、私は心底ビビリました。そんなこと言ったら、私なんてどうなっちゃうのでしょう。なにしろ、私の寝相といえば気を付けとは程遠く、あっちゃこっちゃ好き勝手に寝返りうちまくり、頬っぺたにクセつきまくりなのです。何十年後かに泣きを見ることになるのでしょうか。それは困ります。
にわかに危機感をおぼえた私は、試しに気を付けのまま眠りにつくことにしました。ダメです。全然ダメです。寝苦しくていけません。寝返りは私の健康の源なのです(多分)。
このままいくと、将来的に私の顔面はどえらいことになるのでしょうか。想像するだに恐ろしいです。しかし、それもまた運命と甘んじて受け容れるのもまた一興。顔中にその人間の年輪が刻まれるなんて、カッコいいじゃん。人生、開き直りが肝心なのです(きっと)。
* 2001/1/28記(2026/1/22改題公開)
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