【ショート】 羽を隠した魔女
―― short story ――
その村はずれには一人の魔女が住んでいた。
月に一度しか村を訪れず、フードを被り、おぼつかない足で歩く彼女は気味悪がられていた。
しかし、村人たちも害はないので邪険にすることはなかった。
ある時、村に流行病が蔓延った。
熱が高く上がり、運が悪いと命を落とす者もいた。
ある村人が思い立ち、魔女に薬を作れないか相談した。
魔女は試行錯誤し、薬を作って村人に渡した。
流行病はたちどころに治まった。
村人たちは感謝し、魔女へお礼の食糧を分けた。
魔女もその心に感謝し、村人たちが困っているときには手を差し伸べるようになった。
その日、村の一人の男の子が魔女の素顔を盗み見てしまう。
息を呑んだ。
男の子はことあるごとに魔女に会いに行った。
相手にされなかった。
男の子が成人しても、魔女は年を取らなかった。
でも、近くにいたかった。
成人した彼は魔女に近づいた。
魔女は答えなかった。
傷ついても彼は諦めなかった。
彼は村長に会いに行った。
「魔女に弟子入りしたい」
村長は頷いた。
「ただし、恋をしてはならん。」
魔女は断った。
魔女の瞳は揺れていた。
彼はそれでも魔女の近くに簡易的な小屋を作り、移り住んだ。
そして、ある晩。
魔女の背中に美しい透明な羽が生えているのを見てしまう。
吸い込まれるように、魔女に近づく。
魔女は気づくと、姿を消そうと踵を返す。
彼は魔女の腕を掴み、縋った。
引き寄せると、魔女は涙をこぼす。
……うつくしい。
男は涙を指で拭った。
「……一人でいないとダメなの」
魔女は顔を何度も横に振る。
ゆっくりと、見上げる。
「優しい男の人がいると、……お腹が空いちゃうから」
魔女の瞳は、赤かった。
村の明かりが消える。
村長は、そっと灯りをつけた。
古い棚の上には、一枚の透明な羽が置いてあった。
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