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【ショート】 魔法がほどける音

―― short story ――

西の空に夕陽が落ちる。

何気なく空を見上げた瞬間だった。

シュルッと衣擦れのような音がした。

国を覆っていたはずの結界が、糸をほどくように薄れていく。

その綻びに魔物が集まってくる。

思わず息を呑むと、踵を返し王城へ足を向けた。

……やめた。

振り返る。

両手を重ねて空へかざす。

「光の精霊よ。力を貸して」

囁きと共に光が集まる。祈りにも似た言葉は糸を紡ぎ出す。

再び結界が閉じる。

魔物たちが散り散りになっていった。

手を下ろして深く息を吐いた。

辺りはまた静かになった。

木の上にいる鳥を見つめる。

「お願い、できる?」

鳥が私の肩に降り立つ。

カバンから紙を取り出しメモを記す。

『結界に綻びが出ている』

鳥の脚に括り付けると、空へ飛ばした。

鳥の背を見つめる。

「あの人なら、動いてくれるはず」

厳しくて優しい宰相様。

私が追放されたと知ったら……。

首を横に振る。

ゆっくりと歩き出すと、噛んでいた唇が痛いことに気づく。


城はもう見えなかった。



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