小学館「マンガワン」編集部お詫びの問題点と『堕天作戦』男性漫画家による未成年への性加害事件の時系列まとめ
男性漫画家による未成年への性的暴行事件に関する記事ですので、ご自身につらい経験のある方などは、フラッシュバック等にご注意ください。すべてを読まなくてもよいように、冒頭に時系列で概要をまず書いておきます。
筆者は過去に被害者女性とやや似た経験をしており、これを社会的に重大な事件だと考え、記録として書いております(職業は編集者です)。
この事件の概要(時系列まとめ)
小学館の漫画アプリ「マンガワン」に『堕天作戦』を掲載していた50代の男性漫画家・山本章一(本名・栗田和明)氏は、通信制高校でデッサン講師を務めており、教師の立場を悪用して、生徒少女を相手に継続的かつ陵辱的な性的暴行を行っていた(2016年〜2020年)
法改正前だったため、この件だけでは立件されず、少女の裸の写真(無理に撮ったもの)を所持していたことから、児ポ法で逮捕された(2020年)
逮捕を受けて担当編集者は「体調不良での休載」と告知(2020年)
連載再開のお知らせを掲載(2020年)
担当編集者が、LINEで、被害者女性「150万円で」「口外禁止」「連載再開を許すこと」などを求める示談を持ちかける(2021年5月)
被害者側は「連載を再開するなら、逮捕の件は公表してほしい」と返答。示談は成立せず(2021年6月)
被害者が男性漫画家を提訴(2022年7月)
連載漫画『堕天作戦』の連載を終了(2022年10月)
同じ担当編集者のもと、男性漫画家の名義を、別ペンネーム「一路一」に変更し、作画担当を別の女性漫画家にして、新連載『常人仮面』をスタート(2022年12月)
マンガワン編集部がどこまで知っていたのかは不明だが、ペンネームを変更しての新連載を問題視しなかった。ギャラの支払いの関係で「山本章一=一路一」と同一人物であることは少なくとも把握していたのではないかと思われる
この後、フリーだった担当編集者を、小学館は正社員として雇用
裁判で判決が出る。弁護士ドットコムや朝日新聞などに記事が掲載される。性行為、スカトロ行為、撮影などの内容のひどさや、判決でグルーミングが認められたことを伝える(2026年2月20日)
Xでこの記事の加害者は男性漫画家だ、というリークが出る(2026年2月25日)
多くの漫画家が「真実であれば許されない」「未成年に加害した人に仕事をさせないでほしい」という旨をXで投稿しはじめる
作品のファンだった個人が「事実なら『堕天作戦』を人におすすめしてきたことや、課金したことが、加害につながっていた」と後悔している旨をXで発信しはじめる。「マンガワンのアプリを削除します」の声も多数出はじめる
『常人仮面』作画担当である女性漫画家が非常にショックを受けている旨をXに投稿する(2026年2月26日)
『常人仮面』のKindle配信が停止
Xで騒ぎとなって数日が経ち、マンガワン編集部は、金曜の17:30過ぎ(会社の電話受付時間の終了後、かつ1週間のうちテレビのニュースにもっとも扱われにくい時間帯)にアプリとサイトに短い「常人仮面掲載終了のお詫び」を画像で載せた(2026年2月27日夕)
毎日新聞、共同通信等、全国紙と通信社が記事化して配信する(2026年2月27日、金曜夜)
マンガワンに作品を連載中および掲載中の漫画家から「明日の更新は見合わせます」「作品を引き上げることにしました」「掲載を停止してもらいました」といった投稿が多数現れる(2026年2月27日、金曜夜)
以上、ここまで読んでいただければ、事件の時系列にそった出来事はご理解いただけたかと思いますので、性被害経験などのある方は、この先は読み進めなくても結構です。
補足情報
男性漫画家が勤務していたのは、学校法人恭敬学園(北海道仁木町)が運営する通信制・北海道芸術高校札幌サテライトキャンパス
小学館全社からのプレスリリースは出ていない(2026年2月28日朝現在)
小学館では、2024年に『セクシー田中さん』のドラマ化に際し、女性漫画家が死亡している。編集部が漫画家の要望をテレビ局に正確に伝えていなかったことがわかっている。
上記の件での漫画家の自死に際し、当時の小学館の編集部は「寂しいです、先生」と死を悼みつつも、情緒に偏ったコメントを発表した。
『堕天作戦』『常人仮面』担当編集者がこの裁判の途中で正社員となっていることの根拠は下記のX投稿より

加害者氏名のない、2月20日時点の記事
男性は父親のようにふるまいながら、「おしおき」などと称して性行為を求めた。さらに、女性に自分の排泄物を食べさせたり、身体に「奴隷」と落書きして撮影する行為もあったという。
女性は訴状などで「拒否すれば高校生活に支障をきたす恐れがある」「密室で2人きりの状況で断ればどうなるかわからない」と考え、行為に応じざるを得なかったと主張した。
こうした行為は、女性が高校を卒業した後、18歳まで続いた。女性は重度のPTSD(心的外傷後ストレス障害)や解離性同一性障害と診断され、現在も日常生活に支障が出ているという。
判決は元教員が優位な立場を悪用したと認め、「原告の性的自己決定権を侵害した」と述べた。訴訟で女性側は元教員から性的な目的で子どもを手なずける「グルーミング」を受けたと訴えており、判決はこれを認めたかたちだ。
マンガワンからお知らせが出たあとの新聞記事
札幌市の通信制高校の教員でもあった男性は2020年2月、生徒だった女性を被写体とした児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)の罪で罰金30万円の略式命令を受け、漫画は休載になった。
編集者は21年5月、男性と女性が和解を協議していたLINEグループに加わり、(1)男性が示談金150万円を支払う(2)口外しない―などの条件を巡り、公正証書の作成を提案。女性が納得せず、和解は成立しなかった。しかし、22年に男性が原作者を務める新連載が始まっていた。
マンガワンからの相次ぐ作品引き上げ
マンガワンでの配信、停止します──2月27日現在、小学館の漫画配信サービス「マンガワン」で作品を配信する漫画家から、そんな宣言がX上で相次いで上がっている。マンガワン編集部は同日、連載していた漫画「常人仮面」について、原作者が未成年者への性加害の疑いで逮捕されていたにもかかわらず名義を変えて連載を始めていたことを明かし、謝罪。同作を配信停止としたが、これらの対応や声明を巡り、小学館に対し非難の声が上がっている。
マンガワンの謝罪文
画像で貼られていただけでした。ことの重大さに対して、あまりにも軽く、ショックを受けました。


配信停止のお詫びをテキストに起こしたもの
『常人仮面』配信停止に関するご説明とお詫び
『常人仮面』につきまして、原作者の起用判断および確認体制に問題があったため、配信を停止し、単行本の出荷を停止いたしました。
原作者の一路一氏は、『堕天作戦』の作者である山本章一氏と同一人物です。 2020年に、山本氏が逮捕・略式起訴され罰金刑を受けたことを踏まえ、『堕天作戦』の連載を中止いたしました。 しかしながら、2022年に、マンガワン編集部は、一路一名義の原作で新連載『常人仮面』を開始いたしました。本来であれば原作者として起用すべきではありませんでした。何よりも被害に遭われた方に対し、心よりお詫び申し上げます。編集部として責任を重く受け止めております。
本件により、読者の皆様、『常人仮面』作画の鶴吉繪理先生や寄稿いただいている作家の皆様、ならびに関係者の皆様に、多大なご心配とご迷惑をおかけしておりますことについて、深くお詫び申し上げます。
マンガワン編集部
なお、山本氏と被害に遭われた方との民事訴訟において言及された、和解協議については、編集部が組織として関与する意図はありませんでしたが、当事者双方からの求めに応じる形で編集者がメッセージアプリのグループに参加したことがありました。参加以前に既に当事者間で協議されていた条件があり、編集者は、当事者に対し、弁護士を委任して公正証書を作成してもらうよう助言をしております。当該事案の重大性に対する編集部としての認識および情報把握が十分であったとは言えず、不適切な対応でした。 あらためてお詫びするとともに、再発防止に取り組んで参ります。
マンガワンお詫び文の問題点
マンガワン編集部のお詫び文については、ツッコミどころが多すぎて長くなってしまいますので、ここから3段落、箇条書きとさせていただきます。
タイトルがあくまで『配信停止』のお詫びなのがおかしい
まず被害者への謝罪を最初に書くべき
何より問題なのは、漫画家の逮捕の事実を隠していたこと
同様に、性犯罪者が反省・謝罪・更生のないまま、別人として再スタートの場を与えたのはおかしい
出版社として、また編集部として「性加害は絶対に許さない」「ましてや未成年へのそれは問題外である」「今後は絶対に許さない」と表明すべき
「マンガ表現の中の暴力と現実のそれは明確に区別している」と表明すべき。例えばビジュアルによる未成年の性的表現は日本ではOKだが、海外では国によっては所持のみでも逮捕となる(例:サッカー協会の影山氏の逮捕)。『堕天作戦』作者のような事件があると、その線引きが変わってくる可能性もある
マンガワン編集部の不可解さ
逮捕の2020年時点で、なぜ漫画家・山本章一氏を契約解除しなかったのか
「逮捕」を「体調不良」で休載させることは通常行われているのか
2022年に提訴されたことを受けて『堕天作戦』の連載を終了させているが、その理由が未成年への性的暴行事件であるということは、編集部内・社内でどこまで共有されていたのか
『常人仮面』の原作が山本章一氏であることを、編集部内・社内のどこまでの人間が知っていたのか、GOを出した責任は誰にあるのか(お詫び文の「本来であれば原作者として起用すべきではありませんでした」からは、わかっていたのにGOを出した、と読み取れる)
示談交渉は脅しや二次加害にあたるおそれ
なぜ編集者が未成年者に対する示談交渉に介入したのか?
「口外を禁止する」「仕事を再開させろ」という示談内容は十分に二次加害となりうる
お詫び文にある、編集者が示談交渉をした理由の「当事者双方からの求めに応じる形で編集者がメッセージアプリのグループに参加」は事実といえるのか?
加害者と利益を共有する成人男性からの申し出が、性被害者にとって恐怖であったろうことは想像に難くない。
加害者との不毛なやりとりに疲弊した被害者が「代理人(通常は弁護士)を立ててくれ」といったのを、漫画家が弁護士に依頼せずに編集者を引き入れたとか、編集者を入れることで「この先生の作品は社会的に価値があるんだ。君のせいで連載が再開できなくて読者にも迷惑をかけているんだ」というようなプレッシャーをかける意図はなかったのか?
性暴力は死に至る可能性も
被害者は、自殺未遂を経て、4年にわたる裁判をやっと終えたところです。いまも日常生活を送ることすらやっとという状態ではないでしょうか。性暴力は被害者の人生を破壊します。どうにか少しでも安寧な日々を過ごしてほしいと願います。
また、被告が控訴するという噂もありますが、取り下げるか、またはせめて(裁判を続けること自体が、被害者にとっては非常につらいことです)もっと重い判決が下されてほしい、と思います。
加害者は同意だったと主張していますが、性暴力において被害者は、自分を守るためにフリーズせねばならなくなることが多い、ということがこちらの本で解説されています。
被害者女性のコメント
「お金じゃなくて、ちゃんと誠心誠意、謝罪がほしかったのですが、最後まで謝罪がなく、受け止めきれないていないです。
私は当時15歳で、何もわかりませんでした。裁判で男性がわざと父親のようにふるまっていたと知りましたが、良い人と悪い人の区別もつきませんでした。
もう二度とこんなことが起きないようにと思い、裁判を起こしました。子どもは何もわからないのですから、手を出してはダメだとわかってほしいです」
下記は、非常に気分が悪くなる文書なので、飛ばしていただいてもかまいません。特に性被害経験をお持ちの方は、お気をつけください。
Xでリークされた裁判関連文書




堕天作戦第1話からわかる「ロリコン=NG」
これは、加害者の作品である『堕天作戦』第1話で、敵が少女を性的にいたぶったことを話し、それによって主人公が激昂して特殊な力を発揮する場面です。

「身を売り、魂を売り」
「幼体成熟(ネオテニー)は実際抱くとつまらんぞ」
このセリフで主人公がブチギレるのですから、この漫画の作者(加害者)は、ロリコンやペドフィリアを実行することは人倫にもとる、搾取である、魂を傷つける罪だと頭ではわかっているのです。
しかしそれでも、自分が実際に行ったことについては「真剣交際だった」「同意の上だった」とのたまい、悪いとは思っていないと裁判で話しています。
性犯罪者は世間一般的な倫理観は理解はしているのですが、「俺だけはOK」「自分のやっていることは別だ」もしくは「自分だけは破っても許されるのだ」と考えています。
編集者として、書き手として、理解できない
筆者はこの事件を、社会的に重大な問題だと思っており、可能ならどこかの媒体に書きたかったのですが、出版社の不祥事であるために、すぐに掲載してもらえるところが見つからず、自分のnoteにまとめました。
わたしは40代、2児の母、編集者ですが、エッセイストでもあり、書き手として出版社と仕事をする(編集者についてもらう)こともあります。マンガ編集は専門外ですが、編集する側・される側のどちらの立場も少しはわかってはいるつもりです。
編集者と書き手は仕事上のパートナーですが、なぜこの件で、こんなにも編集者が、未成年への性犯罪を犯した漫画家をかばったのか、まったく理解できません。
力の強いほうの味方をしていないか?
2024年の『セクシー田中さん』のドラマ化では、小学館の編集部が、テレビ局に対しても女性漫画家の先生に対しても、それぞれその場しのぎの対応を続けていたことが、悲劇の原因のひとつに見えました。結果的に編集部は、個人の漫画家よりも、力の強いテレビ局の味方をすることになったのではないか、と思います。
今回の件では、相手が無名の、若い女性ということで、とても立場が弱かったはずです。また、性被害を受けてPTSDを発症し、心身ともに弱っていて、加害者からの連絡に応答をすることすら困難だったでしょう。
その上で、男性編集者が示談に介入してきて「口外禁止」などの条件を出したのは、どれほどの恐怖だっただろうか、と想像します。
編集者は倫理などかまわずに、自分にとって利益をもたらす、力のある男性漫画家の味方をしたということでしょう。
小学館は会社として対応すべき
メディアに関わる人には、権力勾配を優先させずに職業倫理を大切にしてほしい、と思います。またそれ以前に、人として、性加害はNG、とりわけ子どもへのそれは絶対にダメなもの、という意識を徹底してほしいと願います。それをふまえた上での、小学館の社としてのプレスリリースが待たれます。
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