【想いがブルーになったあの日。1通のメッセージから始まった青の奇跡】第1章
Prologue|願いはもう、心の中に灯ってしまった
ペンライトのブルーの光の海。
その色に染まった会場を見た時、ふと世界の空気が変わった。
ただの光じゃなくて、胸の奥をそっと震わせる色。
あまりにも綺麗で、息をするのを忘れてしまった。
ライブ会場の暗闇の中で揃ったその青い光
そして、その海のような光の中で歌っていた彼は、
まるでそこだけに光が集まってるみたいで、
見ているだけで心が熱くなるほど輝いていた。
その瞬間からだった。
胸がなんだか落ち着かなくなったのは。
そして、ある想いが芽生えた。
“あのブルーの光を、ライトアップという形で見てみたい。”
そんなこと、できるはずない。
私はただの一ファンで、企画力も、特別な影響力があるわけでもない。
それでも――
願いはもう、心の中に灯ってしまっていた。
想像しただけで、どうしようもなく心がワクワクしてしまった。
そしてこの小さな願いが、やがて本当に光となって、星の無い夜も照らす愛になるなんて
――
あの日の私はまだ、知らなかったんだ。
|小さな勇気の種
彼の誕生日が近づき、何か自分に出来る事はないかと考え始めていた。
そんな時にXで知った、推しのお誕生日にタワーをライトアップさせるという話。
こんな事が出来るんだ!!
でも、どうやって??
そこから色々と調べ始めた。
北海道在住の私は、やはり自分の地域でライトアップをやりたいと考えた。
あの日から、私の日常は少しずつ変わり始めた。
何か大きなことをしたいわけじゃない。
ただ、毎日の生きる活力や日々の彩り、元気や勇気をもらっている彼に、
その感謝の気持ちを、お返ししたい…。
でも、その気持ちの裏側には、
そっと隠してる本音もあった。
――私は、変わりたい。
――このままじゃ終われない。
そう思ってるのに、いつも勇気が足りない。
やりたいことがあるのに、「やっぱ無理」と自分で蓋をしてしまう癖がある。
心のどこかで小さな声が聞こえる。
――ほんとは、やりたいんだよね?
でも現実は…。
私はただのいちファンで、普通の生活をしているどこにでもいる主婦。
そもそも企画なんて、したこともない。
「いやいや、私にできるわけないよ…。」
そう独り言を言いながら笑う。
でも、その笑いはどこか苦しくて、自分に言い聞かせているみたいだった。
そんなある日。ふと検索窓に指が動いた。
『ライトアップ 申し込み方法』
『イベント 個人 企画』
『記念日 ライトアップ 申請』
調べたところで、答えが出る自信はなかった。
それでも検索してしまったのは――
心の中で、何かが動き始めていたからだ。
画面をスクロールしながら、
ふと指が止まった。
そこには、「札幌テレビ塔 ライトアップ受付」の文字。
息が止まる。
「……できるの?」
「いや、できないよね……?」
でも、そのページを閉じられなかった。
胸の奥で、またあの小さな声が響く。
――やってみてもいいんじゃない?
その瞬間…私はゆっくり深呼吸して、
震える指で、小さな「問い合わせフォーム」のボタンを押した。
問い合わせの所に電話番号が載っていた。
電話の呼び出し音が鳴ったあと、落ち着いた声が受話口から聞こえた。
「はい、札幌テレビ塔、企画担当の△△です」
緊張で喉が渇く…、深呼吸してから話し始めた。
「あの…突然すみません。推しの誕生日に、ライトアップができたら…って思ってお電話しました」
言葉にした瞬間、自分の願いが本当の形になったみたいで、鼓動が少し速くなる。
それでもやりたい内容などを自分の言葉で伝えてみた。
相手は少し黙ったあと、柔らかく息を吐くように話し始めた。
「そういう問い合わせ、たまにあるんですよ。今も個人的にライトアップをやっている方はいます。ただ…芸能人の企画として大々的にとなると、色々規制があり難しいです」
そこまで言われて、胸の奥がキュッと縮まる。
個人的にやることなら出来る。けど、それじゃ彼には届かない…
――やっぱり無理なのかな。
そう思った瞬間、担当の人の声が少しだけ明るくなった。
「でも、個人的には…テレビ塔が盛り上がるなら賛成です」
え?今、賛成って言った?
言葉が耳に届くより先に、心が反応して跳ねた。
「これは提案なんですが…もしできるなら、プレゼンという形でメールに企画書を送ってみてくれますか。内容がしっかりしてれば、こちらから上に話を通します」
電話の向こうの人が、扉をひとつ開けてくれた気がした。
それはまだ、ほんの少し。指一本分の隙間みたいな希望。
でも、確かにそこには光があった。
「……やってみます。送ります!!」
スマホを置いた瞬間、私は気付いた。
もう後には戻れない。いや――戻りたくない。
この瞬間から、私の挑戦が始まったんだ。
電話を切ったあと、しばらく固まった。
嬉しいのか緊張なのか、自分でも整理つかない感情が胸の中でぐるぐるしてる。
ただひとつだけ分かってたことは――
「もう後戻りできないとこまで来た…」
だって次は、企画の文章をメールで送るんだよ。
私が?企画を?
いやいやいや、人生でそんな場面来ると思ってなかった。
スマホを開き、新規メール画面を開く。
白い画面の上でカーソルだけが点滅してる。
最初の一文すら出てこなかった。
「この度…」
「突然のご連絡失礼します…」
「ライトアップ企画について…」
打っては消し、消してはまた入力して、ため息。
何度やっても正解がわからなかった。
でも、その繰り返しの中でふと気づいた。
――私はただ企画を説明したいんじゃない。
これはお願いのメールじゃなくて、
感謝の気持ちを届ける文章なんだ。
札幌でライブをしてくれたこと。
10年間ステージに立ち続けてくれたこと。
私たちの毎日の元気や救いになってくれたこと。
そのすべてが胸に浮かんだら、言葉が変わり始めた。
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初めまして。昨日電話した者です。
この度はお願いがありメール致しました。
◯月〇日に〇〇(グループ名)の〇〇くんの23歳のお誕生日があり、また事務所に入って今年で10年という節目でもあります。
日頃から私達ファンにたくさんの笑顔と元気を届けてくれる〇〇くんの記念日を皆でお祝いしたいと考えまして、同じ想いのたくさんの方達が集まり、テレビ塔のイルミネーションを担当カラーであるブルーにして頂きたいと思い、メールさせて頂きました。
そこで、ライトアップ出来るタワーを探したところ、テレビ塔様のホームページのライトアップの企画を見つけました。
アーティストさんのお祝いは受け付けてないと電話の際にお聞きしましたし、他のタワーでも点灯出来る所は限られていました。それでも、遠方にいるファンの皆様と会えない中、どうか誕生日をお祝いしたい!!と言う気持ちが強くありまして、そんなファンの想いを叶えて頂けないでしょうか。
〇〇(グループ)は、去年初めて真駒内アイスアリーナでコンサートを開催しまして、3日で55000人のファンを動員しました。札幌への経済効果も凄く、メンバーも札幌がとても気に入ったと話しており、〇〇くんも札幌をホームにしたいとコンサートで話してた位でした。
そして、今年も本当ならば9月に札幌でコンサートをする予定だったのですが、コロナの為やむを得ず中止になりました。メンバーもファンもとても悲しみましたが、今年は仕方がないと思います。
もしライブがあったのなら、〇〇くんの為に会場をブルーのペンライトで埋め尽くしたかったです。
そんな落ち込んでるファンを元気にしたいのと、ファンと〇〇くんと彼らのグループを一緒に盛り上げたい!!応援したい!!と思いまして、X(Twitter)で拡散させて盛大にお祝いしたいと思い、札幌のテレビ塔と言えば〇〇くんのお誕生日をお祝いした場所としてファンが集まる素敵な場所にしたいと考えました。
今年はコロナウイルスで日本を始め、世界が大変な状況が続いており、エンタメ業界もかなり厳しい状況だと見聞きしました。
微力ながらも私達ファンが、〇〇くんを始めメンバーに少しでも恩返し出来たらいいなと思っております。
先月メンバーである〇〇くんの誕生日がありまして、その日は福岡タワーが担当カラーのパープルになり、X(Twitter)でも大きな反響がありました!!
〇〇くんの誕生日にぜひライトアップをご検討して欲しいです!!
こちらが無理でしたら、今回の皆で考えた企画は無くなります。
私は北海道〇〇市に住んでますが、毎年札幌に遊びに行ってまして、テレビ塔からの景色も大好きです。そして全国のファンの方々にもその素晴らしさを伝えたいです。
どうぞよろしくお願い致します!!
〇〇、ファン一同より
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気がついたら、胸の奥がぎゅっとなって、目の奥が熱くなる。
文章を友達に送りながら相談しまくった。
「これ、想いちゃんと伝わる?」
「重いかな?」
「送って変な人だと思われない?」
でも返ってくる返信は確信めいたものだった。
「cocoちゃんの想い、絶対伝わるよ。」
その言葉に背中を押されて、深呼吸して、親指で画面の右上をタップした。
送信。
その瞬間、世界が少しだけ…動いた。
小さなタップ音が、未来の扉をノックしたみたいに響いたんだ。
