龍と星のあいだで 第二章 小さな合図
あれから、何度もこの場所に来ている。
わたしは、少しずつ変わり始めていた。
風が吹くタイミング。
光が差し込む場所。
なぜか立ち止まりたくなる木の前。
森の中には、小さな合図が散りばめられている。
何かを感じたかったのかもしれない。
そこに意味を見つけたかっただけかもしれない。
それでも、よかった。
こじつけでもいい。意味を見つける。
わたしが今ここにいる理由を、見つける。
そうすると、不思議と自分と向き合える。
今の自分の状態が、少し客観的に見えてくる。
下を向いていたわたしは、もういない。
前を向き、自分を探している。
今日から。
ここから。
再出発。
何度だって、リセットしていい。
そう思えた。
⸻
ここは、古代より信仰の聖地。
百八十八柱の神様が祀られている。
祈りが、静かに、この場所に息づいている。
参道を歩けば、神々の気配を確かに感じる。
祈ること。
ただ、手を合わせ、感謝すること。
それが本来の、自然な姿なのだと、
わたしはどこかで知っていた気がする。
強く光るものではなく、
とても静かな、あるべき姿。
⸻
目の前を、はらりと落ち葉が舞う。
そこに、光が差した。
一瞬、映像のように浮かび上がる。
小さな合図。
「わたしは、ここにいるよ。」
七色のトカゲが、
まるで見てほしそうに、ふいに現れる。
「見つけて。」
わたしは、小さな合図を見逃さないように、
五感をひらく。
鳥のさえずりも、
いつもとどこか違って聞こえる。
谷間を流れる空気は、
川のように、なめらかに満ちている。
ここは、龍の通り道。
龍がいる。
この山は、龍に守られている。
その存在は、生きているものすべてを、
静かに見守っている。
眠るように穏やかで、
ときどき風となって木々を揺らす、やさしい龍。
わたしには、龍は見えない。
けれど――
近すぎず、遠すぎず。
ただ「いる」と感じられる距離に、
小さな合図がある。
風が、わたしを包む。
ありがとうございます。
森は、やさしい。
木々が、静かに揺れる。
わたしはまた、
道に迷うかもしれない。
立ち止まってしまう日も、あるかもしれない。
それでも――
何度だって、ここから始めればいい。
