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7月1日になると、石川県では「氷室まんじゅう」を食べる

県外の人にこの話をすると、たいてい聞かれます。

「氷室まんじゅうって何?」

石川県で育った私にとっては、7月1日に氷室まんじゅうを食べることは、ごく当たり前の夏の始まりでした。

子どもの頃、この時期になると祖父母や両親が決まって氷室まんじゅうを買ってきます。

「今日は氷室まんじゅうを食べる日やからね。」

そう言われれば、「そういうものなんだ」と何の疑問もなく口に運んでいました。

由来なんて知りません。

ただ、7月1日には必ず食べるもの。

それが私にとっての氷室まんじゅうでした。

大人になって知った「氷室」の意味


大人になってから、その由来を知りました。

この風習は「氷室開き」に由来しています。

昔は冷蔵庫などなかった時代。冬の間に積もった雪や氷を「氷室」と呼ばれる貯蔵庫に保存し、夏まで大切に守っていました。

加賀藩では旧暦6月1日に、その貴重な氷を江戸の将軍家へ献上していたそうです。

夏まで残った氷は、とても縁起の良いもの。

庶民はその氷の代わりにおまんじゅうを食べ、無病息災を願うようになったと言われています。

だから今でも石川県では、7月1日になると氷室まんじゅうを食べる習慣が受け継がれているのです。


夏の訪れを知らせるニュース


毎年この時期になると、石川県のテレビでは「氷室開き」のニュースが流れます。

金沢市湯涌にある氷室小屋から雪氷が取り出される映像を見ると、「ああ、今年も夏が来るな」と感じます。

子どもの頃は何気なく見ていたニュースですが、大人になった今では、石川県らしい季節の風物詩だと思うようになりました。


家族にも、それぞれの「推し」がある


氷室まんじゅうには、一般的なおまんじゅうだけではなく、お酒の香りがほんのり漂う「酒饅(さかまん)」と呼ばれるものもあります。

家族の中でも好みが分かれていて、普通のあんこが好きな人もいれば、「酒饅じゃないと物足りない」という人もいました。

おばあちゃん子だった私は、子どもの頃から祖父母と一緒に酒饅を好んで食べていた記憶があります。

成長して、洋菓子のほうがおしゃれに思える年頃になると「たまにはケーキやシュークリームがいいのになぁ……」
なんて口にしたこともありました。

そんな私に祖母は決まってこう言います。

「無病息災なんやから、絶対に食べんなんよ」

あの頃は少し大げさだと思っていたけれど、今ならわかります。

祖母にとって氷室まんじゅうは、おやつではなく、一年の健康を願う大切な縁起物だったのです。


金沢は、お菓子処でもある


石川県、とりわけ金沢は「お菓子処」としても知られています。

加賀藩が茶の湯文化を大切にしてきたこともあり、和菓子づくりの技術も磨かれ、今でも多くの老舗和菓子店が暖簾を守っています。

7月が近づくと、それぞれのお店が自慢の氷室まんじゅうを店頭に並べます。

赤、白、緑のおまんじゅうがずらりと並ぶ光景を見ると、「今年もこの季節が来たな」と感じずにはいられません。


食べ比べも、この季節の楽しみ


最近ではスーパーでも買えるようになり、手軽に楽しめるようになりました。

便利になった反面、「今年はどこの和菓子屋さんで買おうかしら」という特別感が少し薄れてしまったような気もします。

それでも毎年、数種類の氷室まんじゅうを食べ比べる楽しみは変わりません。

皮のやわらかさ。

あんこの甘さ。

大きさ。

そして酒饅かどうか。

同じ「氷室まんじゅう」でも、お店ごとに個性があって、それが面白いのです。


やっぱり「村上」が好き


そんな食べ比べの中でも、私が毎年ご贔屓にしていたお店があります。

金沢の老舗和菓子店「村上」です。

今年は久しぶりに村上の氷室まんじゅうをいただくことができました。

包みを開けた瞬間から伝わる、しっとりやわらかな皮。

甘さを抑えた上品なあんこ。

派手さはないのに、「やっぱりこれが好きだな」と思わせてくれる安心感があります。

そして今年は、初めて白みそ餡もいただきました。

ほんのり感じる塩気と、やさしい甘さ。

「うわぁ、この餡おいしい」と、思わず心の声が漏れてしまいます。

毎年食べている氷室まんじゅうでも、新しい発見があるものですね。

「和菓子」で受け継がれる伝統文化


子どもの頃は、どうして食べるのかなんて考えたこともありませんでした。

7月1日になれば、家族が買ってきて、みんなで食べる。

ただ、それだけでした。

でも大人になって由来を知り、祖父母や両親が毎年欠かさず用意してくれていた理由が、ようやくわかった気がします。

伝統というのは、歴史の本を読んで受け継がれるものだけではないようです。

「今日は氷室まんじゅうを食べる日やよ」

「無病息災なんやから、食べまっし(食べなさい)

そんな家族の何気ない一言の中で、自然と受け継がれていくものなのかもしれません。

今年も氷室まんじゅうを食べて、夏が始まりました。


石川県には、お正月の「福梅」や「辻占」など、季節ごとに親しまれている和菓子があります。

またいつか、この土地ならではの「おいしい文化」についても書いてみたいと思います。

あなたの地元にも、「これを食べると季節が来たと感じる」という食べものはありますか?
よかったら教えてください。


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