「実務家教員」になるために ─ PMを実務と研究で極める
1. はじめに ― 実務家教員というキャリアへの関心
私は、将来的に「実務家教員」として大学で働きたいと考えています。
大学教育ひいては研究のフィールドに、現場の実務知をどう還元できるか、そして、ミライに向けて「現場での課題と解決手法」をどう残して伝えられるか。
その問いが、いまのキャリアを歩む上での軸になっています。
「実務家教員」とは、単に「経験がある人」ではありません。
実務で得た経験を、教育や研究の文脈で再構成できる人、つまり「現場」と「理論」の橋渡しができる存在だと私は理解しています。
私はSIerでデータエンジニアとしてPMを将来に見据えながら働く中で、この“橋渡し”という考えに強く惹かれていきました。
2. 現職で得る「プロジェクトを動かす力」
私はデータ分析基盤の構築を専門とするSIerで、データエンジニアとして顧客のビジネス課題をデータ基盤やBI導入という形に落とし込み、分析・可視化までを一貫して支援しています。
現在は、プロジェクトを通じてPL・PMである上司の元でさまざまな技術やPJ管理方法を学ばせて頂いています。
上司を見ていて思うことは、当たり前のことではありますがPMは技術だけでなく、調整力・要件定義・進捗管理など、多面的なスキルが求められます。
特に難易度が未知数という意味で印象的なことは、「顧客の“本当に実現したいこと”を引き出す」要求定義のプロセスです。
私はこの経験の中で、次第に「プロジェクトマネジメント(PM)」という行為そのものに学問的な関心を持つようになりました。
単なるPJ進行管理ではなく、「人・技術・組織の意思」をどう束ね、要求に沿った成果に導くのか、そして、どうしてもPMのスキルが「属人化」している現状を見ていた際に、それは現場を超えて、研究としても掘り下げる価値のあるテーマだと感じました。
3. 放送大学で「学問としてのPM」を見つめ直す
この「プロジェクトマネジメント(PM)」を学問として掘り下げる際にどのような道があるのか考えました。
まず、私は文系(経済学部)出身ということもあり、いきなりこのテーマに関して研究をしようにも無理があります。
そこで、学部レベルから情報工学分野を学び直し、研究力の基礎を身につけるために、放送大学の情報コースに3年次編入し、要求工学を専門とされる中谷 多哉子先生のもとで研究する道を現在考えています。
放送大学で学ぶ目的は、「実務で得られるPMの技術を理論として再整理すること」と「PMというテーマの研究の基礎を学び、実務に繋げる」という、実務と研究の往復による確かなる力の習得にあります。
要求工学という分野は、システム開発において「何を作るべきか」を定義する学問であり、曖昧な要求を分析し、関係者の合意形成を支える方法論を扱うため、まさにこの実務と研究の橋渡しに近いと思っています。
PMでよく取り上げられる課題である「要件のズレ」「仕様の変動」「意思決定の難しさ」は、まさにこの分野の中心的テーマであり、卒業研究はまだ具体的に考えられていませんが、このあたりの問題について理論的にアプローチすることを目指したいと漠然と思っています。
4. JAISTで「技術経営」としてのPMを探究する
放送大学でPMの基礎理論を固めた後、次のステップとして目指しているのが北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の社会人コースです。
その中でも特に、技術経営(MOT)プログラムでの研究に強い関心を持っています。
JAISTのMOTは調べた限りだと、理論研究に重きを置いていることが特徴的だと感じています。
放送大学を修了した後のことなのでまだリサーチ不足ですが、ここで研究を進めることで、PMを「学問として研究し語れる実務家」としての基盤を確立したいと考えています。
5. 実務と研究の往復から見える「教育者としてのPM」
実務家教員を目指す私にとって最も大切なことは、「現場で得た知見を研究で言語化し、教育で還元し実務に活かす」という循環だと考えています。
プロジェクトマネジメントという領域は、特に現場色が強い学問と思います。
たとえば、進捗管理やリスクマネジメントといった実践的なスキルは多く語られて時にはブログとしてまとまっているものの、その背後にある「なぜその意思決定がうまくいったのか」「なぜチームが機能しなかったのか」という問いを理論的に掘り下げる試みは、まだ十分とは言えないと思っています。
(私がこの世界をまだ知らないだけの可能性もありますが。。。)
だからこそ、現場での経験を単なるノウハウとして終わらせず、再現可能な知として体系化することが、今後のPM教育には求められていると感じています。
実務家教員は、まさにその橋渡しを担える立場です。
そして教育とは、単に知識を伝えることではなく、学びを通じて自分で考え抜く力を育てること(主体性の養成)だと考えています。
学生が実際のプロジェクトを想定し、自ら課題を設定し、失敗から学ぶような学習環境をつくりたい。そのためには、私自身が実務を通じて試行錯誤し、研究によって整理し直す「循環する学び手」であり続ける必要があります。
最終的に目指すのは、PMを「現場の技術」から「教育・研究の知」へと昇華させること。現場のリアリティを保ちながらも、理論として語れるPMを探究し、次の世代に伝えていく。
私はその往復の中にこそ、「実務家教員」としての使命があると感じています。
6. おわりに ― 実務家教員として描く未来
プロジェクトマネジメントという領域は、まだ研究の余地が多く残されていと感じているというお話をしてきました。
実務を通じて見えてくる課題を研究として掘り下げ、その知を教育という形で社会に還元していくことが、自分のキャリアを「働くこと」から「教えること」へと拡張していく道だと感じています。
もちろん、この道のりは決して短くありません。
放送大学で学び直すことも、JAISTで研究を深めることも、全てはこの“橋渡し”をより確かなものにするための挑戦です。
焦らず、しかし着実に、実務と研究の双方を積み重ねながら、「実務と研究を通じて社会に価値を生み出す実務家」へと成長していきたいと思います。
そしていつか、システム導入をされる側・する側の両方が喜び合えるような技術や知識を、私の経験と研究と言葉で届けるために、今日も現場で悩み、考え、学び続けたいと思います。
それこそが、私にとっての“実務家教員としての第一歩”だと信じています。
2025/11/3
