第3話:カウボーイ、蔵の中で「本物の色」に触れる。
「難しいと思うけど、一緒にやってみようか」
豪州のブッシュで、死と隣り合わせの野生を生きていた俺 。
そんな俺が、自宅けら比較的近いにエリアにある古びた蔵の扉を叩いたのは、ある「偶然」からだった。
きっかけは、カヤックの趣味。
知人をもてなす傍ら、地元の伝統に触れようと訪れた藍染の体験場。
そこで出会ったのが、オーナーのIさんと、太陽のような笑顔で布を染めるおばあちゃんたちだった。
当時、俺は自分の表現を求めて模索していた。
「この藍染で、俺の想いを染められないか?」
無謀な相談にも、Iさんは嫌な顔ひとつせず、面白がって一緒に手を動かしてくれた。
プラスチックの藍染は、失敗に終わった。
結果は、うっすらと色がついた程度の失敗だが、その失敗以上に俺の心を震わせたものがあった。
それは、蔵の中に流れる、なんとも居心地の良い、温かな「時間」と「笑い」だった。

「この素晴らしい文化を、次世代に繋げたい」
型紙の穴あけ、藍の維持。
おばあちゃんたちの横で、俺は伝統の基礎を教わった。

だが、商業施設でこの色を広めようとした時、大きな壁にぶつかった。
「藍は色がつきすぎる。商業施設では難しいかもしれないよ」
その時、おばあちゃんから投げかけられた一言が、俺の運命を変えた。
「身近な草木染めやたたき染めならもっと多くの人に届くかもね」
江戸は「藍」、令和は「コーヒー」
何日も考え抜いた。
俺の生活の一部で、大好きなもの。カヤック、アウトドア、そして毎日3杯から5杯は飲む、相棒のようなコーヒー。
ふと、過去に見たコーヒー染めを思い出した。どれも色が薄く、どこか物足りない。
「……これだ。俺なら、もっと深く、もっと魂に響くコーヒー色を出せる」
日本は世界第4位のコーヒー消費大国。
大人の、お洒落な、それでいて日常に寄り添うこの黒い液体で、新しい文化を作れる。
江戸時代が藍染の文化だったように、令和を「コーヒー染め」の文化にする。
そして、この色を世界へ届ける。
野生の「カミカゼ」が、おばあちゃんたちの温もりに触れて見つけた、俺にしか歩めない新しい道。
【キーワード】
• 「カヤック、アウトドア、そしてコーヒー。俺の『好き』がすべて一つの点に繋がった。」
• 「藍染の失敗が教えてくれたこと。それは、自分を救うのはいつも『日常』にあるということだ。」
• 「おばあちゃん、俺やるよ。令和をコーヒーの色で染め変えてみせる。」
次回、いよいよ始まった「コーヒー染め研究」の泥沼と、一滴の黒に込めた執念の話をしよう。
