あの子が頭から離れない
長いこと使っているボールペンの調子がよくない。文字を書くうちに先の部分(口金)がゆるむようになってきた。
出先でメモを取ったり、ノートを書いたりするのに愛用しているのはモンブランのマイスターシュテュック。モーツァルトという小型のものだ。小さなバッグにもぽいと忍ばせておけるので重宝している。

という、長い長ーい名前でした。保証書を見ないと言えません。
ほかにはパイロットの「カヴァリエ」シリーズのボールペンをもう10年ほど使っている。

反対側にネーム入り。
スリムで持ちやすく、なめらかな書き心地。仕事部屋に置いて、なんでもこれで記録している。

あまりにも気に入ったので、リニューアルのときに色違いも購入した。くせのない柔らかなホワイトのボールペン。

これもネームを入れてもらいました。
シャープペンシルも揃えていて、私のデスクにあるペンポーチの中はカヴァリエだらけだ。買いだめした替芯もあと4本あると記憶している。気に入るとほんとうにしつこい。
口金がゆるむのはピンクのカヴァリエ。いちばん出番の多いものなのでどうにか調整できないかと考えつつも、ほかのメーカーのボールペンをいろいろ見てまわってみた。もう一本、自分にとっての定番品があってもいいと思ったのだ。
そこで、すばらしく好みのボールペンに出合ってしまった。
カランダッシュ(Caran d'Ache)のエクリドールというシリーズの日本限定品、ビクトリアン。シルバーカラーのボディにロマンティックな彫刻が施されている。
ななな、なにこれ、美しい……! 初見で言葉を失った。装飾性の高さは、スイス最大の高級筆記具メーカーならでは。好みは分かれるだろうけれど、そんじょそこらのボールペンではないという意見には誰もが同意してくれるに違いない。
以来、ほんのりなまめかしさも感じる優美なルックスが頭から離れない。
しかし、3万9600円。軽い気持ちで買える代物ではない。自分へのご褒美にしようか、なんて思案中。毎年、暮れには自分にちょっとしたプレゼントを買う。今年はこれにするかもしれない。いや、私には分不相応だから、買わないかもしれない。
久しぶりにモノに恋をしている。恋のほかに人生に花はないと坂口安吾が言っていた。その対象がモノでもいいよね、と都合よく解釈して、今日も公式サイトを眺めている。あの子を思う、その瞬間が幸せなのだ。
