難敵にふたたび立ち向かう日
秋がはじまる頃、かっちりした装いで人と会うことになっている。「ジャケット必須、でもスーツは要りませんよ」という、ちょっと難しいご指示をいただいた。
コロナ禍に突入してからというもの、堅苦しい装いに身を包む機会がめっきり減った。オンラインでの打ち合わせや会議でジャケットが必要なときは、会社員時代に使っていたスーツの上着をはおっていた。キャメルカラーのシングルテーラード。
しかし、このジャケットがなんだかきついのだ。どこがどうサイズが合わないのかと聞かれると答えにくいのだけれど、肩や背中の上のほうが窮屈な感じがする。後ろから見ると変なしわが寄っているんじゃないだろうか。
ほかのものもやや小さく感じられたり、ノーカラーでかっちり感が少なかったりする。いい機会だから、テーラードのものを一着、新調しようと思っている。
会社員時代、私にとってジャケットはどうにも扱いにくい相手だった。小柄なうえに上半身の肉づきが薄い体型なので、なかなかサイズの合うものがない。肩幅と号数が合っていても、ものによってはデコルテのあたりがパカパカと浮く。
それに、顔立ちの問題なのか、雰囲気のせいなのか、テーラードジャケットを着るととっつきにくい印象を与えるらしい。最近では、日常生活の7割ほどを眼鏡とともに過ごしているので、その傾向は強まっていそうだ。
このところ、百貨店やアパレルショップに足を運ぶ機会があると、ジャケットを見せてもらうようにしている。が、なかなか「これ!」というものに出会えない。
テーラードのなかでもダブルのものを薦められることがあるのだけれど、これはこれで難しくて、全然似合わない。なんだろう、よく言われる「洋服に着られている感じ」がものすごく、する。
黒やネイビーも似合わない。ベーシックとされる色なのに、私が着ると重い。そして、妹によるとこわそうに見えるとのこと。
ああー。なんだか嫌になってきた。会社員時代の難敵に、こんなところでまた悩まされるとは。手ごわいやつは人生のそこここに潜んでいるということですね、とつぶやく。
装いは第一印象を大きく左右するらしいので、マイルドでこぎれいで清潔感のあるものを心がけたいと思う。でも、今回はそこまでの道のりが長そうだ。帰りにカフェでお茶するのを楽しみに、ときどきジャケット探しの旅に出よう。
納得のいく着心地、見ばえのテーラードジャケットに出会えた日には、ぜひその感動を記事にしたい。
