娘たちの交渉力を見た日
娘たちに交渉力とやらが備わりつつあるようだ。
先日の午後。幼稚園から帰った双子の娘たち(6歳)がなにやら頭を寄せあって遊んでいた。長女の手もとには、派手に着飾ったお人形、もえちゃん。イヤリングもネックレスもつけてもらっている。
もえちゃんは長女のものだ。次女にはリカちゃんを買い与えてある。ふだんはそれぞれ自分のお人形で遊んでいる二人だけれど、次女は華やかな装いのもえちゃんが羨ましくなったらしい。長女に比べると甘えん坊な彼女は、わがままを押し通そうとするときがある。
次女「ねぇ、もえちゃん貸してよー」
長女「いやや、もえちゃんはわたしのお人形やもん」
次女「ちょっとだけやからぁー、貸してよー」
長女「いややってば。自分のリカちゃんがあるでしょ!」
次女「ちょっとだけ貸してよおぉー」
このタイミングで私が制止に入ろうかと悩んでいたところ、長女がなにか考えている様子である。
長女は口をぐぬぬぬと引き結び、駄々をこねる次女にどう対応しようかと思案している。本心はもえちゃんを貸したくないだろう。彼女の宝物の一つなのだから。かといって、食い下がる次女を放っておくのも嫌なようだ。口角がぎゅんと下がり、への字をつくっている。いわゆる「富士山の口」。かわいいので私は好きだ。
そして、長女は毅然と言い放った。
「貸してあげてもいいよ。明日の朝、返してくれるんやったら!」
おおお。条件をつけてきた。そうきたか。私はにやりと笑い、ドアの陰から見守った。
次女「いいの? 明日、返す!」
長女「絶対、返してよ! そのかわり、リカちゃん使わせてね」
次女「うん! いいよ! ありがとう!」
こうして、次女は思いどおり手に入れたもえちゃんの髪をとかして遊びはじめた。長女もまったく嫌がる様子はなく、リカちゃんの洋服を着せ替えている。
うーん、なんだかおもしろい。長女は騒ぐ次女に条件つきでもえちゃんを貸しだし、黙らせた。次女のわがままが通ってしまった形ではあるが、そこには長女の交渉が効いている。そして、喧嘩は回避された。
娘たちは私の知らないうちに、二人でうまくやっていく方法を模索しているようだ。同い年の姉妹が狭い空間で過ごしながら、どんなふうに成長していくのかと心配していたけれど、その半分くらいは杞憂だったのかもしれない。
性格的に我慢することの多い長女をフォローすることは忘れずにいたい。でも、彼女たちならではの関係性がつくられていくさまを見守っていきたいなあ、とも思う。
