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増幅する福のタネたち

私はたいして多くのものを持っていない。お金持ちでもないし、見目よくもないし、突出した才があるわけでもない。アラフォーも後期に差しかかかったので、若いとも言えない。けれど、最近、これでもほどほどに幸せだと感じられるようになった。

別に幸せを生み出すメソッドを実践しているとか、新しく宗教や思想を信仰し始めたわけじゃない。というより、私はなにかを強く信じこめるほうではないので「これ!」といった信条がない。

でも、一つだけ、もしかしたら精神衛生上とてもいいんじゃないかと思える習慣を持っている。

「はー、しあわせ」と一日一回はつぶやくことだ。

ちょっとした幸せを感じたらそうつぶやく。新しく買ったハーブティーがおいしかったら、仕事のあいまに「はー、しあわせ」。なぜかいまだに花盛りのカーネーションにお水をあげながら「むふふ、しあわせかも」。

もちろん、夜中に双子の娘たちが先に寝ている布団にすべりこんだときにもつぶやくことがある。友人たちともよく語りあうけれど、我が子の寝顔ほど愛おしいものはない。うちの娘たちは双子とはいえ、頬の香りが違う。それぞれに顔を近づけ、砂場のような、取りこみたての洗濯物のような香りを胸の奥深くまで吸いこんだところで「はー、しあわせーーー」。

意識して言葉にしているのではなく、つい口から出てしまうというのが正直なところ。それでも「しあわせ」とつぶやいてみることで自分に暗示がかかっているのかと思うくらい、その後しばらく満ち足りた気持ちでいられる。

「しあわせ」、その言葉がまた幸せを増産していくような感覚だ。案外、日常には福のタネみたいなものがたくさん転がっていて、楽しい心持ちでいるとそれが見つけやすいのかもしれない。

類は友を呼ぶとか、ホコリのあるところにはさらにホコリが集まってきて部屋が汚れていくとか、いろんな説があるけれど、幸福感は小さな幸せたちを集めてくれるような気がしている。

生きていると、思わずしぶーい顔をしてしまうような事態にも出くわすし、弱音を吐きたくなることもある。悲しいことだってたくさんある。それでも、「はー、しあわせ」と心が喜ぶ瞬間を見つける達人になりたいなあ、と思う。

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