【物語】ここは猫の街ミルミアシリーズ2-6〜星祭りと夜空上映会
ここは猫の街ミルミア。
二本足でのそのそのんびり歩き
気ままに暮らす猫たち。
年に一度の星祭りの夜。
子どもたちが集めた光が、
誰かの心の中の景色を、夜空に映し出す夜です。
まだ日が沈みきらない広場には、
もうたくさんの笑い声が集まっていました。
「星集めに参加する子猫達はこっちだぞー!」
魚屋のガルフが元気な声で叫びます。
洋装店の店主クロエが作った星祭り用のポンチョを配るお手伝いをしています。
星集め。
ミルミアの夏のお祭り【星祭り】の際行われるこどもたちのための遊び。
ミルミア近くに自生している草から作った特殊な液体をクロエの作ったポンチョにふきかけると、
楽しい気分になるたびにポンチョが輝きを増すというものです。
「うわー!綺麗!」
「かわいいー!」
「ママー、みてー!」
「いっぱい光集めるぞー!」
ポンチョを受け取った子猫達は
クルクル回ったり
ポンチョをひらひらさせたり
とても嬉しそう。
「クロエー!みんな喜んでてよかったね!」
「ミコが生地選び手伝ってくれたおかげでとてもいいものができたわ。ありがとう。」
ミコもポンチョを羽織ります。
「ふふーん♪」
「誰が1番光を集められるかな?」
「わったしが一番になりたーい!」
レオとルナも一緒です。
レオのお父さんが連れてきてくれました。
「さあ、ポンチョも着たし出店をまわろうか。楽しもう。」
「僕、まずはトトのパンが食べたいな。」
「いいね!いこー!」
「今年はどんなの並んでるのかな!」
パン屋「ヒゲのオーブン」の店主トトは
毎年星祭りのために
特別なパンを出店にだしています。
「こんばんは!レオのお父さん、ミコをありがとうございます。」
「こちらこそ!レオは一緒にまわれるのをとても楽しみにしてました。」
美味しいパン
きらめくお菓子
お花のランタン
星のおもちゃ
毛糸玉コロコロゲーム
様々な出店が軒を連ねて
楽しげな声であふれています。
あちこちできらめくポンチョが
銀河のようでした。
「そろそろいい頃合いでしょうか?」
「そうですね、合図を出しましょう」
ゆらぎの丘でそう話しているのは
図書館司書のコトハとあめじいちゃんことアルベール先生でした。
ヒュー…
ドーンッ!
大きな花火がひとつ、夜空を彩りました。
それが、夜空上映のはじまりの合図です。
「わあ…!」
広場のあちこちから声があがります。
そして、
「ゆらぎの丘へお集まりください」
やさしい呼びかけが、街にひびきました。
にぎやかな広場から、猫たちはゆっくりと丘へ向かいます。
笑い声も、足音も、だんだんと落ち着いていき――
いつのまにか、夜は少しだけ静かになっていました。
ゆらぎの丘。
風がやさしく吹いて、草がさわさわと揺れています。
丘の真ん中には、古い投影機。
「今年はどんなのだろう!楽しみ!」
「わくわくわくわくわくわく」
「いよいよだね」
ひそひそ声でミコとルナとレオ。
「では、始めましょう」
コトハがうなずき、
アルベール先生が、そっとスイッチに手をのせました。
カチリ。
チカチカ
キラキラ
子どもたちのポンチョが、いっせいに瞬きはじめます。
やわらかな光。
くすぐったいような光。
ころころと転がるような、小さな光。
その光が――
すう、と空へ伸びていきます。
糸のように細く、ゆらゆらと。
そして、ゆっくりと
投影機の中へ吸い込まれていきました。
丘の上は、しんと静まります。
風の音だけが、やさしく通りすぎていきます。
やがて、集まった光は
投影機からふわっと浮き上がり、
ひとつの塊となって
小さな星のように瞬き
上空へ放たれました。
迷うように
あっちへ、こっちへ
移動します。
くるくると、ためらうように動いて――
すう、と流れていきました。
「……え?」
ミコが小さく声をもらしました。
その光は、
ルナへ向かってきました。
ルナの体を、やさしく包みこみます。
そして
一度強く光を増すと
ルナから離れ、空へとのぼっていきます。
夜空に、ひらく光。
「わあー!」
歓声が上がります。
夜空一面に光が広がります。
まるで大きなスクリーンのよう。
最初は、少しだけにぎやかな色でした。
きらきら。
ゆらゆら。
ちかちか。
音が見えるような、
風が色になるような――
すこしだけ忙しい、でもきれいな世界。
やがて、光が文字をかたちづくりました。
はちみつちゃんとレモンちゃん
「私もこの本よんだよ!」
「このお話すきー!」
「いいおはなしだよね!」
子猫たちが口々に叫びます。
そう、これは本のタイトル。
子猫たちに大人気の本で、ルナも読んでとても気に入っていました。
次に光は、ゆっくりと形をつくりはじめました。
ころころ転がる、小さなレモンちゃん。
可愛い顔がついていますが、どこか悲しげ。
瓶に入ったはちみつちゃんは可愛くてニコニコしています。
「かわいい…」
だれかが、ひそっと言いました。
レモンちゃんと、はちみつちゃん。
ふたりは顔を見合わせて――
くすっ。
とろり。
じゅわっ。
ふたつの光が、重なります。
その瞬間。
光が、やさしく変わりました。
さっきまでのきらめきが、すうっと落ち着いて、
あたたかく、ほどけるような光になる。
丘の上の空気も、ふわりとやわらぎます。
空の中で、
レモンが言います。
「ぼく、このままでいいのかな」
はちみつが、にっこり。
「うん。そのままがいいよ」
「私たち全然違うからいいの。違うから合わさるととってもいいのよ。」
「同じじゃあ、レモネードは出来上がらないのよ。」
夜空はあたたかい光に満たされ、
やがて
おしまい
の文字。
「素敵だったね!」
「僕が想像していたよりレモンちゃん最初悲しそうな顔だったよ。」
「二人が合わさってレモネードになったシーン、すごく綺麗だったね!」
子猫たちは興奮した様子で口々に感想をあちこちでささやいています。
賛美の声であふれていました。
「とっても色鮮やかで綺麗だった!」
「楽しかったね!」
「僕が想像してたよりずっと鮮やかでびっくりしたよ!」
ミコとレオがルナに言いました。
ルナは少し照れくさそう。でもどこか嬉しそうに笑いました。
「さて、星祭りもこれでおしまいです。みなさんお土産を受け取ってお帰りくださいね。」
そう言うとアルベール先生は投影機のスイッチを押しました。
すると、ゆらぎの丘にいる猫たち全員に向かって
光がとんでいきます。
やがて、手の上に小さな金平糖のようなものが。
「使い方は枕元に置くだけですよ!同じものはもう作れませんから、大切に保管してくださいね!」
コトハ先生が叫んでいました。
その晩、猫たちは枕元にゆらぎの丘でもらったお土産を置いていました。
夢の中でもう一度あの上映会を見るために。
ここは猫の街。
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