光る海の演奏会〜ここは猫の街ミルミアシリーズ2-13
ここは猫の街ミルミア。
港はいつも沢山の荷物と、猫で賑わい
新しい風を運んできます。
二本足でのんびり歩き、
ぽかぽか陽気が気持ちいい。
海のさざなみの音が心地良く、
荷下ろしの掛け声がリズミカルで
気がつけば尻尾でリズムをとってしまいます。
「レオ!もういいぞ!手伝いありがとうな!」
「あい!それじゃあ僕ギターの練習してくるね!」
レオと呼ばれた子猫は
港で荷下ろしの仕事をしているお父さんをいつも手伝っています。
また、ミルミアでは毎日夜になるとなんとなく多くの猫が広場に集まって、演奏会をしているのですが、
レオも歌を歌って
ギターをひいて、
演奏会を楽しんでいます。
ただ、最近ギターを弾いても満足のいく演奏になりません。
レオが下手になったのではなく
もっと上手いギター奏者がいることに気がついたのです。
「あの旅猫、すごかったなあ」
思い出したのは2週間前の夜の演奏会。
飛び入り参加した旅猫は
今までに聞いたことのないギターの音色を奏でていました。
目が覚めるような、
繰り出される一音一音が
心を躍らせるような、
全身の細胞が沸き立つような、
そんな衝撃をうけました。
その日以来、レオは以前にも増してギターの練習に精を出していました。
ですが、中々想う通りの音色を響かせるのには程遠いようです。
港の近くの浜辺に
岩の洞窟があります。
天井はぽっかりあいていて、
穴ボコだらけの岩の壁がたくさんたっています。
レオのお気に入りの練習場所でした。
ジャジャジャン
ボロポロポロ…
夢中になってギターをかき鳴らしていました。
この音じゃない
何が違うんだろう
こうだろうか?この音はもう少し強く弾いてみようか…
ぐぅーん
ふっと顔を上げると
海面から顔だけ出して
不思議そうにこっちを見つめるカワゴンドウがいました。
「やあ、こんにちは!ぼく、ギター上手にひけるように練習してるんだよ。」
「…」
ちゃぷん
カワゴンドウは波間に消えていきました。
「…よし!もう少しがんばろ!」
ジャガジャカジャガジャカ…
タラリラタラリラ…
ッタンタッタタタ…
掻き鳴らすたびに
ギターの振動が身体に伝わり、
飛んでいった音が壁にぶつかり、
レオは自分自身も振動して楽器の一部になったような気分でした。
ああ、楽しいな
でもまだまだ…
気がつけば
空はもう茜色に染まっていました。
次の日も同じように
仕事の手伝いが終わった後は同じ場所で練習です。
ジャッジャジャー…
ジャッッッジャジャっ…
ッタンタッタタタ…
「どうしたら上手く弾けるのかなあ。」
少しの間、
ざーっざーっと寄せては返す波を見つめていました。
「ちょっと気分転換しよ!」
レオは好きな曲を気楽に弾いてみることにしました。
ズクズクズク…
ジャーーン ジャーーン ジャーンジャンッ
ジャジャジャーンジャーン
ジャジャジャーンッジャーンッ
ぐうーん
またカワゴンドウが海面から顔を出しています。
レオはカワゴンドウに気がつきましたが、そのまま弾き続けました。
レオのギターに合わせてカワゴンドウは首を上下に振り始めました。
あれ?昨日はすぐ帰ったのにな。
ジャジャッジャジヤーンッ
ジャッッッ…バーンっ
カワゴンドウが見事なジャンプをしました。
あはは!ぼくのギターに合わせて遊んでるんだ!
それなら…これならどうだ!
今度は優しく弾きました
ジャーン ジャーン ジャジャーン
今度は右へ、左へ。
波に揺られる海藻みたいに、ゆらり、ゆらりと泳ぎました。
いいね
次は波のリズムに合わせてみよう
ジャー ジャー ジャー ジャジャ
ジャー ッジャ ッジャ
カワゴンドウはリズムに合わせて何度もジャンプしました。
ジャー ジャー ジジャっ…
「ああ!正確に刻むの難しいなあ…」
ぐうーん
カワゴンドウは波間から顔を覗かせて、
レオをじっと見ました。
「楽しかったね!またあそぼー!」
茜色の空に
白い月が輝き始めていました。
レオは来る日も来る日も
同じように同じ場所で
ギターをかき鳴らしました。
カワゴンドウも毎日のようにきました。
こうやって弾くとこんな風に踊るんだ、
こんな動きをしたら面白そうだな、
どう弾いたらそうなるかな?
そっか、こう弾いたら…
ぐうーん
「またね!」
今日も空が茜色になるまで岩の洞窟にいました。
「レオ!最近全然遊んでない!何してるの!」
「わ、ミコ!」
「おうち行っても、ゆらぎの丘に行ってもどこにもいないから!」
ある朝、港で荷運びの手伝いをしているところへ
ミコとルナがやってきました。
「ギターの練習してたんだ、浜辺の方にある洞窟でね。」
「!そっか、どうりで最近レオの音変わったと思ってた。」
「そうだ、仕事が終わったら面白いもの見せてあげるよ!洞窟集合ね!」
「おっけー!」
仕事の手伝いが終わったレオは
ギターをかかえて洞窟へ急ぎました。
爽やかないい風がレオの頬を優しくなで、
波のリズムが心地いい日でした。
「あ!ノワール!こんにちは!」
「…ああ」
レオはここ数日のここでのことを話しました。
ここ最近ずっとここで練習してること、
カワゴンドウもギターの音色に合わせて踊ること…
「…そうか。」
「うん!今日もカワゴンドウくるとおもうんだ!」
「レオー!」
向こうからスカートの裾をヒラヒラさせて、
ミコとルナが走ってくるのが見えました。
「あ!ノワール!」
「…やあ」
「こんにはぁああああっ!!!!」
元気いっぱいのルナ、
手に何か持っています。
「ルナ、それなあに?」
「これは!カスタネットっっっ!」
ここの浜辺で稀に見つかるとても丈夫な貝殻でできています。
「…珍しいもの持ってたんだな。」
「そおー!パパが古道具屋で見つけてきたんだよー!」
そういうと、ルナはカスタネットでリズムを刻み始めました。
カタタッ カッカッカッ カタタッ
タタタタタタタタタタッ
それに合わせてレオもギターを震わせます。
ジャジャン ジャーンジャーンジャンッ
「いいね、じゃあ私は歌うー!ノワールも歌おっ!」
あーあーあー
おーうおーおー…
ぐぅーん
「あ!カワゴンドウ!」
波間から顔を出すと、
不思議そうに顔を傾けましたが、
すぐにみんなの演奏に溶け込んで
頭を上下にふりはじめました。
ミコがレオの方に目を向けると、
そうだよ!これが見せたかったものだよ、と
目で応えました。
ジャジャジャンッ
カタタッタッタッッタッタ
あーあーあー
おーぅおーおー
ザーザーザーッ
わあ!楽しい!
みんなの音が重なるのって
こんなに気持ちいいんだ!
ぐうーんぐぅーん
音が重なる
リズムが重なる
空気の震えが重なる
カワゴンドウも重なる
楽しくて楽しくて、
みんなで時間を忘れて演奏して遊んでいました。
時間を、忘れて。
気がつけば辺りはもう薄暗くなってきていました。
もう星がちらほら瞬き始め、
星の海が広がっていきました。
でも、今とても盛り上がっていて
みんな演奏をやめられません。
ジャジャジャッ
カッカッ
あーあー
ジャっバーンっ
あーあー
おーぅおー
カッッカカッ
ジャカジャンジャーンッ
「あれ!なんだろ!きれい!」
ルナが見たのは光。
青白い光、黄色い光、ピンクの光。
海面から光の玉が沢山でてきました。
「…演奏をとめるととまる」
ノワールにそう言われて、
叩くのを忘れていたカスタネットを叩き始めました。
カカカッカタタタタッ
あーあーぁー
ポロポロポロポロ
おーおーぅおー
ジャッッッ ジャッッッジャジャーン
ジャッバーンッ
海から出てきたたくさんの光の玉は
魚やクラゲの形になって
賑やかに舞い始めました。
音楽にのって。
ジャジャジジャッ…ジャーンッ!
パチパチパチッ
「!」
「トト!」「ママ!」「父さん!」
子猫たちの帰りが遅いことに心配したトト達は、
レオの父さんに聞いてこの浜辺までいつのまにか迎えにきていました。
でも、みんながあまりにも楽しそうに演奏していたので声をかけずにじっと聞いていたのでした。
「すごいね!とっても良かったよ!」
「これなんなんだろうね?初めて見た!」
「…すっごく楽しかったね!そしてすごい綺麗!
」
煌めく光を見つめながらミコが言いました。
さっきまでとは違い、
ただゆらゆらと光がただよっています。
色とりどりの光が海面にも反射してとても美しく、幻想的な風景をつくりだしていました。
ぐぅーっ
「…えへへ、お腹すいちゃった」
「みんな帰ろう、晩御飯にしよう!良かったらみんなで一緒にうちで食べよう!」
「わーい!!」
ここは猫の街。
今日もたくさんの音が重なって
猫達のしっぽは楽しそうに揺れています。
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