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「面白い漫画をつくる」という旗を掲げる場所──編集長・坂本裕次郎に聞く「COMIC ROOM BASE」を立ち上げた意義

2025年11月27日、コミックルームは「COMIC ROOM BASE」という漫画サイトを立ち上げた。

自社媒体を持つ意義や自身が編集長になった経緯、今後の展望などを編集長である坂本裕次郎に聞いた。

サイトオープンと同時に告知された「第一話漫画賞」への思いなど、作家経験を持つ同氏ならではの漫画への熱い気持ちが伝わるインタビューとなっている。



【プロフィール】
坂本裕次郎(さかもと・ゆうじろう)
「COMIC ROOM BASE」編集長。漫画家としての作品では、『レッドマスク』作画ディレクション、『シャドウニュート』脚本・演出、『カンピオーネ!』コミカライズ、『恋染紅葉』、『タカヤ -閃武学園激闘伝-』など。


「COMIC ROOM BASE」は面白い漫画の発信基地


──「COMIC ROOM BASE」のオープン、おめでとうございます! 企業が自社媒体を持つということは、旗を掲げることと同意義だと解釈しています。このnoteのヘッダーには「最高の漫画を作る会社」とも書いてありますね。

坂本:コミックルームは「面白い漫画を作る会社なんだ」という発信基地として、「COMIC ROOM BASE」をつくりました。手前味噌になりますが、コミックルームの作品は男性向け作品も女性向け作品も各ストアのランキング上位に食い込んでいます。

大手出版社の作品でもなければ、アニメ化しているわけでもありません。それなのにランキング上位に食い込めるのは、純粋に面白いから読者の支持を集めているのだろうと思っています。

──『週刊少年ジャンプ』の「友情・努力・勝利」のようなテーマは、「COMIC ROOM BASE」にもありますか?

坂本:繰り返しになりますが、自分たちのアイデンティティは「面白さ」です。ジャンルやターゲットは問いません。面白さにさえ徹底していればいいですし、それこそがコミックルームのカラーだと。逆に言えば、そこを妥協してしまうとコミックルームの作品とは言えません。絶対に手を抜かない、それがコミックルームです。

──コミックルームの考える「面白さ」に定義はありますか?

坂本:感情体験です。漫画にはいろいろな面白さがありますが、漫画を読んで心が揺さぶられる瞬間があってほしいのです。バトルの行く末にハラハラした、悪役キャラにムカついた、切ないドラマに悲しくなった、ラブコメでキュンキュンしたなど、どんな形でもいいです。

心の動き方にもさまざまあるでしょうけど、その感情の揺らぎこそが漫画という娯楽のコアな部分だと思っていますし、読者に「面白い」と感じてもらえる理由になると考えています。コミックルームが目指す漫画は、読者に感情体験を届けられるものです。


「第一話漫画賞」は漫画家の頃にやってほしかった賞


──ここからは、「COMIC ROOM BASE」の開設と同時に発表された「第一話漫画賞」について聞いていきたいと思います。いろいろな漫画賞があるなかで、どうして第一話を募集するという形式になったのでしょうか。

坂本:まず、多くの漫画家さんが置かれている現状についてお話しさせてください。「COMICROOM BASE」内にある「第一話漫画賞」の記事ページの漫画にも描いているのですが、原稿を描かないと原稿料がもらえないのです。当たり前の話といえば当たり前ですよね。

原稿を描くまでには企画が通り、ネームが編集会議を通り、初めてそこで「原稿を描いてください」となります。人によって連載開始に至るまでの期間はさまざまですが、2年・3年掛かるのはザラですし、5年掛かることもものすごくめずらしい話というわけではありません。少なくとも、1年で連載が決まれば早いほうだと言い切れます。

──石橋さんが小学館時代に「裏サンデー」を立ち上げた背景と通ずるものを感じずにはいられません。「裏サンデー」立ち上げ時の2012年のインタビューで、石橋さんは「現在の商業誌における『漫画家になるため』『連載作家になるため』の(中略)現在のシステムはデビューや連載に至るまでの作家のリスクが大きすぎると思う」という発言がありましたから。
その意志を石橋さんの会社で、漫画家としての経歴を持つ坂本さんが受け継ぐのは胸が熱くなる思いです。

坂本:業界全体の問題だとも言い切れない部分があります。出版社には、出版社の理屈があるからです。簡単にその現状を変えられるなら、もうとっくに変わっているはずだとも思います。

とは言え、漫画家さんが連載を立ち上げる時に無収入で数年間を過ごさなくてはいけないというのは、やっぱり理不尽だろうという思いがあります。なので、漫画家さんが選べる選択肢を一つ増やそうと考えました。


新人の頃にやってほしかった賞


──坂本さんによる同賞の告知漫画では、「自分が新人漫画家だった時にやって欲しかった漫画賞をやるべきでは…!?」と描いていましたね。

漫画家さんや、究極的に言えば新人だった頃の自分に対して、今の僕なら何ができるのだろうということを考えた結果でした。その答えの一つが「第一話漫画賞」です。

──締切は2026年の3月31日ということで、早速「届いた応募作を読んでいる」という坂本さんのXのポストも拝見しました。

坂本:締切は設けているのですが、受賞の枠が10人なので先着順です。期限内に10人決まってしまったら、そこで募集は止めます。

──この漫画賞を通じて、どんな出会いに期待していますか?

坂本:本当に面白い漫画を待っています、というメッセージに尽きます。「業界をひっくり返したいくらい、面白さには自信がある」という野心を持っている人は、ぜひ応募してきてください。面白ければジャンルは問いませんし、応募者の年齢も関係ありません。

──坂本さんのお話を聞いていると、面白さへの執着とも言えるものを感じます。

坂本:はい、コミックルームの人間は面白い漫画に異常なこだわりを持っています。テキトーに自分が描きたいものを描いて面白い漫画になっていることは、ほぼないと思います。

読者の反応を考え、漫画の技術を磨くなどの積み重ねが、突き抜けた面白さを持った漫画につながると考えます。そういう漫画を描く人たちと出会いたいです。全力でコミックルームがプッシュするので、ぜひうちに来てほしいです。


漫画界のエースよ、来たれ


──野暮な質問なのは承知の上ですが、コミックルームのみなさんがそこまで面白い漫画にこだわる理由って、どうしてなんでしょうか。坂本さん自身は、面白い漫画と出会う幸せってどんなところにあると思いますか?

坂本:あまり考えたことがなかったですけど、単に幸せですよね。今でも僕は漫画を描き続けているので、分析的に新作を読んだりすることもあるんですけど、じゃあ漫画を描かなくなったら読むのをやめるのかと言われたら、そんなことはないと思います。読みたいからです。好きだからとしか言いようがないですね。漫画を読むのが楽しいですし、幸せです。

そういう意味では、編集長の仕事が向いているかもと思う瞬間があって。編集長は、全部の作品に対して責了という最後の校正作業をしないといけないんです。編集長が見て問題ないか、ということですね。コミックルームはたくさんの作品をつくっているので、時間に追われている時に責了の作業をするのは大変なのですが、その作業を面倒くさいとか嫌だなと思うことは決してありません。

なぜなら、漫画を読んでいるからです。子どもたちの夢じゃないですか? 漫画を読んでお金をもらえるって。ある意味で、その夢を体現している仕事なんです。毎日面白い漫画を読める幸せが、今の僕にはあります。それは、僕が本当に漫画を好きだから、そう感じるんですよね。

──淡々とした語り口のなかに、漫画への確かな熱を感じます。この取材中、何度胸がグッとなったことか。では、最後の質問です。「COMIC ROOM BASE」の展望を教えてください。

坂本:「COMIC ROOM BASE」だからこそ連載できる作品があっていいと考えています。電子書籍のストアさんには、求められているものをお出ししないといけないという部分があります。特に最近では女性向け作品のほうが動きがあると言われていますが、男性向け作品はつくらなくていいのかと言われたら、そうではないと思うんです。

そんな時に、僕たちは「COMIC ROOM BASE」という媒体を持っているとそこに載せることができます。もちろん、初出が「COMIC ROOM BASE」で、人気が出た際に各ストアさんから「うちにもぜひ!」と言っていただけたら、理想的ですよね。

あとは、今どんな漫画が求められているのかを分析することも大切ですけど、そうじゃない文脈から生まれる漫画の面白さもあると思っていて。作家さんの感性ど直球、脳みそ剥き出し。そういう漫画をどこで届けるのかという時に、やっぱり「COMIC ROOM BASE」があると。読者に「どのストアさんのカラーとも違うかもしれないけれど、本気で面白いんだよ」と思う作品が出てきた時には、自社媒体が一番いい場所になってくるはずなんです。

──ありがとうございます。「COMIC ROOM BASE」を開設した意義が、しっかりと伝わってきました。

坂本:一つ伝えそびれていたことがあります。「COMIC ROOM BASE」のロゴがあるじゃないですか。仕上げこそデザイナーさんですが、デザインを考えたのは僕なんです。「COMIC ROOM BASE」のロゴってオレンジと黒でできていますが、オレンジのところだけを読むと「ACE」になるんです。

つまりは、「COMIC ROOM BASE」からコミックルームのエース、もっと言ってしまえば漫画業界全体を背負って立つようなエースがバンバン生まれてほしいと思って、考えたデザインです。

世間に広く作品を出したい人にとって、「COMIC ROOM BASE」が裾野の広い入り口となれば幸いです。


取材・文=株式会社編まれた糸をほどいて