見出し画像

【CTX150】Airbnb+17.4%。新規顧客を引き込む「ホテル連携」の正体とは?

【本日のサマリー】(2026年8月9日)

8月7日の米国市場で、Airbnb の株価が前日比17.43%高の178.07ドルと急騰し、時価総額は約18兆円に達しました。前日発表した第2四半期決算で、売上高と調整後の1株当たり利益がともに市場予想を上回り、通期の業績見通しを引き上げたことが上昇の背景とみられます。
今期、同社が注力したのは「民泊(住宅)」以外の商品ラインナップを増やすことでした。なかでもホテルの取り扱いを強化した結果、ホテル経由で入った新規顧客が、本業である民泊の予約にも回っています。
商品の幅を広げるという判断は、単に売上を足すことではなく、新規顧客をどこから連れてくるかを決め直すことでもあります。今回の決算は、日本のEC・コマース事業者にとっても、その評価軸を見直す材料になります。

CTX150時価総額:約2,513兆円
日経平均株価:6万5,606円71銭
USD/JPY:約157円80銭

米国市場:決算を境に一変した一週間

今週の Airbnb は、決算を境に景色が変わりました。発表前日にあたる6日の終値は151.64ドル。同日の取引終了後に第2四半期決算を出すと時間外取引で1割ほど上昇し、翌7日の通常取引でさらに上げ幅を広げて178.07ドルで引けています。この水準は2026年に入ってからの最高値です。過去52週の平均が131.46ドルですから、一週間のうちにそこから3割以上高い位置まで切り上がったことになります。
7日の米国市場では旅行関連銘柄へ広く資金が流入し、Booking Holdings が3.39%高、Expedia Group が1.34%高となりました。一方で、アジア勢のインド MakeMyTrip(0.07%安)や中国 Trip.com(0.22%安)は横ばいにとどまっています。
同じ日の朝方には7月の雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数が2.3万人の減少と予想外のマイナスになりました。失業率は4.1%です。金利の先行きをめぐって指数全体は方向感を欠きましたが、そのなかで Airbnb の17.43%は際立ちました。業界全体の需要回復というより、同社固有の業績と強気の見通しが評価された結果とみられます。日米ともに、決算の中身で銘柄の明暗がはっきり分かれる相場が続いています。

【注目】Airbnbのホテル連携戦略

第2四半期の売上高は約5,700億円(36億1,000万ドル)で前年同期比17%増、総予約額は約4兆2,900億円(272億ドル)で16%増と、好調な決算となりました。宿泊や体験の予約数は10%増加し、成長スピードは前四半期より加速しています。最終的な利益を示す純利益は約1,290億円(8億1,600万ドル)に達し、本業の稼ぐ力を示す調整後EBITDAは約2,050億円(13億ドル)で21%増。売上に対するこの比率は35%まで改善しました。
伸びが目立ったのは新興国だけではありません。米国、フランス、英国、オーストラリアといったすでに成熟した大型市場でも、利用者の予約ペースが上がっています。成熟市場で成長率が再び上向いた背景には、単なる旅行需要の波だけではない、同社独自の戦略があるとみられます。
この四半期、Airbnb が注力したのは、主力の「民泊(住宅)」以外の選択肢を増やすことでした。「Airbnb Services」として食料品配送、レンタカー、空港送迎、荷物預かりに加え、ホテルの施設を日中だけ使えるプランを開始。体験型アクティビティの提供数は前年同期比で約80%増えました。
そして最も大きかったのが「ホテルの取り扱い強化」です。ニューヨーク、パリ、ロンドンなど20以上の主要都市で、数千軒の独立系ホテルやブティックホテルを新たに掲載しました。ホテル予約はまだ全体の数%程度ですが、民泊事業の約3倍という高いペースで成長しています。さらに同社のデータ(2024年7月〜2025年6月)によれば、初めてホテルを予約した顧客の約35%が、1年以内に民泊も予約しているという数字が出ています。
本来、ホテルを選ぶ人と民泊を選ぶ人は、旅の目的も重視するポイントも異なります。それでも約3人に1人が民泊へ回流するのは、初回のホテル予約時に会員登録、決済情報の入力、本人確認という「購入における一番面倒なハードル」をすでに越えているからです。2回目からは、検索して予約ボタンを押すだけで完了します。
ここに、コマース事業者が学ぶべき重要な視点があります。一般的に新しく商品をラインナップに加える際、多くの企業はその商品単体で利益が出るかどうかで判断し、利益率が低い商品は見送られがちです。しかし Airbnb の事例が示しているのは、新しい商品の本当の役割が利益を出すことだけでなく、新規顧客を集める「入口」になる可能性です。まだ利用したことがない顧客に最初の1回を体験してもらい、その顧客を利益率の高い本業(民泊)へ案内する。つまり、広告費を使って集客する代わりに、商品の幅を広げることで新規顧客を獲得していると言い換えることができます。
ただし、単にホテルやサービスを並べるだけではこの循環は生まれません。同社は同じ四半期に、予約を先に確定させて支払いを後から行える仕組みの案内を増やし、メキシコやブラジルでは無金利の分割払いも導入しました。ログインや新規登録の画面を作り直し、エラーや問い合わせによる離脱も減らしています。初めてサービスを使う顧客ほど、購入をやめてしまう理由は商品そのものではなく「手続きの手間」にあります。その障害を徹底的に取り除いたのです。
費用の構造にも大きな変化がありました。対話型AIを活用したサポート窓口が50以上の言語に対応し、全問い合わせの約45%がスタッフの手を介さずに自動解決されています。その結果、予約1件あたりのサポート費用は前年同期比で約16%減少。新サービスの企画から提供までの期間も最大60%短縮されました。取扱商品やサービスを増やせば通常は管理の手間やコストが増えますが、Airbnb はテクノロジーを活用して1件あたりの費用を削り落としました。事業を拡大しながら35%という高い水準の利益率を維持できている背景には、このコスト構造改革があるとみられます。
なお、当四半期にはFIFAワールドカップの公式サポーターを務めたことで、開催都市で15万戸以上の民泊が新たに掲載された特殊要因がありました。これが業績をどれだけ押し上げたかは明記されていませんが、頭に入れておく必要があります。
今後の見通しにも触れておきます。第3四半期の売上高は、前年同期比15〜17%増の約7,400億〜7,530億円(46億9,000万〜47億7,000万ドル)。通期でも売上成長率15%以上、調整後EBITDAマージン35.5%以上へと上方修正しました。
食料品の配送や空港送迎などの周辺サービス自体は、単体で大きな利益を生む事業ではありません。それでも同社が提供し続けるのは、「旅行に関するあらゆる用事を、Airbnb の画面の中で完結してもらうため」です。便利だから使う機会が増え、使う機会が増えるほど、次の旅行でも「まず最初に Airbnb を開こう」と思い出す確率が上がります。Airbnb が積み上げているのは、単なる宿泊施設の数ではなく、「顧客が自社のアプリに戻ってくる理由の数」なのです。
ホテルから入った顧客が民泊へ戻ってくる「3人に1人」という高い回遊率が今後も維持できるのか。次の四半期以降の数字が、その真価を証明することになります。

CTX150とは?

CTX150(Commerce Transformation X 150 / 通称:コマトラ)は、EC・決済・物流・D2C・SaaSなど、コマース変革を牽引する世界150社の株価を追跡する注目銘柄群です。

Commerce Transformation X 150 編集部
2026年8月9日

※CTX150は独自に選定した注目銘柄群であり、金融商品ではありません。本コンテンツは参考情報であり、投資判断の根拠とすべきではありません。データはYahoo Finance等から取得しており、取得タイミングにより実際の数値と異なる場合があります。

いいなと思ったら応援しよう!

Commerce Transformation X 150 編集部 岩田 世界のコマース動向を可視化する「CTX150」等の活動を通じ、デジタルを武器に挑戦できる環境作りを目指しています。頂いたサポートは、質の高い情報発信や、コマースの未来を切り拓く研究活動費として大切に活用します。内容に共感頂けましたら、チップで応援頂けると大きな励みになります!

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー