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「3ヶ月で黒字化」は本当なのか。注目のホテル再生ビジネス、その5つの流儀

泊まるたびに変わるホテル。その裏にあるもの

「あれ?あの旅館、名前が変わってる」ということ、よくありませんか?
宿泊予約アプリを開いたとき、「ここって、前は別の施設じゃなかったっけ」と気づいた経験がある方も多いはずです。これらの大半はM&A(企業の合併・買収)による運営者交代の結果です。

そういえば、自分の周りでも、不動産売買だけでなく、宿泊施設のロールアップみたいな事業展開で、かなり儲かっていそうな仲間たちも少なくないように思います。

日本の宿泊市場は今、くっきりと明暗が分かれています。都市部や人気観光地では、円安を背景にしたインバウンド需要が宿泊料金を押し上げ、外資系の高級ホテルが続々と開業しています。

一方で、地方の老舗旅館や独立系ビジネスホテルは、後継者の不在・施設の老朽化・光熱費と人件費の高騰という三重苦にさらされており、単独での事業継続を断念するオーナーが増えています。

「稼げる場所」と「続けられない施設」が共存

この需要と供給のミスマッチ——いや、「ミスマッチ」では少し生ぬるい表現で、実態は市場の根本的な断絶と言ったほうが近いかもしれません。その断絶を埋める形でM&Aによる業界再編が加速しています。

豊富な資本や独自の運営ノウハウを持つ企業が、経営難に陥った施設を取得し、自社のネットワークに組み込んでいく動きが活発化しているのです。

ここでは、独自の再生手法で業界を引っ張る5つのプレイヤーの戦略を比べてみます。

ブリーズベイホテル:「改善余地」だけを判断基準にする

神奈川県横浜市に本社を置くブリーズベイホテル株式会社(BBH)は、全国140施設以上を展開するホテルグループです。最大の特徴は、買収後わずか3ヶ月での黒字化を繰り返しているという点にあります。

代表の津田則忠社長のキャリアは、農林水産省→マッキンゼー・アンド・カンパニー→投資ファンドです。ホテル業界とはほぼ無縁の経歴ですが、だからこそ業界慣習にとらわれない発想ができています。

案件を選ぶ基準は「改善後の収益と現状との差がどれだけ大きいか」のただ一点。立地の良さでも、施設の知名度でもありません。「いま赤字」であることが大前提で、改善余地が大きいほど投資の旨みが増す、という発想です。

買収翌日から動き出す、50〜100の施策パッケージ

買収完了の翌日から、あらかじめ用意された50〜100種類の改善施策が一斉に投入されます。全客室にアメリカのサータ社製の高級マットレスを導入し、無料朝食バイキングを始め、OTA(楽天トラベルなど)の有料掲載プログラムを活用して検索上位に強制的に表示させる。

属人的な接客技術を磨くよりも先に、ハードとプラットフォームで集客と満足度の底上げをする——この割り切りが3ヶ月での黒字化を可能にしています。

かつての赤字高級旅館「永芳閣」の再生事例では、部屋への食事出しをレストラン個室に切り替え、代わりに富山の地酒30種類のフリードリンクを導入しました。手間を省いた分、別の価値を手厚くする。このウィンウィンの組み合わせを施設ごとに見つけていく技術が、同社の中核的な力です。

アパホテル:「持つほど儲かる」という逆張りの論理

業界の常識では、ホテルの不動産は持たずに運営だけに徹するほうが資本効率が良いとされています。ところがアパホテルは、この常識を真逆にいきます。土地の取得・建設・運営のすべてを自社グループで完結させる完全垂直統合型モデルを一貫して選んでいます。

仕組みの要は「減価償却」です。自社で不動産を大量に所有することで毎年多額の減価償却費が発生しますが、これは帳簿上の費用であって、現金が社外に流出するわけではありません。課税対象の利益を圧縮しつつ、手元のキャッシュはそのまま保持できる。その資金を直ちに次のホテル建設に再投資して、また減価償却を発生させる。この「自己増殖サイクル」が、年間50棟以上という驚異的なペースでの拡大を可能にしています。

星野リゾート:「持たない」ことで機動力を手に入れる

アパホテルの対極に位置するのが、星野リゾートです。自社では不動産を持たず、ホテルや旅館の運営だけに特化する「アセットライト」を採用しています。

再生の進め方も独特です。物理的な改修より先に、市場調査のデータをもとに「誰に、何を、どう届けるか」というコンセプトを再設定します。そうして価値を高めた施設を自社が組成した不動産投資信託(REIT)に売却して資金を回収し、その資金でまた次の施設の運営を取りに行く。資本循環の速さが機動力を生んでいます。

現場のマネージャーを「立候補制」で選ぶという仕組みも特徴的です。意欲ある現場の人間がコンセプトの体現者になることで、施設ごとに異なる高い顧客満足度が維持されています。

フォートレス:3つのステップで地方施設を再生する

外資系ファンドのフォートレス・インベストメント・グループの手法は、3つのフェーズで成り立っています。

第一段階が「取得」です。業績が振るわない地方の老舗旅館、老朽化した大型リゾート、大企業が持て余している宿泊施設を、複数まとめて割安な価格で買い取ります。金融機関からの不良債権譲渡や、企業の不採算部門の切り出し(カーブアウト)といった金融的な手法を使うことで、一般市場より低い価格での取得を実現します。単体では高くて買えない施設も、まとめてパッケージで買えば交渉力が変わる。この「バルク取得」がフォートレスの強みです。

第二段階が「移管」です。取得した施設を傘下のマイステイズ・ホテル・マネジメントに一気に組み込みます。全国規模の予約システム、食材や備品の共同仕入れ、人材の相互融通。単独の地方ホテルでは絶対にアクセスできないインフラを、統合した瞬間から使えるようにします。

第三段階が「再生」です。現代の旅行需要に合わせた客室改修と、思い切ったリブランディングを実施します。

「かんぽの宿」をどう蘇らせたか

この手法の象徴的な事例が、日本郵政グループが運営していた「かんぽの宿」の再生です。慢性的な赤字と非効率な経営で知られていたこの公共の宿を、フォートレスは「好立地の温泉・宿泊ネットワーク」という巨大な潜在資産として再評価しました。施設を「亀の井ホテル」としてリブランディングし、従来のシニア固定客だけでなく、ファミリーやインバウンド観光客にも開いた宿泊施設へと転換しています。

GENSEN HOLDINGS:全66施設の購買力で、食卓を豪華に

2024年4月に大江戸温泉物語湯快リゾートが経営統合したGENSEN HOLDINGSの誕生は、カジュアル温泉旅館市場の新時代の幕開けを告げるものでした。

この統合で誕生したのは、全国66施設(テーマパーク含む75施設)というカジュアル温泉旅館の最大規模のネットワークです。

統合による最大の恩恵は食材の仕入れコストの大幅な削減でした。ここで特徴的なのは、この削減分を企業の内部留保には回さず、カニやステーキ、いくらといった付加価値の高いメニューをバイキングに組み込む原資とした経営判断です。

コスト削減の恩恵を、顧客が体験できる食事の豊かさとして還元し、「気軽に何度も行ける温泉旅館」というポジションを確立しました。

以上、いかがでしたか?
メインプレーヤーたちが、各々全く別々の経営戦略で成長しているのが、すごく面白く、勉強になりますよね。

それではまた、こちら「はっちょんブログ」でお会いしましょう!


なお、こちらでは、他の業界にも応用できるTIPSを抽出してまとめてみました!よろしければ、是非ご一読いただければ幸いです!🙇‍♀️👇


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