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SBIがエンタメ企業を"爆買い"している、本当の理由

なぜネット証券がTGCに出資するのか

「あれ、SBIって、どうしちゃったの?」

そう感じているかたも多いかと思います。東京ガールズコレクション、VTuber、アニメ制作会社、ライブ配信プラットフォーム…、ここ1年でSBIグループが資本参加・提携した先は20社を超えました。2025年5月に設立されたSBIネオメディアホールディングス(以下、SBIネオメディアHD)が、その司令塔です。

これを「トップの思い付きによる、金融グループの迷走」と片付けるのは早計です。日本の金融業が生き残るための、考え抜かれた賭けではないか?と私は見ています。

金融がメディアやエンタメを傘下におくべき時代に!

金融商品はもうコモディティになった

SBI証券の売買手数料は実質ゼロ。他社も追随しています。iDeCoもNISAも、各社の商品ラインナップに大差はありません。金融機能だけで戦っても、もう差がつかない時代になっています。

問題は「どこで顧客と出会うか」です。検索広告経由の口座開設単価は年々上がっており、LTV(顧客生涯価値)との逆ざやが常態化している事業者も少なくありません。SBIが出してきた答えが「感情経済圏」という概念で、この顧客獲得コスト(CAC)問題への回答でもあります。

スポーツ観戦、ライブ、アニメ、VTuberのファンコミュニティ。人が感情を動かされる瞬間に、消費と行動変容が起きます。この「熱狂の瞬間」を顧客接点にしてしまおう、という発想です。

業界のレジェンドである北尾吉孝氏が、井上尚弥選手の東京ドーム公演(5万5000人)を視察し、「この世界を取り入れないことには我々の将来はない」と語ったとされています。大げさに聞こえますが、論理としては一貫しています。

個別案件を俯瞰すると、布陣が見えてくる

個々の案件だけ眺めていると、どうしても散漫に見えますが、少し引いて、整理してみると、3層の布陣が浮かび上がってきます。

1層目はトラフィック。ライブドアニュースライブドアブログ(月間利用者約1億人)、マイナビ。毎日の情報消費の入口を押さえることで、金融サービスへの動線を外部広告に頼らず内製化しようとしています。
これは間違いなく非常に正しい打ち手です。

2層目はIP・コンテンツ。ツインエンジン(アニメ)、カルチュア・エンタテインメントグループ(徳間書店など20社超)、スターミュージック(TikTok・ショート動画)、TWIN PLANET(タレント・インフルエンサー)。

作る側を内側に取り込もうとしていますが、グループ内で積極的に行われてきたエンタメ会社やコンテンツへの投資事業の延長として捉えると、奇異なイメージはありません。

3層目がイベント。 東京ガールズコレクション主催のW TOKYOは1開催で延べ約500万人にリーチします。VTuberのBrave groupツイキャス、eSports事業も同じ文脈でしょう。SBIがSBI地銀ホールディングス株式会社を介して、注力している地銀ネットワークとの親和性も、意外にある領域です。

「コンテンツを作る → 流す → 熱量を高める → 金融サービスに誘導する」という経路が、この3層で一本につながります。

電通との提携が、実は一番大きい話かもしれない

2026年6月に発表された電通・電通デジタルとの戦略的業務提携は、あまり注目されていませんが、インパクトはそれなりに大きいものです。

電通の生活者データと、SBIの金融トランザクションデータを掛け合わせると何が起きるか。「この人は毎月いくら使い、何に熱狂し、どんな投資行動をとるか」が一つの基盤で見えてきます。GoogleMetaも、今のところこのデータモデルは持っていません。

さらに、SBIグループ全体の年間広告費250億円超をインハウス化して電通にバルク発注する計画があります。グループ側はコスト削減、電通側はウハウハの安定受注、という算段ですが、その先にはもう一段の構想があります。広告決済をステーブルコインJPYSC、2026年6月末発行予定)でオンチェーン化する、というものです。

これが実現すると、インフルエンサーへの報酬支払いがリアルタイムになり、数円単位のマイクロトランザクションも可能になります。クリエイターエコノミーの配管を、SBIが引き直そうとしているという話です。

期待先行であることは、否めない

ここまで読むと、誠に夢のある話に聞こえますが、冷静に見ておきたい点がいくつかあります。

2026年6月時点で、案件の多くはまだ「資本業務提携に向けた基本合意」「協議中」「持分法適用関連会社化予定」の段階です。クロージング済みで財務に貢献しているのは一部にとどまります。

ただでさえ、個社銘柄的には玉石混交な投資イメージなうえに、出資比率や取得価格を非開示にしている案件も多く、外部からの投資効率検証やポジティブな評価は困難な印象です。

そして、IPビジネスを本業にしようとしている会社として、権利処理まわりの体制作りが未だ途上にありそうな点も気になります。20社超の異なるカルチャーを持つ企業群を持株会社として束ねるには、金融のコンプライアンス文化とエンタメのクリエイティブ文化という、もともと相性が良くない二つを同じガバナンスフレームで管理しなければなりません。たいへんです。

財務の目論見書を監査するプロセスと、アニメの二次利用権をクリアランスするなどのプロセスは、専門性がまったく別の話であり、拡大のスピードに、内部統制の整備が追いついているのかどうか?は慎重に見る必要があります。

「金融の入口を変える実験」として見ると、面白い

SBIネオメディアHDは、「金融機関がコンテンツを持つ」という日本では前例のない実験をやっています。ロジックは通っていますし。個々の提携先も、トラフィック・IP・イベントという観点では、総じて、提携可能な有力プレーヤーたちを押さえています。

スーパーアプリ「SBIエージェント」にメディア機能が統合され、ファン経済の熱量が証券口座の開設につながる絵が本当に見えてくるのは、2027〜2028年あたりになるはずです。

短期で「買いか、どうか」という話ではありません。ただ、日本の金融とエンタメの地図を変える可能性がある、さすがと賞賛したい動きとして、目を離せないのは確かです。

それではまた、こちら「はっちょんブログ」でお会いしましょう!

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