最近聴いているアルバム2026.05
Pulp 『Different Class』 (1995)

スタッカートの効いた四つ打ち、チープなシンセ、囁くような語り口、農場の羊があくびをするスロウテンポ、混雑する駅をすり抜ける急ぎ足。匂い立つロンドンの人間模様。ここでは一曲一曲が短編小説の各章を構成していて、Jarvis Cockerは言いたいことを言い終わると次の話に移っていく。CDが止まり、電気を消して目を閉じる。小さな家に住んでいたデボラが瞼に浮かぶ。Jarvisが横でクネクネ歌っている。大衆娯楽の頂点だ。
Placebo 『Placebo』 (1996)

努力、競争、成功、男らしさ……。それらを強要する社会にメイクと甲高い声と青臭い歌詞で中指を突き立てたトリオのデビュー作。2nd以降は耽美で近寄りがたい方向に進むが、1stはキャッチーなブリットポップ×ポストハードコアが②③④⑥⑦⑧など多く収録されていて聴きやすい。「ロック」と言えば70年代クラシックロックではなく90年代オルタナティブロックを指す2020年代において、時代のムードに完全一致するこのバンドこそ再評価されるべきとずっと思っている。6/19リリースのRe:createdバージョンが楽しみ。
British Sea Power 『The Decline Of British Sea Power』 (2003)

イギリスにはPeter Gabriel, Roxy Music, XTC, The Cure, Blur, Elbow, Bombay Bicycle Club, alt-Jなどに受け継がれる一連の流れがある。一聴すると実験的で奇天烈だけど、実は優しく力強いメロディを真摯に歌っているじゃん、という系譜だ。このBSPはその系譜における当時の最新クロスオーバー系としてPavementやModest Mouseら北米インディにも通じるぶっきらぼうさも兼ね備えている(⑩なんてPavement "Fillmore Jive"の拡大10分版)。しかし売りはやはりメロディの素直な美しさだろう。⑧⑪は特に素晴らしい。1st〜4thはどれも普通に普遍的な名盤なので一度は聴いた方が良い。
The Veils 『Nux Vomica』 (2006)

21世紀のイギリスで最も過小評価されているバンドの一つ。1stは当時のUKシーンに近いキャッチーなメロディを押し出したインディロックとオーソドックスでノスタルジックなシンガーソングライター風の曲の二本柱だったが、この2ndではそのどちらも容赦なく進化している。自堕落で破壊的なムードはヨーロピアンなロマンティシズムと濃密に絡み合い、ボーカルはLuke HainesとJeff BuckleyとBrett Andersonを足して割ったようなカリスマを20代前半にして手にしている。②③⑥⑨のようなポップな曲ですらカリスマだだ漏れ。サブスクには無いけど中古CD買ってまで聴くべき名盤。
The Smashing Pumpkins 『Zeitgeist』 (2007)

大衆からの評価をいつも過度に気にするBillyは、『Adore』や『Machina』の「失敗」の理由を「人々はもっとエネルギーのある音楽を聴きたがっていて、僕たちが弱音を吐いて泣いているのを望んでいなかったから」だと捉えた。てことでやたらメタリックな方向に舵を切ったのが再結成第一弾の本作。聴き終わったときに印象に残っているのは、何かやたらヘヴィだったな、というボヤッとした印象だけ。まあ音を聴いているだけで十分気持ちいいし、ディスコグラフィ全体を見渡した時にこういう異色作があるのも面白いし、全てが傑作であるべきとも思わないので、何も考えずに楽しんで聴くべきアルバムなんだろうなと思う。
Mystery Jets 『Twenty One』 (2008)

当時のUKインディロックの盛り上がり・勢いを象徴するポップアルバム。どのフレーズもキャッチーで耳に残るが、総体としてはやや繰り返しが多くクドさが残る。それでいて何度も聴きたくなってしまうのは成長と痛みをテーマにした淡く儚い詩情のせいか。やたらディテールが具体的な物語調の語り口(まるでPulp)もそれに拍車をかけている。演奏は拙いもののアイデア量は豊富だし全部試してみようという健康的な冒険心がある。その全てが上手くいっているわけではないが、その拙さは結果的にはむしろ愛おしさや愛嬌につながっている。レーダーチャートに「拙さ」の項目があるジャンルはインディロックくらいだが、本作はそこが満点。8月の7thも楽しみ。
Cymbals Eat Guitars 『Lose』 (2014)

エモ第四波の一つと片付けられがちなバンドだが、むしろBuilt To Spill, Modest Mouse, Sliversun PickupsやFoxingなどのように特定のジャンルやシーンからは独立したスペシャルなバンドだと思っている。この3rdはポストロック的な構築美の要素もありつつ、基本は綺麗なメロディ(特に⑤⑦⑧)とカタルシスに溢れた演奏(特に①)でグイグイ聴かせる王道のロック。アルバム全体には親友を失った喪失感が漂うが、同時に前向きな力強さも聴こえる。それは決して自己耽溺や自己完結に陥ることはない彼らの1stの頃からの長所でもある。喪失を経験した全てのリスナーに向けて開かれている傑作だ。
Citizen 『As You Please』 (2017)

2017年はグランジゲイズが頭角を現しつつある時期だったが、本作はそれらのバンドが持つ破壊力や音響に頼らず、ストレートな歌詞と優れたソングライティングで正面勝負している。かつての繁栄が嘘のように消え停滞感と倦怠感ばかりが蔓延する中西部の小さな「終わった」町。そこで育った人々の心の奥底を映し出す真摯なハートランドロック。派手さは無いが聴けば聴くほど心に染み入るメロディとコーラス。1stの物憂げなエモと2ndの破滅的なグランジの要素が自然に混ぜ合わせられた演奏。第一期Citizenの最高傑作、そして2010年代エモ第四波の最高到達点と呼んで差し支えないだろう。静かに胸が熱くなる。
余談
唐突だけどここ一年のベストバイ。
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パナソニックドラム型洗濯機 NA-LX113EL-W

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