『月のひかりのモン』

ある雨の日のことでした。
しろは、かえりみちで
ふしぎないきものに出会いました。
ねこのようで、いぬのようで、
でも、どちらでもない
もふもふの子でした。
その子は、ぬれているのに
「たすけて」とは鳴きません。
ただ、じっと
しろを見ていました。

「……おいで」
しろがそう言うと、
その子は、ためらうように
ちいさく近づいてきました。
あたたかいおうちで、
タオルでふいて、ごはんをあげて。
しろは、その子に
名前をつけました。
「モン」って。

モンは、
ちょっとぶっきらぼうな顔をしていました。
でも、しろにはわかりました。
ほんとうは、とてもやさしい子だって。
さみしい日は、そっととなりに。
つかれた日は、ひざの上に。
うれしい日は、しっぽをゆらして。
モンは、いつも
しろのそばにいました。

しろは毎日、
モンの名前を呼びました。
「モン、おはよう」
「モン、ただいま」
「モン、ありがとう」
モンはことばを話しません。
けれど、しろには
わかることがありました。
“ここにいるよ”
モンは、いつもそう言っているようでした。
そんなある夜のこと。
まんまるお月さまが、
窓からやさしく
ひかりを落としていました。
月のひかりが
モンのもふもふを照らすと——
ふわり、ふしぎな風が
へやいっぱいにひろがりました。
しろが目を丸くすると、
そこにいたのは、
ひとりの青年でした。

「……そんな顔すんなよ」
青年は言いました。
「俺は、ちゃんとここにいる」
その声も、
その目も、
しろにはすぐにわかりました。
“モンだ”
人の姿になっても、
モンはモンでした。
ぶっきらぼうで、やさしくて、
しろのとなりに立つひと。
「ねえ、ずっといてくれる?」
しろがたずねると、
モンは少しだけジト目を細めて
こたえました。
「呼ばれたら、来る」
それから毎日、
朝も、昼も、夜も、
モンはしろのそばにいました。
もふもふの日も、
人の姿の日も。
雨の日も。
晴れの日も。
さみしい日も。
しあわせな日も。
しろのおうちは、
モンのいる場所になりました。
そしてしろにとっても、
モンのとなりは、
だいじな場所になったのでした。

ある雨の日に出会った
ジト目のもふもふ。
その子は今も、
しろのとなりで
静かに言っています。
“ここにいる”
おしまい

🎨おまけ
ジト目ネコイーヌ・モン ミニ図鑑📖

