タブーになった『なめ猫』
その頃の家には、
小型犬の『リリー』がいて。
もともと犬派だった私には、
イマイチその流行に乗れませんでした。
その決めゼリフも──
『なめんなよ』
…なんだか怖そうで。
何をなめるのかも、
よく分かりませんでした。
またツッパリ風の学ランにも、
あまり魅力を感じていませんでした。
けれど、周りのみんなは、
それが好きでした。
──それが、『なめ猫』
テレビだけでなく──
クラスでも、
そのグッズを集めている友達が、
多くいました。
祖母もテレビで、
なめ猫を見るたび、
『あんな服着せねえ方が、
かわいいのに』
と言っていて。
みんなが持っているから
というだけで、
なめ猫グッズを買って欲しいとは、
言いづらい雰囲気でした…
とりあえずクラスでは、
みんなに合わせて。
意味も分からないのに、
そのキャッチフレーズの
『なめんなよ』を口ぐせのように、
私は使っていました。
クラスメイトや友達からは、
『不良がいる』
『わー、不良だー』
と、からかわれながらも私は、
すっかり、
いい気になっていきました。
一方で──
真面目な母は、
大の不良嫌いでした。
『男のくせにカッコつけて、
みっともない』
『チンピラみたいだし』と。
ちなみに母は、
なめ猫には、
ほとんど興味もありませんでした。
その日──
イライラしていた母から、
日ごろの生活態度や、
先生から注意された授業中の態度について、
私は、とうとうと、
叱られていました。
軽い気持ちでしたが、
母に向かって、
小声で、つい──
『なめんなよ』と。
──次の瞬間、
母は、
プラスチックの筒状の掃除機の柄を
押し入れから取り出してきて。
その柄で、
私の後頭部を思いっ切り、
引っ叩きました。
『いたい!何すんだよー』
と言いながら、
母を見れば、
まさに鬼のような顔…
母は大声で、
『そんな言葉使うなら、
この家から出ていきなさい!』
『あんたはもう、
うちの子どもじゃない!』と。
あまりに驚いた私は、
泣きながら母に、
『ごめんなさいー』
『もうぜったい、ぜったい言わないから、
許してくださいー』
土下座しながら、
謝り続けました。
それ以来──
うちでは、なめ猫は、
タブーになりました。
ただ、
そんなことを知らない
祖母は変わらず。
テレビで、
それを見かけるたびに、
『あんな服着せねえ方が、
かわいいのに』
──と。

タブーになった『なめ猫』 【完】
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