もう行かない『授業参観』
小学2年生の頃──
その日は、
『授業参観』でした。
私は朝から、
何となくワクワクしたり、
ソワソワしていました。
またその日には、
父は仕事で、
母が来る予定になっていました。
その時間になると、
少しでも良いところを見せようと、
みんなもソワソワしていました。
後ろをキョロキョロ振り返りながら、
自分の親が来るのかを気にしたり。
早い親は、
授業の前から廊下で待っていて、
始まると同時に、
開いたままの教室の
後ろから入ってきました。
親を見かけた友達は、
手を振って、
『父ちゃん』
そのお父さんも軽く手を振る。
お母さんは、
『ほら、ちゃんと先生の方向いて』と。
そんなやり取りが、
続いていました。
先生も、
『はい。今日はお父さん、
お母さんが来る日だから、
みんな良いところ見せてな』
と。
けれど──
他の親はゾロゾロと入ってきてるのに、
母だけはなかなか来ませんでした。
みんなも良いところを見せようと、
先生の質問には、
『はい!』『はい!はい!』と、
いつも以上に、
元気いっぱいに手を上げて。
先生も親が来てる子を
わざと当てながら、
答える姿を見せているようでした。
それから授業が半分過ぎても
母は来ませんでした──
どうせ当たらないと思いながら、
手はあげるものの、
私は完全にふてくされていました。
ノートに怪獣を書き始めて──
もうその頃には、
授業も聞いていませんでした。
その後も先生の質問に、
みんなは変わらず。
『はい!』『はい!はい!』
落書きに夢中になりながら、
手をあげていたら、
先生が、いきなり私に、
『じゃあ、立って答えて』
!?
ビックリして、
ガタッと立ち上がり、
後ろを振り向けば──
バシッと、
1人だけ着物を着た母。
顔まで気合いが、
入りまくっていました。
質問を聞いてなかった私──
そのまま大きな声で、
先生に、
『わかりません!』
と答えれば、
教室は大爆笑。
先生は近づいてきて、
ノートの怪獣を見つけて。
『うまいなあ、
見ないで書いたの?』と。
ノートを手に取り、
驚いていました。
私は得意になり、
『そうだよ。
ティラノサウルスなんだー』と。
先生から褒められた姿を、
母に見せたくて、
いい気になると。
みんなも、ガタガタガタと、
私の机に集まってきて、
『うおっ、すげー!』『うめー』と、
授業そっちのけで大騒ぎに──
そのまま、
母がいた方をチラリと見れば、
もう教室にはいませんでした。
家に帰ると──
母は、
『あんたの授業参観は、
恥ずかしいから、もう行かない』と。
それからは、
授業参観に、
祖母が来るようになっていました。

もう行かない『授業参観』 【完】
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