僕と10円玉と駄菓子屋ゲーセンと:放課後の校門前、僕らが見つけた小さな桃源郷!の巻。
昔ながらの駄菓子屋さんを見かけなくなって久しいです。たまにショッピングモールで、昭和の街並みを再現したレトロなコーナーや、昔の駄菓子屋さんを模した売り場を見かけることがあり、懐かしさのあまりつい足が止まってしまいます。そして、気付けば手に取った「モロッコヨーグル」を小さな木のスプーンで掬っていたり、カチカチに凍らせる気満々で、「あんず棒」をカゴに入れていたりするのです。
僕が住んでいる地域で、昔ながらの駄菓子屋さんを最後に見かけたのは25年くらい前でしょうか。僕は仕事で営業車を転がして外回りをしていたので、こういった町の風景の移り変わりをよく記憶しています。あの角にあった赤い屋根の駄菓子屋さん、いつの間にかコインパーキングになっちゃったな……なんて。今思えば、仕事の合間にちょっと寄っておけば良かったなぁと、小さな後悔が胸をかすめます。
少年少女の桃源郷
駄菓子屋さんといえば、お菓子以外にも、僕らの心をくすぐる怪しげなガラクタ……いえ、宝物の山でした。
くじ引きのスーパーボール:壁に思い切り投げて、顔面にぶち当たったときの昇天経験あり。
塩ビ製の気持ち悪いムカデやクモ:女子を驚かせるための戦略兵器。
カラフルな鈴:なぜか当たるのは小さいのばかり。奇跡的に1等のバカでかい鈴が当たって、どう持ち帰るか途方に暮れたこともありました。
妖怪けむりシート:べたべたした糊を人差し指と親指につけてパッパッ!とすると、煙が出ているように見えました。
銀玉鉄砲:近所の空き地を戦場に変えた名銃。
まさに、ここは少年少女の桃源郷。あのお店の扉を開けた瞬間の、独特の乾いた木の匂いと、お菓子の甘い香りが混ざり合った空気は、今でも鼻の奥に残っています。
10円玉が大活躍!「駄菓子屋ゲーセン」
僕が中学生の頃、その桃源郷に新たな「聖域」が加わりました。駄菓子屋さんの軒先に、立ってプレイするスタンド筐体(たしかオレンジ色の縦長の筐体)のアーケードゲームが何台か置かれるようになったのです。
そんなもん置かれた日にゃ、ええ、殺到しますとも!近所のファミコンキッズたちが! 紛れもなく僕もその1人でした。
僕は勝手にそこを「駄菓子屋ゲーセン」と呼んでいたのですが、その最大の魅力は、なんといってもプレイ料金の安さにありました。当時の一般的なゲームセンターが1プレイ50円から100円だったのに対し、駄菓子屋ゲーセンはなんと20円でプレイできてしまったのです。
がま口の財布に、せこせこ貯めた10円玉をパンパンに詰めて通っていたことを思い出します。チャリン、チャリンと2枚の10円玉を投入する瞬間の高揚感。あれは10円玉2枚の重さよりも、はるかに重みのある決済でした。
オタ少年の誕生と、ラインナップの妙
なぜ20円という破格で運営できたのか。その背景には、遊べるゲームタイトルが軒並み古いという事情がありました。しかし、中学生の僕らにとって「型落ち」なんて言葉は関係ありません。僕は夢中でプレイしていたので、今でもそのタイトルを鮮明に覚えています。
「ロックンロープ」、「出世大相撲」、「エクセリオン」、「ボンジャック」、「新入社員とおるくん」、「空手道」、「リブルラブル」……。嗚呼、名前を挙げるだけで涙が出そうです! 中にはファミコンに移植されて、家で散々プレイしたタイトルもありました。しかし、駄菓子屋の軒先でアーケード版に向き合うと、「ふむふむ。アーケード版はこうなっていたのか!」「音が豪華だぞ!」と、妙にマニアックな楽しみ方をするオタ少年(僕)がそこに爆誕していたのでした。
また、当時のゲームセンターといえば、まだ照明が暗くてタバコの匂いが立ち込める「アダルティでちょっと怖い空間」が主流でした。それに比べて駄菓子屋ゲーセンは、基本的に子供しかいませんし、屋外というロケーションもあって開放感がありました。当時の親たちの目から見ても、この「健全な遊び場」としてのニーズは凄くあったのだと思います。
「門前」という名の聖域
僕が小学生の頃に初めて通った駄菓子屋さんは、まさに小学校の校門近くにありまして、通称「門前(もんまえ)」と呼ばれていました。
後で知ったのですが、この「門前」という呼び名は、僕の親の世代からずっとそうだったようです。数十年、あるいはもっと長い間、その店は小学校と、そこを通う小学生の日常をじっと見守ってきたのです。そう思うと、なんだか胸が熱くなります。
しかし、冷静に考えると校門の真ん前に店を構えるとは、店主のおばあちゃん、なかなかの商売上手なり……! 下校時刻、吸い寄せられるように門をくぐり、気づけば財布の中身は空っぽ。 「もうやめて!僕のお財布のライフはゼロよ!」 状態に何度も陥ったのも、今では笑えるいい思い出…なのかい⁈。
店番のおばあちゃんが、ゲームに熱中しすぎる僕らに「あんたら、お金使いすぎたらダメよ」と時々嗜めてくれたのも、今思えば「見守られ感」があって温かいものでした。単なる売り子さんではなく、地域の目として僕らを見守ってくれていたのですね。
さあ桃源郷に出かけよう!
駄菓子屋さんでお菓子を買って、安価な軒先の駄菓子屋ゲーセンで思い切りプレイして、友達のプレイをギャラリーとしてあーだこーだ言いながら応援する。 書いていて改めて思いましたが、こりゃホントに桃源郷ですな!
これまでに出張先で偶然見つけた「駄菓子屋さんを模したお店」の場所は、しっかりとナビにピン止めしています(もちろん、仕事の案件よりも優先的にメモしたんだぜ)。
このnoteを書いていたら、久々に駄菓子屋さんの空気に浸りたくなってきました。あの頃の僕のようにがま口財布……とはいきませんが、今度の休みには子供を連れて、その「令和の桃源郷」へ行ってみようと思います。
