見出し画像

上を向いて歩くのも

11月、晴れた日の朝です。

駅から会社まで歩いて行く道のりは、いつもどこか似通っていて変化は無いようにも思えます。
毎日走っているバスやいつもすれ違う人々、建ち並ぶ家々など、それはそれはよく見慣れた光景です。
でも、やっぱり変化はしているようで。

歩きながら何気なく上を見ると、街路樹の葉っぱがところどころ色付いていました。
緑色の中に、赤色や橙色などが混じっています。紅葉の始まりですね。
そしてその後ろに広がっている空は、雲一つない澄んだ青色。
思わずはっとするような、心の内側が洗われそうな、そんな綺麗さでした。

赤と橙と青のコントラスト。
これぞ秋、という感じです。

毎日が暖かくて、朝晩は多少冷えるけれど昨年の今頃ほどでもない気がして、嬉しいような心配なような。
でも気づかぬうちに季節は進んでいたようで、ちゃんと秋らしくなっていることは嬉しく思えました。

僕は歩くときにいつも、転ばないように変なものを踏まないようにと下を見てしまいます。
しかし何かに導かれるように空を見上げてみたら、そこには自然からのちょっとした贈り物、色鮮やかな季節のお便りがありました。

寝不足気味で少し疲労もあって、そのせいか鬱いでいたはずの気持ちが一転して晴れやかになったような雰囲気。
我ながら単純です。
でも空が青いのはいいことだと思います。
雲の無い快晴の空は、これからの時期だけの特別なものに思えて、つい嬉しくなってしまうのです。

それに満足して再び足元に視線を戻すと、なんとなく陰が長いことに気付きました。
夏場はあんなに短かったのに、太陽もずっと高い位置にあって容赦なく突き刺す勢いで照らしていたのに。
それが今では倍近い長さです。
それはきっと日の出が遅いのと太陽が低いからで、即ちそれだけ季節が進んでいるということに他なりません。

俯いたままでは分からなかったことと、
俯いていたからこそ分かったこと。
ついでに、移り行く季節を感じられるだけの心の余裕があること。
通勤途中ながら、散歩を楽しんでいるかのように錯覚して、会社へ向かう足取りも少し軽くなった気がしました。

秋の便りが届けてくれたのは、通勤路を散歩道に変えてくれるおまじないと朗らかな心模様でした。
なんのはなしですか。
たまには上を向いて歩くのも悪くないですね。