【なんでも「人生のようだ」とこじつける女】50代女の思いを笑いにする短い物語 #41
【なんでも「人生のようだ」とこじつける女】
ある日のこと。 女は地下鉄の駅から地上に向かうため、階段を上っていた。なかなか長い階段だ。
ずいぶん上ったと思って一休みしたとき、「あと何段ぐらいかしら」と見上げてみた。 すると、思っていたより進んでおらず、まだ長い階段が続いていた。
それを見て女はクラッとする。
(まるで人生のようね。何かを成し遂げる時、先ばかりを見てもクラッとするだけなのよ。『千里の道も一歩から』って言うでしょ。だから足元の一歩一歩をしっかり歩きなさい、ってことをこの階段は伝えたかったのね。)
地下鉄の階段から、人生を学ぶ。
また、ある日のことだ。 キッチンで洗い物をしていたとき、数日前に指を切ったところが、もうしみなくなっていて綺麗に治っていた。
女は指を眺めながら思う。
(まるで人生のようね。あんなに傷ついていたのに、綺麗に治って……よく頑張ったわね。バンドエイドをしていた時は他の指たちに迷惑をかけたわ。『怪我の功名』とはこのことね。他の指たちとの絆も前より深まったようね。傷ついてもまた元気になってやり直せるわ、ってことをこの傷は伝えたかったのね。)
指の傷から、人生を学ぶ。
そんなことを思っていると、さっきまですごく天気が良かったのに急に空が暗くなってきた。雷がゴロゴロと鳴り出し、土砂降りの雨が降り出す。
……が、その後、まるで何事もなかったかのように空は晴れやかになっていった。
女は思う。
(まるで人生のようね。急に雨が降り出すように、何が起こるかわからない。でも『明けない夜はない』し、『雨降って地固まる』とも言うじゃない?人生もいろんなことが起こって強くなるってことを、空は伝えたかったのね)
天気から、人生を学ぶ。
◇
次の日。 女は寝坊してしまった。約束の時間に間に合いそうにない。
「どうしよう……これにも、人生の意味はあるのかしら?」
(『急いては事を仕損じる』とも言うわね……)
まずは落ち着かないといけないわね。 ソファに座って深呼吸して考えてみるが……人生の意味なんて、どこにも見つからない。
こんなときは、一分一秒でも早く家を出ることだ。
女は家から出てダッシュしながら思う。
(昨日、調子に乗って人生の意味を考えすぎて、寝るのが遅くなったからよ……!)
それでもしつこく考える女。 きっとこのダッシュからも「人生とは?」が見えてくるはずなのよ。
……人生の意味を考えるより、「遅刻の言い訳」を考えたほうがよさそうな女であった。
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【筆者について】
50代女性。 仕事一筋で爆走した20〜30代。 着いた先は『パニック・不安症』との共存生活。 「こんなはずじゃなかった」…… 昔と今の自分、パニック症のお話だけでなく、心のモヤモヤをクスッと笑える短い物語に変えて成仏させています。
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