【ヨガウエアにモノ申したい女】50代女のモヤモヤを笑いにする短い物語 #35
【ヨガウエアにモノ申したい女】
「やっぱり難しいわ…」
女はパソコンの前でため息をつく。
画面には、ヨガスタジオの検索結果がずらりと並んでいる。
数年前にパニック症が悪化した時、どうしたら改善するのだろうと、インターネットで色々と検索をしてきた。 食事療法、生活習慣の改善、運動……さまざまなワードが並ぶ中、そこに「ヨガ」もあった。
「ヨガ、いいわね。心が穏やかになれそうだわ」
何年も前から、どこかスタジオに通ってみたいと思っているが、いつもつまずいてしまうのだ。 ネットでヨガスタジオを検索をすると、スタイル抜群の美女たちが、肌をあらわにしたピチピチのウエア姿でこちらに微笑んでくる。
キラキラピカピカしたスタジオの中で、類まれな美女が「一緒にどうですか?」と優しく微笑んでいる。
女はいつも、この画面の中の光景に違和感を抱いていた。 なんであんなにピチピチのウエアなのかしら。私にはとてもじゃないけど無理だわ。
習う側までピチピチのウエアを着なくてもいいとは分かっている。 けれど、あのキラキラピカピカした空間に、ダサい格好で行く勇気がないのだ。
だからと言って、薄暗くてボロボロのスタジオ、ヨレヨレのウエアを着たインストラクターさんのところを探したいわけではない。
女がずっと探しているのは、その「中間」なのだ。
けれど、ネット検索で上位に出てくるのはキラキラしたところばかり。大きな広告費をかけられるからだろう。 なら、その「ちょうどいい中間」はどうやって探せばいいのだろう……。 しばらく検索しては挫折する。女はずっと、その繰り返しだった。
「…仕方がないわ。結局はこれなのよ」
女はパソコンを閉じ、リビングへ移動してテレビをつける。 YouTubeのお気に入りにズラリと並んだ「寝ころびヨガ」の中から、いつもの動画を再生した。
画面の中の、肌をあらわにしてピチピチのウエアを着た美女が、優しく微笑みかけてくる。 女はヨレヨレの部屋着のまま、寝ころびヨガをスタートした。
「ふぅ……とてもリラックスしたわ」 「いつか、現実世界のヨガスタジオにも通いたいわね」
ネットでスタジオを探しては挫折をし、結局YouTubeの寝ころびヨガに落ち着く。 女はこのループから、もう何年も抜け出せていない。
「あ、そうそう。50代は筋トレも大事なのよ。筋肉も衰えないようにしないとね」
ヨガを終えた女は、寝ころんだ体勢のまま、検索窓に新たなキーワードを打ち込んだ。
『寝ころびながら 筋トレ』
おすすめのチャンネルがいくつもあがってきた。
そこには肌をあらわにした、ピチピチのウエアを着た美女たちが「一緒に頑張りましょう!」と、女に微笑みかけていた。
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【筆者について】
50代女性。 仕事一筋で爆走した20〜30代。 着いた先は『パニック・不安症』との共存生活。 「こんなはずじゃなかった」…… 昔と今の自分、パニック症のお話だけでなく、心のモヤモヤをクスッと笑える短い物語に変えて成仏させています。
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