LEMUR-レムール-(漫画原作部門応募作品)2章
2章
断片的な幼馴染の夢を見るレーテ(笑っている幼馴染と自分→幼馴染が自分の方を振り返り恐怖に慄いた表情をしているところで目が覚める)
はっと起き上がる
全身に汗をかいている
息を切らしながら胸元のネックレスを握りしめる(無意識)
暗転
掟を暗唱する子どもたちの声(村の風景、山とか家屋とか)
「一つ、鬼の子の目を見てはなりません」
「一つ、鬼の子と言葉を交わしてはなりません」
メタ「一つ、鬼の子に触れてはなりません」(メタの口元)
「__って、バッカじゃないの」
エン「っはは、また言ってる(笑)」
エン「この村の大人たちはいつだって馬鹿だよ」
メタ「大体、いつまで風習だの掟だの言ってんのって話」
エン「ほんとそれ」
「天の子と仲良くしたらよくないことが起こるとか地獄に堕ちるとか意味わかんない」
メタ「私達別に地獄になんか堕ちてないし、毎日楽しく生きてるじゃんね?」
「昔の人の気のせいで作られた掟なんじゃん?」
エン「いい迷惑だよねー」
「掟なんて破ってなんぼじゃん?」
メタ「あはは!言うね〜 エン不良じゃん!(笑)」
エン「不良じゃないし!」
「でもさあ、たまに思わない?」
「この世界にはこんな馬鹿みたいな掟なんてない場所があるんじゃないか」
「そこに生まれていたら、もっと自由に生きられたんじゃないかって」
メタ「まあ思うよね〜」
「こんなくそったれな世界捨ててやるー!って言ってもそんな勇気ないし」
エン「そうだよね…(うつむきながら小声で)でも、二人でなら…」
メタ「ん?ごめん、聞こえなかった」
エン「(意を決したようにバッと顔を上げメタの顔を見て)…ねえ、こんな掟にずっと縛られるくらいならさ、」
メタの父「(メタに向かって)お前!そんなとこで何してる!!」(『お前たち』ではなく『お前』なのはエンのことを視界に入れていないから。逆パターンでも大人は同じような態度を取る)
メタ「やば!見つかった!行こ!!」
とエンの手を取る
エン「えっ!ちょっ!」
笑顔で走り出す二人(メタは屈託なく、エンは「しょうがないなあ」という感じ)
◯メタの家、リビング(洋風かな、白基調)/夜
メタの父、大きめのソファに座ってる(王様が座るような)
メタ、父の前で正座
メタの父「何度も言っているはずだ」
「鬼の子と関わってはいけない、と」
メタ「はい、ですから私も何度も訊いています」
「なぜですか、と」
メタの父「それは__」
メタ「よくないことが起こるから?地獄に堕ちるから?」
メタの父「......そうだ」
「わかっているなら__」
メタ「でも私は地獄に堕ちていません」
メタの父「......関わり続けていればいずれ堕ちてしまう」
メタ「仮に私によくないことが起こったとして、地獄に堕ちたとして」
「それは鬼の子と関わったからではありません」
「私の身に起こるいいこと、悪いことは誰かのせいではありません」
「全て自分で選択した結果です」
メタの父「口答えをするな!私はお前のためを思って言っているのだ!」
「それがなぜわからない!」
メタ「私のためを思ってくれていることはわかっています」
「しかし私のことを決めるのは父上ではありません」
「掟でも、風習でもない」
「私自身です」
◯森の中/昼
メタ「ああもう!」
「毎日毎日鬼の子と関わるなーってやんなっちゃう!」
エン「毎日毎日私達が遊んでるからじゃない?(笑)」
メタ「いいじゃん!私が誰と仲良くして、誰と遊ぶかは私が決めるの!」
「それの何がいけないの?」
エン「大人達は風習に縛られて頭が固いから」
メタ「(思い詰めた表情)......こんな村で一生過ごすのかな」
エン「......」
メタ「外の世界を、探すこともできずに」
「そういう運命だって諦めるしかないのかな」
エン「……」(何か言いたそう)
「しょうがないのかもしれない」
「私達は跡継ぎだし一人っ子だし」
沈黙
エン「でも—」
メタ「ねえ、」
「『生まれ変わり』って信じる?」
エン「…えっ?何急に(笑)」
メタ「よく言うじゃん、『生まれ変わっても一緒にいよう』みたいな」
メタ「あれ、本当にあると思う?」
エン「…あったらいいなとは、思うよ」
メタ「だよね」
メタ「私も、生まれ変わりがあったらいいなってずっと思ってた」
メタ「だからさ、」
メタ「......いっそ二人で生まれ変わっちゃう?」
エン「え?」
メタ「村の外れ、あそこに崖があるじゃん?あそこからなら......」
エン「......」
「なんてね!冗談!忘れて!流石に馬鹿だよね」
「ははっ、大人達の馬鹿が移ったかも__」
エン「ねえ」(覚悟が決まる)
メタ「…ん?」
エン「やっぱり私達は、親友だね」
メタ「え?」
エン「行こう、」
崖に向かうへの道中/夜
山道
メタ「(息切れしながら)結構登るね…」
エン「(同じく息切れ)やばい、こんなにきついとは思わなかった」
メタ「もしかして私達、もう歳?(笑)」
エン「やめてよ悲しくなるじゃん(笑)」
メタ「いやだってこんな疲れると思わないじゃん!」
「昔ならもっとスイスイ進めてたよきっと」
エン「まじでセリフがババアすぎる…」
「ほらおばあちゃん、もうすぐですからね〜」(とからかう)
メタ「はー!ムカつく!」
エン「なんでよ(笑)」
「自分で歳だって言ったんじゃん」
メタ「自分で言うのはいいけど人に言われるのはムカつくんですー」
エン「はいはい、ほら、ほんとにもう着くよ」
メタ「あ!今適当にあしらったでしょ!」
エン「…」(べーっと舌を出す)
崖に到着
メタ「うわー、思ったより高いなー」(下を恐る恐る覗きながら)
「大人たちが行っちゃ駄目って言うのも流石にわかるかも」
エン「(一息ついて)初めて来た」
「こんな場所だったんだ」
メタ「(頭上を指差し)わ!ねえ見て!星!めっちゃ綺麗」
エン「(つられて上を見る)ほんとだ…」
「いつも見てた景色とは全然違うね」
メタ「(夜空を見上げたまま)......ねえ、私達さ」
「ここじゃない、全然違う場所に生まれてたらどうなってたかな」
エン「......」
メタ「もっと自由に会って、話して、遊べて、」
エン「メタ」
「これからは、自由に会って、話して、遊べるよ」
メタ「......」
「そうだね」
「私達で選ぼう」
「私達の望む世界を」
落ちながら微笑みあう二人の絵
誰もいなくなった崖と静かな波打ち際
〜暗転〜
二人が身を投げた崖/夜
レーテ達、レムールとなった二人と対面
レーテ「確かに掟に縛られなければ君たちはもっと自由に誰の目も気にせず仲良くなれたかもしれない」
「そうすれば幸せだったのかもね」
「だけど僕には今の君たちが幸せそうには見えないな」
「村の大人達を恨む心だけが残ってしまったのは......悲しいよ」
トルミ「(ヘラヘラしている)ねえ、あんたらの村であんたらのこと、なんて言われてるか知ってる?」
「『やっぱり地獄に堕ちた』だってさ」
「結局、村の風習も掟も何も変わってないよ」
「むしろあんたらのおかげで『言い伝えは本物だった!』って村中大騒ぎだよ」
「そんなの、悔しくないの?」
「私達は命も捨てたのにー!って」
「ねえ、ほんとに村の奴らのこと恨んでるならさ」
「(笑みを消し)俺らに祓われる前にあいつら消しちゃいな」
レーテ「トルミ、悪ふざけが過ぎるよ」
トルミ「ふざけてなんかねえよ」
「好きにやらせてやればいいじゃん?」
「俺らがわざわざ首突っ込むことじゃないだろ」
レーテ「...レムールを祓うことが、僕らの仕事だよ」
トルミ「……なるほど?それもそうか」(気が変わるの早いのも興味ないから)
「(宝石を噛み砕きながら)じゃあ早いとこ祓っちゃおうこいつら」
レーテ「......」
トルミ「(視線を移しながら)核は…固く繋がれた手」
「絆を断ち切るみたいで悪いけど、こいつの言う通りこれが仕事だから、ごめんね〜」
トルミがレムールを祓い、二人は淡く光りながら消えていく
レーテ、その光りとトルミを交互に見て、思案する
帰り道
トルミ「二人で一体のレムールになってるの俺初めて見たわー」
レーテ「(考え事をしながら)......そうだね」
トルミ「まあ、一気に仕事が片付いて楽だったわ」
「んじゃ、また明日なー」
レーテ「あのさ、」
トルミ「んー?」
レーテ「......ううん、なんでもない」
トルミ「あそ、じゃあな」(一緒に仕事をしているがレーテにもあまり興味がない)
レーテ「うん、また明日ね」
トルミの背中を見つめるレーテ
2章完
